[CML 002613] Re: かなしいなー

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2010年 1月 11日 (月) 13:38:32 JST


田口さん

CMLで天皇制の問題に関わる往信(問題提起)をしても反応がない、ということと、だから「天皇制
に疑問・違和感・嫌悪感を全く持たない人が少なくない」、ということとはイコールの関係を結ばない
だろう、と私は思います。

田口さんと松永さんとは、私は、一昨年の9月にあった「もう やめちょくれ!大分国体」の集会&デ
モ(天皇問題を考える市民ネットワーク主催)でお会いしたことがあります。その後の懇親会では初
会を祝して握手もしました。だから、私が、天皇制問題にはいささかでも関心があることはご理解い
ただけているものと思いますが、その私も松永さんの往信には応答していません。もちろん、天皇
制問題に関心がないから応信しなかった、ということではありません。

ある問題について応答するかどうかはそれぞれのご判断だろうと思いますので、そのご判断の良
否についてコメントするのは適当ではない、と私は思っていますが、少なくとも「中村哲氏が天皇
在位20年政府主催の式典に出席していた」という松永さんからのご情報はCML参加者には心
深く受けとめられているだろうと私は思っています。応答のあるなし、に関わらず。

さて、中村哲さんが天皇在位20年を祝う政府主催の式典に出席した問題について、お前はどう
思うか、と問われれば、私は、中村哲さんはイデオロギーの人ではなく、基本的に彼が義侠の人
(もちろん、私の評価です)である、ということと関係しているだろうと思います。

下記記事によれば、中村哲さんの「亡母・秀子さんの肩口には『勉命』という入れ墨があった」そう
です。「『勉』は亡父の名だ。ふたりは結婚に反対され、駆け落ちして一緒になった。『そのころ、母
が自分の手で彫り込んだんだと思いますよ。一途な人が多いんです、うちの家系は』(中村哲さん)」
(朝日新聞「愛の旅人」 火野葦平「花と龍」 玉井金五郎とマン 2005年10月8日 )
http://7ten.world.coocan.jp/aaa/ai05.html

中村哲さんの亡母、秀子さんのご両親は火野葦平の小説『花と龍』の主人公の玉井金五郎とマン
夫妻。石炭積み出しの景気に沸く明治末の北九州・若松港で働く荒くれの男たち、「沖のごんぞう
がョ 人間ならばョ 蝶々とんぼも鳥のうちェ〜」(若松民謡。「ごんぞう」は人間以下だ、という歌で
す)と歌われた最下層の荷役労働者(沖仲仕・ごんぞう)を束ねた「玉井組」の大親分。「小説の中
の金五郎は左腕に昇り竜の入れ墨をしてい」ます(同。おそらく実際もそうだったでしょう)。

そうした金五郎やマン、また中村哲さんの母の秀子さんの気風、またそうした気風を育てた風土
の気性を「川筋気質(かたぎ)」といいますが、中村哲さんにはそうした祖父、祖母、また母親譲り
の川筋気質、義侠のDNAがしっかりと組み込まれているように私は思います。

義侠は義理、人情、また男だて、女だてのことですから、「正義」とか「悪」とかいうある意味イデ
オロギー的な観念に拘泥されるものではありません。それが「悪」であれ「正義」であれ、義侠の
ためには命を懸けなければならないこともある、お天道様に不義理を果たすことはできない、と
いうのが世間でいわれるところの義侠の心であるように思います。義侠心の者にとって「天皇制」
も「共産主義」もある意味等価で、義侠の秤では小さなものにすぎないのです。

中村哲さんの亡母、秀子さんのお兄さん、すなわち中村哲さんにとって伯父にあたる火野葦平は
太平洋戦争中に各戦線におもむき、従軍作家として活躍しました。その咎をもって戦後は「戦犯
作家」として公職追放を受けることになりましたが、若き日、葦平は、家業の沖仲士の組頭「玉井
組」を継いで、若松港湾労働者の労働組合を結成するなど労働運動にも取り組んで検挙される、
ということもありました。火野葦平にも義侠の血が流れており、その義侠の精神は、ある日葦平を
労働運動の闘士にもし、「戦犯作家」にもしたのです。義侠とはそういう性質のものだろう、と私は
思います。

中村哲さんは本質的にキリスト教プロテスタント系のクリスチャンであり、義侠の人だと私は思い
ます。だから、「国際貢献をしたいのなら、いろんなやり方があります。それは、本来、武力とは
何の関係もない。理論的に考えても、『軍隊をもってする支援』なんてあり得ません」「現地(アフ
ガニスタン)では、(略)吾が身のほうが『憲法9条』に実際に守られてきたことを肌身に感じてい
ます」(『憲法を変えて戦争へ行こう という世の中にしないための18人の発言』(岩波ブックレット)
という彼の発言と天皇在位20年を祝う政府主催の式典に出席することとは、彼の中では決して
矛盾することではないのだろう、と私は思います。

中村哲さんは上著の中で「戦争をしない国・日本の人間である、日本人である、ということに守ら
れて仕事ができた」とも発言しています。「日本・日本人」という彼のボキャブラリーの用い方にも
注目していただきたいと思います。彼の中で「戦争をしない国」と「日本・日本人」というナショナル
な枠組みの中での思考は自然に同居しているものと思われます。

下記の文章には、その中村哲さんの思考のスタンスが端的に示されているように思えます。

「アフガンの情勢は、日に日に緊迫しているように見えます。来年6月の総選挙は今のところ、東
部アフガンで見る限り机上の空論で、米兵への攻撃が次第に増加、相当数の外国軍の投入が
計画されています。最近の趨勢は、復興支援に携わる多くの外国団体が、積極的に外国軍隊の
地方展開を主張していることです。これは地元には奇妙に映ります。外国軍に守られてやる復興
がいったいあり得るのかと思います。政治・軍事上の動きを見る限り、出口がないと言えるでしょ
う。しかし、暗い政治の動きとは無縁に、生きるのに必死、かつ共に汗を流すことによって、人を
安堵させる平和な世界があります。巌流島の決闘で、佐々木小次郎に対し、宮本武蔵は『汝、白
刃をとって其の妙を尽くせ。吾は木戟を携えてその秘を顕わさん』と述べたという有名な話があり
ます。武蔵ほど偉くはありませんが、『汝、金と武力を駆使して勝手にやれ。対する吾らは、鋤と
鍬、水と植樹でその偉大な恵みを顕わそう』と述べたい心境であります」「平和を耕すPMS」(ペ
シャワール会報77号 2003年10月15日)
http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/acts/kaiho/77nakamura.html

中村哲さんが強い「正義」の思想の持ち主であることは確かなことであるように思います。同時に
また、中村哲さんは情念の人でもあるのです。そのことを上記の文章ははっきりと示しているよう
に思えます。そうであれば、中村哲さんが天皇在位20年を祝う政府主催の式典に出席したとし
ても私はおかしくないだろう、と思います(もちろん、中村哲さんの同式典出席を肯定しているわ
けではありません)。しかし、だからといって、中村哲さんを「天皇主義者」と決めつける必要も、
根拠もないように思います。ただ、中村哲さんが明確な天皇制反対論者ではないことはこれも確
かなことのように思えます。そういう意味で松永さんが「かなしいなー」と嘆息するのはよく理解で
きます。

またさらに、中村哲さんが仮に「天皇主義者」であったとしても、「平和」の問題では共同して闘う
ことのできる信頼できる、心強い同志です。そうしたもろもろのことが、私は含めてみなさんが応
答しにくい一因であったかもしれません。

私たちの日常の中で、民主主義とは何か(当然、「天皇制」の問題を含みます)、という問題を繰
り返し問い直し続けていくことの重要性、そのことの意味を今回の中村哲問題は教えてくれてい
るのかもしれません。


東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp

----- Original Message ----- 
From: "田口" <hantenno at m10.alpha-net.ne.jp>
To: "taguti 田口 " <hantenno at m10.alpha-net.ne.jp>; "市民のML" <cml at list.jca.apc.org>
Sent: Sunday, January 10, 2010 1:56 PM
Subject: [CML 002603] Re: かなしいなー


> 田口です。
>  心ある人達の中にも天皇制に疑問・違和感・嫌悪感を全く
> 持たない人が少なくないことは重大なことであると思います。
> 最高責任者が罰されずに平和主義者の仮面をかぶった
> まま天寿を全うしたからでしょうか。
>  それにしても、AMLやCMLでは電脳の話題や 「相手を
> 先生と呼ぶかどうか」 に関しては返信がたくさん来て話が
> 盛り上がるのに天皇制のことになると反応がないのは
> どうしてでしょうか。
>  「アニマル」の読者が少ないからかな。インターネットでは
> 目次までしか見られませんもんね。しかも今は34号まで
> しか出ていない。
> http://www.ten-no.net/dance/modules/news/index.php?storytopic=6
>  あるいは矢野 周三さんがもう加わっていないからかな。
>  有名人らが天皇のために集まったり勲章をもろうて喜ん
> だりすることに対して皆が黙っているのは戦争屋どもを
> 安心させるでしょう。今はまだ拷問までは受けないのだから
> 声ぐらいあげましょうよ。寝床に手錠でくくりつけられたまま
> 殺された鶴 彬(つる あきら)の川柳を唱えましょうよ。
> 
>    タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう
> 
>  松永さん。呼び水にその36号の記事をまるごと掲載して
> 頂けませんか。
>  ついでに私の作を一句。
> 
>       有名になったら集まれ我が臣民
> 
> 
> 
> ----- Original Message ---From: "松永" <spuz9759 at etude.ocn.ne.jp>
> To: "市民のML" <cml at list.jca.apc.org>
> Sent: Thursday, January 07, 2010 7:47 PM
> Subject: [CML 002583] かなしいなー
> 
> 
>> 少し古い話になって申し訳ないですが、、、
>> 反天皇制運動機関紙「あにまる」36号の「野次馬日誌」
>  11月12日のところを読んで 
>> かなりガッカリした。 天皇在位20年政府主催の式典に、
> 私が敬愛して止まない「ペシャワール会」
>> 代表の中村哲氏も出席していたという、記事である。
>> もちろん「それは彼の自由」だろう。 何も私が天皇制を
> 支持しないからと言って、ガッカリしても
>> 仕方の無いことなのかも知れない。しかし、 天皇制側に
> とっては、彼を取り込む事によって「ヤッター!」と、思って
> いるのではないか? それがくやしい。
>> これまでの、中村さんの活動を知れば、ただただ、尊敬
> するのみだ。 また、「じゃあ、君は今まで何をやってきた
> のだ?」と、問われれば、中村さんの足元にも及ばない。 
> だから、僕が中村さんの今回の行動を批判するのは傲慢
> 以外の何ものでもない、その事は百も承知している。
>>  でも、中村さん、「それをやっちゃあ、おしまいだよ!」
> と敢えていいたい。 CMLのみなさん、僕は
>> やっぱり傲慢な古い左翼なのですかね? 
>>
>


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