[CML 002962] トヨタ自動車の大量リコールとコスト削減
Hayariki
hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 2月 13日 (土) 11:07:49 JST
大量のリコールが相次ぐトヨタ自動車への批判が高まっている。もはや「品質のトヨタ」は悪い冗談となってしまった。私はトヨタの失墜が他者の負担でコスト削減を図る企業体質に起因していると感じられてならない。
トヨタ自動車への大きな批判は、その隠蔽体質に対するものである。新型「プリウス」のブレーキ不具合問題ではリコールの直前まで「運転者の感覚の問題」と強弁していた。ところが、社内では2010年1月生産分から修正プログラムによる改善策を講じていた。これは「欠陥隠し」と受け止められ、強く批判された。
不具合を認識しながらリコールせず、新たに生産する車にだけ「改良」を加える。これでは既存ユーザーは品質保証プロセスに強引に協力させられていることになる。企業の論理を通せば、メーカーの責任で行うべき品質保証をユーザーに肩代わりさせ、品質保証のコストを浮かせることができる。
これはトヨタ好みの発想である。世界に知れ渡ったトヨタ式生産方式であるジャスト・イン・タイム(かんばん方式)もトヨタの在庫コストを下請け業者の努力と負担で減少させる仕組みである。トヨタにとっては効率的であるが、下請けイジメにもなる。同じく下請けイジメにもなるものに原価低減活動もある。トヨタは2009年12月に部品メーカーに2012年を目処とした納入価格3割引き下げを要請している。
そして、非正規労働者(期間工・派遣労働者)の使用を拡大し、不景気になると派遣切りを推進したのもトヨタである。トヨタ自動車九州では早くも2008年8月の段階で800人の派遣社員を削減した。2008年末の年越し派遣村によって経済大国と自惚れる日本で貧困が大きな問題であることを印象付けたが、リーディング・カンパニーであるトヨタが派遣切りの先鞭をつけていた。
リコール問題の渦中にある2010年2月4日においても、トヨタの伊地知隆彦専務は、コスト削減のやり過ぎで品質問題が発生したとする見方を否定し、「品質がいいものは原価もいい。これからもしっかり原価低減に取り組むし、それが品質にもつながる」と述べた。しかし、下請け業者を疲弊させ、貯金も住む場所も持てないような非正規労働者を生み出すコスト削減が品質につながるかは疑問である。ステークホルダー(下請け業者、非正規労働者、ユーザー)の負担と犠牲でコスト削減を目指す発想自体が行き詰っている。
トヨタの大量リコール問題への批判はまだまだ続くだろう。しかし、熱しやすく冷めやすいことが日本人の欠点である。実際、非正規労働者を取り巻く状況は大して変わっていないにもかかわらず、2009年初と2010年初では派遣村に対するマスメディアの論調は様変わりしてしまった。トヨタの問題を一過性の批判で終わらせないためには、深い視点が必要である。
http://www.janjannews.jp/archives/2601273.html
林田力(『東急不動産だまし売り裁判』著者)
http://sky.geocities.jp/hayariki4/book.htm
東急不動産で買ってはいけない 被害者が語る「騙し売り」の手口
http://www.mynewsjapan.com/reports/1101
トヨタ自動車リコール問題へのアメリカ社会の怒り
http://www.janjannews.jp/archives/2596528.html
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