[CML 004411] 政治家のブレを許さない日本政治の一歩成熟

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 6月 5日 (土) 12:30:41 JST


【PJニュース 2010年6月4日】鳩山由紀夫首相は6月2日、辞任を表明した。根本的な問題は普天間問題でのブレである。鳩山氏は衆議院議員選挙前の09年7月20日に、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先を「最低でも県外」と大見得を切った。「日米政府の合意を『何も変えてはいけない』と地元に押しつけるのは違う」とも述べたが、腰砕けになった。

鳩山首相は辞任表明時に「国民が徐々に徐々に聞く耳を持たなくなってきてしまった」と語ったが、主張がぶれる人間に聞く耳を持たなくなることは当然の帰結である。これは日本政治の一歩成熟と評価できる。
http://news.livedoor.com/article/detail/4807675/
http://www.pjnews.net/news/794/20100603_8
ブレが大きな問題になった政治家は前任の麻生太郎前首相である。本人が「ぶれてない」と釈明に追い込まれたほどであった。麻生首相(当時)は09年5月29日の閣僚懇談会で厚生労働省の分割を断念したとの報道に関し、「勘違いされている。分割しろと指示したことはない。ぶれたということはない」と釈明した。

これに野党であった民主党は猛反発した。鳩山由紀夫代表は「麻生総理はぶれてない。常に中身がすぐにぶれることを繰り返す意味に置いてぶれてない。また同じことをなさった」と皮肉交じりに批判した。岡田克也幹事長(当時)も「総理の発言は重みがあるはずなのに、いとも簡単に撤回した」と切り捨てた。

麻生首相には09年2月5日に衆院予算委員会で「郵政民営化は賛成ではなかった」と失言した「前科」がある。そのため、「ぶれてない」との釈明には説得力が欠け、額面通りに受け取ることはできない。

それ故に民主党の反発は当然であるが、麻生首相が「ぶれてない」という釈明に追い込まれたことは重要である。「ぶれてない」と釈明することは、矛盾や一貫性のなさやブレを悪と認識していることの裏返しだからである。

日本人は過去を水に流す非歴史的な民族と揶揄されてきた。攘夷を口走っていた浪人が文明開化を推進したのが近代日本である。相互に相手を恨む理由がある薩摩藩と長州藩を強引に同盟させた坂本龍馬は、清々しい人物として現代でも人気を集めている。また、戦争中は鬼畜と罵っていた敵国を戦後は同盟国と呼ぶ無節操な人々が戦後日本を牽引した。

非歴史的な日本人はブレを批判されても、釈明するどころか反対に臨機応変に対応したと開き直る場合が少なくない。記者(=林田)は東急不動産と新築マンション購入でトラブルになったが、記者が最も腹を立てたことは事前に合意した内容を事前相談なく反故にすることであった(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。批判しても「それが合理的であると判断した」ためと正当化する。このような会社とは売買契約を白紙にする以外に解決策はない。

麻生首相のケースでも前時代の老練な政治家ならば「ぶれた」批判に「ぶれてない」と正面から釈明せずに、「ぶれて何が悪い」「事情が変わった」と正当化したかもしれない。その種の不誠実な開き直りが過去の日本社会では横行していた。しかし、それを許容するほど現代人はめでたくはない。

一貫性のないことは悪であり、郵政民営化問題などで前科を重ねた麻生首相にとってブレを認めることは致命傷になる。そのために苦しい強弁であっても「ぶれてない」と釈明するしかなかった。日本国民が政治家のブレを許さなくなったことは、焼け野原から経済大国にしてしまう前に進むことしかできない段階を一歩抜け出し、成熟したことの表れである。【了】

林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)
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