[CML 002554] Re: 【書評】『近代日本と戦争』の感想 林田力

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 1月 4日 (月) 22:30:02 JST


書評を転載しましたが、書誌情報を記載しなかったために再送します。
李盛煥著、都奇延・大久保節士郎訳『近代日本と戦争』光陽出版社、2009年
リンク先のJanJanが元記事ですが、JanJanはリニューアルの結果、書誌情報を出さなくなったようです。
-----Original Message-----
From: Hayariki [mailto:hedomura2 at hotmail.co.jp] 
Sent: Sunday, January 03, 2010 12:02 PM
To: 'cml at list.jca.apc.org'; 'honda_sien at yahoogroups.jp'
Subject: 【書評】『近代日本と戦争』の感想 林田力

 本書は韓国の日本研究者が戦争という視点から日本の近現代史をまとめたものである。韓国は日本の帝国主義によって最も大きな被害を受けた国の一つである。しかし、本書では被害者としての視点は抑制されており、日本研究者としての中立的な記述になっている。
 本書によって明治維新後の日本が際限なく戦争を繰り返していたことが理解できる。日本の戦争を正当化した論理が、山県有朋首相の第1回帝国議会(1890年)施政方針演説にある「利益線」であった。利益線は主権線(国土)を守る上で重要な地域を意味し、当時は朝鮮を念頭に置いていた。
 ここから日本に敵対的な勢力が朝鮮半島に形成されてはならず、日本の勢力下に置かなければならないという発想が生まれた。これ自身が朝鮮の人民を無視した手前勝手な理屈である。しかも日本は朝鮮を植民地化した後は、朝鮮を守るためには満州、満州を守るためには華北が必要と無限に主権線・利益線を拡大していった(45ページ)。
 この発想が日本の破滅をもたらしたが、本書は戦後にも利益線の影響を見出す。平和憲法を有する戦後日本が再武装した契機は朝鮮戦争であった(167ページ)。戦争国家を正当化する論理として朝鮮半島の危機が持ち出された点は戦後も変わらない。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の飛翔体発射をめぐる過剰反応を振り返ると、その思いを強くする。
http://www.janjannews.jp/archives/2116429.html
 著者は自衛隊の海外派兵、日米同盟の強化、社会の右傾化から戦争国家日本が今も続いていると警告する。その上で戦後日本が戦争を経験しなかった要因として平和憲法の存在を挙げ、日本国憲法を世界遺産にすることを提言する(187ページ)。
 本書は歴史を歪曲して日本を美化する立場とは対極に位置する。その本書が国家と国民を明確に区別し、日本の侵略戦争が国民の利益にならなかったと断言する点には救いがある。すなわち、日露戦争後の税負担率は日清戦争前の4倍になり、国民の窮乏をもたらした(99ページ)。また、国民は異質な環境の満州へ生活基盤を移すことを望んでおらず満州は国民にとっての生命線ではなかった(129ページ)。さらに平和憲法を敗戦という窮地に追い込まれた状況で日本人の平和を愛する本性が現れたものと評価する(187ページ)。
 醜悪な過去を直視することには勇気が必要である。それ故に格差社会化する日本社会で負け組とされてルサンチマンが鬱積した人々は史実から目をそらし、過去を美化することで民族的自尊心を満足させる傾向に流れやすい。これに対して、本書は日本の過去を直視した上で、日本の中に世界に誇るべきもの(平和憲法)を見出した。これほどまでに日本を深く理解した研究者が隣国にいることは日本にとって幸福である。
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4904350138
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0001030341








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