[CML 004836] 林田力「「一澤帆布」の泥沼相続紛争は「遺言」が罪つくり」

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 7月 5日 (月) 20:01:04 JST


【PJニュース 2010年7月5日】京都市の手作りかばん店・一澤帆布工業(京都市東山区)の相続をめぐる骨肉の争いには終わりが見えない。先代会長・一澤信夫氏の四男・一澤喜久夫氏は新会社・帆布カバン喜一澤(きいちざわ、「喜」は七の三つ重ね)を設立し、2010年7月7日に開店する予定である。

もともと一澤帆布工業の主要な対立は長男の信太郎氏と三男の信三郎夫妻の間で起きていた。信太郎氏は2005年に信夫氏の遺言を理由に当時、一澤帆布工業社長であった信三郎氏を解任した。その後に喜久夫氏は同社の取締役に就任した。
http://news.livedoor.com/article/detail/4866533/
http://www.pjnews.net/news/794/20100703_2
ところが2009年6月23日の最高裁判決で、信太郎氏が保管していたとされる遺言書(第二遺言書)の無効が確定した。信太郎氏側は7月1日に一澤帆布工業の代表取締役を一時的に中立的な第三者から選任することや、自身を取締役に選ぶことなどを求める仮処分を京都地裁に申し立てたものの、一澤帆布工業は休業中になっている。

泥沼の相続紛争は誰も歓迎しない筈であるが、根本的な問題は遺言書にある。これまで日本には遺言書を錦の御旗のように扱う傾向があった。最高裁判決で遺言書の無効が確定したことは、その傾向に一石を投じることになった。無効とされた第二遺言書は以下のような不審点があった。

・平仮名の「さ」が従来と書き順が異なっている
・印鑑が実印ではなく、略字の「一沢」になっていた

最初は信三郎氏が原告となって第二遺言書の無効確認を求めて提訴したが、筆跡が似ている箇所があるため偽物とは言い切れないということで敗訴した。次に信三郎氏の妻・恵美氏が無効確認を求めて提訴し、上述の最高裁判決で無効と確定した。

信三郎氏の裁判では無効であると言い切れないため有効と、無効主張者に高いハードルを課した。これでは事実上、遺言書の無効が認められるケースはなくなってしまう。これに対して恵美氏の裁判では上述の不審点を積極的に認定して無効とした。裁判所が形式主義に陥らず、実質的に審査したことは大きな前進である。
http://www12.atpages.jp/~hayariki/haya/109link.html
世評は信太郎氏に厳しい。それは信太郎氏が「家督は長男が継ぐもの」という発想でいるためである(「敗軍の将 兵を語る」日経ビジネス2006年4月17日号)。これは日本国憲法が法の下の平等を定め、戦前の家制度を解体したことに逆行する前時代的封建的思想である。このような信太郎氏が支持されないことは当然である。

しかし、これは信三郎氏側への支持を意味しない。信三郎氏側が根拠とする第一遺言書では信夫氏が保有していた一澤帆布工業の株式の67%を信三郎夫妻に遺贈する。これが相続紛争の震源地である。第一遺言書通りとすると約33%が妻の持ち分となる。相続人でもない信三郎氏の妻に約33%の株式を遺贈することは尋常ではない。これによって信太郎氏が態度を硬化させたものと推測する。

もともと遺言には説明責任を果たせないという致命的な欠陥がある。現代では他者に影響を及ぼす決断をした際には利害関係者の疑問に答え、説明を尽くすことが期待される。しかし、死後に開封される遺言では、それは不可能である。いわば遺言は現代における意思表示としては不完全なものである。遺言があるために相続紛争が長期化し、泥沼化している現実を直視することが円満解決の第一歩である。【了】



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