[CML 002671] Re: 松永様、田口様、さとうけいこ様、東本様

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2010年 1月 17日 (日) 18:41:55 JST


さとうさん、いくつか気になっていることを質問させてください。

さとうさんはCMLへの最初の発信(002608)で「水俣で能を作っている女性の方が、皇居へ
行き能の話をすることを断った」と書かれており、 002642ではさらにこの「水俣で能を作って
いるのは石牟礼道子さんです」と断言されておられます。

しかし、石牟礼道子さんはいうまでもなく詩人、小説家であって、能面作者ではありません。
だから、石牟礼さんが「能を作っている」のだとすれば、それは石牟礼さんが2002年に発
表された新作能「不知火」のことを指しているのであろう、としか私には思い当たらないので
すが、そうだとして、この新作能「不知火」は戯曲ですから、「能を作っている」という表現は
当たらないように思います。

また、同戯曲は水俣病患者の闘いと怨念をテーマにしたもので、その社会問題となった一
方の当事者の立場に寄り添った戯曲の話を「聞きたい」などと宮内庁、あるいは天皇家が
招請することなど、石牟礼さんが招請の話を「拒否」する以前の問題として、私にはとても
考えにくいことなのですが、さとうさんが上記のように断言される根拠、情報をご教示いただ
ければ幸いです。

また、さとうさんは002642で、「かつて、オオム信者のことを映画にした森達也さんという方
が、『拝啓天皇陛下殿』という映画を作りたかったそうですが、NHKをはじめとするあらゆ
る大中小のメディアが反対をして、いまだにその映画を作れないでい」るとも述べています。

しかし、NHKであれ、民放であれ、放送局は、一般にドキュメンタリー製作は手がけても、
「映画」づくりには原則的に関わりません。だから、「NHKをはじめとするあらゆる大中小の
メディアが反対をして、いまだにその映画を作れないでい」るということも考えにくいことです。

また、森達也さんは、「テレビでは放映できない」「テレビ的には存在しないことになっている
素材」に興味を抱くタイプのドキュメンタリーの映画作家、監督ですから(Wiki:『森達也』)、
NHKが菊タブーの権化のような存在であることは知悉し尽くしているはずで、この件でNH
Kなど大中小メディアに上映協力を呼びかけるなどハナからしないだろう、と私は思います。
『拝啓天皇陛下殿』という映画をつくりたければ、オウム真理教信者の日常をドキュメンタリ
ー化して喝采を浴びた映画『A』、続編『A2』のように自主製作で映画をつくればよいことで
すし、森達也さんにはそうした実績もあります。だから、「NHKをはじめとするあらゆる大中
小のメディアが反対をし」たから天皇制批判の映画をつくれないでいる、というさとうさんの
伝聞、またその伝聞に基づくご認識は少し違うだろう、と私は思います。

さらにさとうさんは002642で次のようにもおっしゃいます。「過去には、戦争の最高責任者の
会議に皇族の人を入れたために、その人の意見には誰も意見を言う人がいなくて、無責任
な方向でその会議が機能したと聞いています」、と。このさとうさんのご認識も少し違っている
ように思います。

「戦争の最高責任者の会議」とは戦前の「大本営政府連絡会議」や「最高戦争指導会議」
などのことを指すようですが、いずれの「最高責任者会議」においても重要な案件の審議
に際しては天皇臨席を奏請するのが通常でした(広義の「御前会議」。狭義の「御前会議」
は戦争の開始と終了に関して開かれた、天皇・元老・閣僚・軍部首脳の合同会議を指すよ
うです。Wiki:『最高戦争指導会議』など)。「戦争の最高責任者の会議に皇族の人を入れ
たために」ではなく、戦前の大日本帝国憲法は天皇主権の憲法であり、陸海軍の統帥権
も天皇にありましたから、むしろ「戦争の最高責任者の会議に天皇が臨席する」のは当然
のことでした。また、「その人(注:天皇)の意見には誰も意見を言う人がいな」いのも、天皇
主権の憲法の帰結するところでした。

そうした天皇制国家のありようを丸山真男がかつて「無責任の体系」と名づけたのはあまり
にも有名です(丸山真男「超国家主義の論理と心理」 1946年)。同著で丸山は日本が軍国
主義台頭を許した理由もその「無責任の体系」にあった、とも断じています。

同じことを加藤周一は次のように言っています。「明治以後の天皇制」には「最高の権威が
あって、実権がない。万事の責任者であって、何事にも責任がない。そういう型が、社会の
さまざまな組織に共通してい」た(加藤周一「日本社会・文化の基本的特徴」 1981年)。

東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp

----- Original Message ----- 
From: "Keyko Sato" <j-y-k-s at mx3.nns.ne.jp>
To: "市民のML" <cml at list.jca.apc.org>
Sent: Sunday, January 17, 2010 10:35 AM
Subject: Re: [MEIWAKU][CML 002655] 松永様、田口様、さとうけいこ様、東本様


> 松永さん
>
> さとうけいこです。私は、石牟礼道子さんが、皇室でたまに行われる識者を招いての
> 勉強会のようなものの講師を拒否したことを言っているのであって、「明仁天皇即位
> 20年式典」に招かれたかどうかは知りません。
>
> ただ私達市民が主人公ということであれば、天皇がどういうことを考えているのかど
> ういう気持でいるのかを知る必要はあると思います。天皇制をどうするかを決めるの
> は私達ですから。いろんな事を知った上で初めて世論の結集を図ることが出来るのだ
> と思います。
>
> 岡田外相が、天皇に自由にあいさつさせるべきだと言った時、そんな天皇に無礼なこ
> とを言うとはけしからん、と言った政治家(?)がいましたよね。今でも昔と同じよう
> にめんどうなことには当たらず触らずがまかり通っていますが。今の天皇がまったく
> 自分の思いを言えないことはなくいろいろ言っているとは思うが、天皇はいろいろと
> 行動が規制されていることも事実です。
>
> もしも天皇や皇太子に本気でしゃべらせれば、世襲で仕方なくこの地位に甘んじてい
> るけれど、本当は一般の市民になりたいと思っているかもしれません。そうしたら天
> 皇制を早く止めさせることも出来ます。
>
> 過去天皇は戦争責任をとらなかったけれど、責任をとる能力のない人を責任ある地位
> につけていたことをこそ反省しなければなりません。今の日本の社会も政財界トップ
> のほとんどの人(そうでない人がいたらごめんなさい)が、部下の責任を自分の責任と
> は思わない人ばかりのような気がします。私の被害妄想かもしれませんが。そういう
> 社会を作っているのが私達一人一人ですからそのことを反省しています。
>
>    さとうけいこ



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