[CML 004546] 林田力「沖縄経済自立のための米軍基地反対」
Hayariki
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2010年 6月 16日 (水) 21:08:15 JST
【PJニュース 2010年6月16日】菅直人首相と沖縄県の仲井真弘多知事の2010年6月15日の会談は、普天間問題での本土と沖縄のギャップを改めて印象付けた。菅首相は普天間基地の名護市辺野古への移設を確認した日米共同声明を踏襲すると表明したが、仲井知事は日米共同声明を遺憾とし、「実現はきわめて難しい」と応じた。
現実に沖縄県では反米軍基地の声が広汎な盛り上がりを見せている。県内移設を新たな琉球処分とする声もあるほど反発は強い。これまで基地問題は保守と革新のイデオロギー対立の場となる傾向があったが、昨今の反基地の声は伝統的な革新勢力の枠を超えている。
http://news.livedoor.com/article/detail/4829971/
http://www.pjnews.net/news/794/20100616_1
そこには基地がなくても沖縄は経済的に成り立つ、反対に基地が経済成長の足枷になっているとの沖縄経済界の自信がある。その象徴が米軍牧港住宅地区跡地を再開発した那覇新都心である。市街地に広がる米軍基地を撤去し、跡地を開発すれば沖縄経済は大きく発展するとの期待である。
これまで基地反対の主張には、基地依存経済という現実を見ない空論と批判されてきた。しかし、現実では逆であり、基地があるから沖縄経済が自立できないという考えが浸透しつつある。これは基地論争に新たな枠組みをもたらすものである。基地問題を空想的な理想主義と現実主義の対立と整理するならば、無知と読解力のなさを露呈することになる。むしろ基地反対は、基地の存在による負の効用を直視する地に足ついた主張となる。
一方で跡地開発が基地反対の主要な理由になることには懸念がある。基地論争が基地依存派と、デベロッパーとゼネコンに代表される開発推進派の利権争いに堕落してしまいかねないためである。開発が沖縄県民の利益になるとは限らない。実際、那覇新都心(おもろまち)の超高層ビル群建設計画は首里城からの景観を破壊するとして反対運動が起きている。
基地依存派と開発推進派という保守勢力同士の利権争いという視点では、辺野古沖(キャンプ・シュワブ沿岸部)への移設案は巧妙な妥協案になる。市街地にある普天間基地を閉鎖して跡地を開発できれば、開発推進派は満足する。ゼネコンは辺野古沖の新基地建設でも跡地開発でも儲けられる。犠牲になるのはジュゴンをはじめとする貴重な自然だが、それは開発推進派の知ったことではない。
この普天間問題について、鳩山由紀夫前首相は「最低でも県外」と表明し、沖縄県民に期待を抱かせ、首相就任後は移設先をゼロベースで検討し直した。保守派には鳩山氏は基地依存派と開発推進派の双方に配慮した計画案を白紙に戻し、論争を再燃させた非常識な破壊者に映る。これは鳩山氏が保守派から非常に低い評価を下された一因となった。一方で本音は「常時駐留なき安保」の鳩山氏が故意に普天間問題を迷走させて、基地反対運動を煽ろうとしたとの陰謀論が生まれる素地もあった(林田力「迷走する「普天間問題」における陰謀論の効用」PJニュース2010年5月2日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/4749767/
最終的に民主党政権は沖縄の期待を裏切り、沖縄の怒りだけが残された。跡地開発による経済発展という未来図は、基地反対を地に足ついた主張にする。一方で経済的利益に基づく主張は、利益誘導で転びやすいという弱さも内包する。今後も沖縄の基地反対の声に注目したい。【了】
林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)
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