[CML 004976] アジアを考えるための本(20)

Ken Kawauchi kenkawauchi at nifty.com
2010年 7月 17日 (土) 17:24:26 JST


河内謙策と申します。独善的立場から、最近読んで面白かった本を紹介させていただ
いております。(このメールを重複して受け取られた方は、失礼をお許し下さい。転
送
・転載は自由です。)

*ロバート・A・スカラピーノ著、安野正士・田中アユ子訳『アジアの激動を見つめ
て』
 岩波書店
 ベトナム反戦闘争を経験した世代にとっては、懐かしい名前です。ベトナム戦争に
 おけるアメリカ支持の論陣を張った「碩学」の回顧録です。読んでみて、意外と柔
 軟な面があることにびっくりしました。彼は、中国の将来について、権威主義的多
   元主義の道を歩んでいるというテーゼを提出しています。20世紀後半とは何
だったの  
か、を考えさせる面白い本です。

*田中宇『米中逆転』角川oneテーマ21
  「世界の中で、米国と中国の地位の逆転が起きている」とみる著者の最新の包括的
 分析です。田中は、「中国は、アジアの地域覇権国でしかなく、世界的な覇権国に
はなりそうもない」と判断し、「『米中逆転』の構図は、世界的に見ると『米英中心
体制』から『多極体制』への転換である」と述べています。私は、中国の意図は「ア
ジアの
地域覇権国」にとどまるものではないと考えていますが、世界的に多極体制への移行
が始まっているという見方には賛成です。

*谷口智彦編訳『同盟が消える日 米国発衝撃報告』株式会社ウェッジ
 「日米同盟:未来のための変革と再編」(2005年)のアメリカ側の中心だったリ
チャード・ローレスらが日米同盟の現状を検証したレポートの翻訳です。この本を抜
きにした日米同盟論議はありえない、と断言してもよいでしょう。しかも、ローレス
らは、日米同盟の解消も選択肢の一つにしているのですから、影響力も極めて大きい
と思われます。ナイやアーミテージらと意見の違いもあるようです。

*安岡直『日本はなぜ自滅したのか』秀明出版会
 著者は、気鋭の若手の論客ですが、彼は、「政治的な自立性を自ら放棄してきた戦
後
日本には、国家の浮沈に関わるようなシリアスな決断を下す場面がそもそも存在しな
かった」と述べ、「外交においてはアメリカ追随主義をやめて独立自尊の姿勢を打ち
出し、衰弱しきった国家公民意識を覚醒させて、国家としての日本を再生していく」
ことを提言しています。将来の展望については議論もあるでしょうが、日本がアメリ
カに従属していることが、日本の知識人や民衆の精神にいかにマイナスになっている
かを歴史的に分析した箇所は、非常にすばらしいユニークな分析になっています。

*副島隆彦・佐藤優『小沢革命政権で日本を救え』日本文芸社
 二人は、鳩山政権の崩壊は、官僚とアメリカが仕組んだクーデターだったとしてい
ます。アメリカがどれだけ関与していたかは疑問の余地がありますが、官僚の一部と
マスコミと日本の支配層の一部が仕組んだものだったことは間違いないでしょう。し
かし、だからといって、鳩山政権がやってきたことは立派だったとは言えません。そ
こが政治というものの怖さです。一部の人は、この論理を間違えています。また、そ
こから小沢に革命政権を期待するなどということは、私に言わせればちゃんちゃらお
かしいということになります。小沢は「毀し屋」であっても革命家ではないのです。

*長島陽子『中国に夢を紡いだ日々 さらば「日中友好」』論創社
 著者は、「日中友好」に夢を託した世代です。それが、中国の実態を知る中で、
“さらば「日中友好」”という結論にいたるまでの過程を自伝風につづっています。
中国に幻想を持っている人には、ぜひ一読をお勧めします。私は、著者の一つ下の世
代です。
その世代の一人として言えば、なぜ“日中友好”にのめりこんでいったのか、今後、
もう少し思想的に深めてほしいという気がします。

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河内謙策
〒112-0012  東京都文京区大塚5丁目6番15-401号 保田・河内法律事務所(電話
03-5978-3784、FAX03-5978-3706)  Email: kenkawauchi at nifty.com





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