[CML 004465] 二子玉川公金支出差止訴訟で住民側控訴(中)

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 6月 9日 (水) 21:47:20 JST


【PJニュース 2010年6月9日】(上)からのつづき。「合理性を欠くとまではいえない」的な表現は本判決の特徴となっている。判決は再開発地域の地域性について以下のように曖昧な判断を下した。

「機能的な都市活動を確保するという観点からすると、商業・業務施設、中高密の住宅などを充実させることが適切な地域であるとみることができるし、他方において、健康で文化的な都市生活を確保するという観点からすると、自然的環境を回復させることが適切な地域であるとみることもでき、いずれか一方の地域として整備しなければその地域性に反するとまではいい難い場所にあるということができる。」(判決書29頁)

その上で現行の再開発計画を可能にした都市決定に、以下の回りくどい結論になっている。「事実に対する評価が明らかに合理性を欠き、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものとまではいえないと解すべきである。」(判決書29頁)
http://news.livedoor.com/article/detail/4816014/
http://www.pjnews.net/news/794/20100605_8
開発が適切であるとも自然環境の保全・回復が適切であるとも見ることができるということは当たり前である。この論理に立つならば広島地裁が2009年10月1日に事業差し止めを命じた鞆の浦(広島県福山市)の架橋でさえも適切とみることができると立論できる。どのような計画であっても視点を変えれば適切な面があると主張することは可能である。その上での判断を当事者は裁判所に求めている。

しかも、問題は「商業・業務施設、中高密の住宅などを充実させる」ことが適切であるか否かという抽象論ではない。都市計画決定によって、それまで二子玉川に存在しなかった超高層ビルが何本も建設できることの是非が問題である。

これは不足していた商業・業務施設やマンションを充実させるどころか、商業・業務施設やマンションだらけにするものである。その弊害(日照・眺望の悪化、大気汚染、交通渋滞の激化など)も裁判では指摘済みである。そのインパクトを分析した上で、超高層ビルを何本も建設できるようにすることが適切であるのか判断されていない。

実質的な判断を避ける判決の消極的姿勢は、補助金交付が世田谷区市街地再開発事業補助金交付要綱違反であるかの判断において一層露骨である。補助金交付要綱では補助金交付決定に際して審査を義務付けている。

二子玉川東地区市街地再開発組合は建築コンサルティング会社アール・アイ・エーらと締結した実施設計に関する請負契約(金額1億8900万円)や権利返還計画作成に関する請負契約(金額1億2810万円)に補助金交付を申請した。これらの事業について再開発組合は2006年3月20日に実績報告書を提出し、世田谷区は同月22日に補助金決定等の適合性を認め、31日に補助金額を確定して通知した。【つづく】

林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)
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