[CML 003100] 日隅一雄さんのブログ記事(2010年2月22日付)に見られる認識について
higashimoto takashi
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2010年 2月 23日 (火) 21:53:03 JST
ヤメ蚊さんこと弁護士の日隅一雄さんがご自身のブログに「長崎知事選は民主党躍進という事実
を分析的に報道しない大メディアの記者は給料泥棒だ!」(2010年2月22日付)という記事を書いて
「大メディアの記者」を大叱責されています。が、実のところ、叱責され、かつ糾弾に値するべき記
事の書き手は「大メディアの記者」の方ではなく、ヤメ蚊さんの方というべきではないか、とヤメ蚊さ
んこと今回の記事に関して私は思います。
■長崎知事選は民主党躍進という事実を分析的に報道しない大メディアの記者は給料泥棒だ!
(ヤメ蚊ブログ 2010年2月22日)
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/d95b80018427a73d7cbadf5aa94f091a
ヤメ蚊さんは弁護士家業のかたわらNPJインターネット新聞の編集長を兼ねてもおられ、さらにご
自身のブログを毎日のように更新されてもいます。ヤメ蚊さんが超多忙であられるということは実
によくわかります。が、この記事はいけません。以下、この記事はいけない、という私の理由です。
日隅さんは上記ブログの記事でまずマスメディアの長崎県知事選挙の 「小沢降ろしの大合唱」と
もいうべき「単純な話」にすぎない報道を紹介します。その上で、 「日本情報分析局」ブログの「局
長」さんの「長崎県知事選の自民党得票が大幅に減っている」、また「民主党は長崎、町田とも票
を伸ばしている」という同知事選及び町田市長選の選挙分析を紹介して決して「単純な話」とはい
えない同選挙の実相を「鋭く解き明かし」ている、と絶賛します。が、そうでしょうか? 私の見ると
ころ、この「局長」さんなる人の選挙分析は、選挙の実相を「鋭く解き明か」すどころかきわめて恣
意的、かつ主観的といわざるをえないのです。
この「局長」さんなる人の選挙分析とはどのようなものか。そのことを明らめるために町田市長選
挙はひとまずカッコにくくっておいて、前回と今回の長崎県知事選挙の開票結果と同開票結果の
私の分析を下記に示してみます。
●2010年 長崎県知事選挙開票結果:
http://www.pref.nagasaki.jp/election/2010chiji/sokuhou/2010chijikaihyou.html
中村法道(自・公) 316,603票
橋本剛(民・社・国) 222,565票
●2006年 長崎県知事選挙開票結果:
http://www.nagasaki-np.co.jp/press/tiji/2006/index2.html
金子原二郎(自・公推薦・社支持) 398,692票
小久保徳子(地元民主国会議員中二人が応援) 188,154票
●2006年選挙と2010年選挙の得票数の増減(計算1):
自民 398,692票(2006年)−316,603票(2010年)=82,089票減
民主 222,565票(2010年)−188,154票(2006年)=34,411票増
2006年と2010年の自民党と民主党の得票数を単純比較すると上記のとおり自民党は前回
に比べて82,089票得票数を減らしているのに対し、 民主党は前回に比べて34,411票得
票数を増加させています。その限りでは 「局長」 さんのいう「長崎県知事選で自民党は得票を
大幅に減らし、民主党は票を伸ばしている」という分析は間違ってはいません。しかし、表層的
です。
民主党が歴史的圧勝をした2009年衆院選挙のときの自民党と民主党の得票数と今回の県
知事選での同各政党の得票数を比較すると選挙分析はまた違う様相を帯びてきます。まず下
記に昨年総選挙時の長崎県での自民党と民主党の得票数を示してみます。
●2009年 長崎県衆院選挙開票結果:
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/kaihyou/ya42.htm
長崎1区 民主 129,044票 55.3%
自民(公) 87,297票 37.4%
長崎2区 民主 120,672票 50.4%
自民(公) 106,206票 44.3%
長崎3区 民主 79,223票 49.6%
自民 77,316票 48.4%
長崎4区 民主 97,912票 50.3%
自民 93,428票 48.0%
民主長崎県合計 426,851票
自民長崎県合計 364,247票
上記計算1と同じ要領で2009年衆院選挙と2010年県知事選挙の得票数の増減を計算
すると次のようになります。
●2009年衆院選挙と2010年県知事選挙の得票数の増減(計算2):
自民 364,247票(2009年)−316,603票(2010年)=47,644票減(23.1%減)
民主 426,851票(2009年)−222,565票票(2010年)=204,286減(47.9%減)
今回の県知事選挙において自民党は2009年衆院選挙時の得票数に比較して約23%の
減であるのに対し、民主党の同得票数減は約48%にも及んでいます。明らかに自民党よ
りも民主党の得票数の落ち込み方の方が格段に激しいのです。
民主党は先の県知事選挙では前回の2006年の県知事選挙のときよりも34,000票ほ
ど票を伸ばしていることは確かですが、これは2006年の同知事選挙のときは自民・公明
が圧勝した2005年の小泉劇場といわれた衆院選後の県知事選であったことに関係して
いる、と見るべきものでしょう。
このときの首相は小泉純一郎でした (2005年10月の第3次小泉改造内閣発足時の同
内閣の支持率は前回より5.6ポイント上昇の60.1%もありました)。2006年時の県知
事選挙はまだ自民党に勢いのあったときの県知事選挙であったということが選挙結果に
影響している。対して民主党はこの時期はまだ政権交代を担う実力を保持するまでには
到っていなかったのです。そうした彼我の差が2006年県知事選挙の結果となってあらわ
れている、と見るのが正当な選挙分析のあり方だろうと私は思います。
そうした政治情勢の動き、変化、趨勢への判断は停止したまま、形式的な数字の変化だ
けを見る、という選挙分析は選挙分析という名に値しない主観的、恣意的なものにならざ
るをえないでしょう。
日隅さんの今回のブログ記事はそうした基本的な認識の誤りの上に成り立っている記事
になっている、というのが私の判断です。私が、実のところ、叱責され、かつ糾弾に値する
べき記事の書き手はヤメ蚊さんの方ではないか、というのは、そういう理由からです。
日隅さんの、まだ政権交代したばかりのよちよち歩きの民主党をなんとかして守ってやり
たい、というある種民主党に対する保護者的なお気持ちは私にも理解できます。が、同
党を過保護に育てるのは同党のためならず、もちろん国民のためにもならず、というのが
私の考え方です。
東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
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