[CML 002959] トヨタ自動車リコール問題へのアメリカ社会の怒り

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 2月 12日 (金) 21:00:26 JST


 トヨタ自動車の大規模リコールが相次いでいる。アクセルペダルなどの不具合そのものの重大性に加えて、問題認識後の対応が遅過ぎて後手に回っている点が批判を拡大させている。この点で雪印食中毒事件や三菱自動車のリコール隠しなど既存の企業不祥事と類似する。トヨタも日本企業の悪い面から免れていないことを示した。

 日本企業が不祥事を隠蔽したがる背景には、消費者の権利意識が弱く、隠蔽で済んでしまうケースも少なくないためである。しかし、成熟したアメリカ社会では事情が異なる。トヨタへの風当たりは厳しく、信用失墜の感がある。

 格付け会社はトヨタ自動車の格付けの引き下げを始めた。また、トヨタを被告とした集団訴訟も相次いでいる。欠陥車両による損害賠償請求だけでなく、リコール対象車を売りに出す場合の価格低下で生じた損失を取り戻すための集団訴訟の動きもある。

 米国で高まるトヨタ批判に対し、日本ではジャパン・バッシングの一環と反発する向きもあるが、事態は一層深刻である。トヨタの競合であるゼネラルモーターズ(GM)の役員であるマーク・ロイス氏は2009年2月10日に「トヨタのリコールは自動車産業全体に悪影響を及ぼす」と発言した。GMは自動車業界が健全な産業であり、公正な条件で競争することを望んでいるとした。

 GM役員の指摘はアメリカ社会のトヨタへの怒りを考える上で重要である。価値観の異なる人々から構成されるアメリカ社会では、最低限の条件として公正(フェア)であることを重視する。隠蔽体質が批判されるトヨタは、この公正さに反する存在である。そのような企業が存在することは業界自体にとって迷惑である。このような根源的な問題があるために「結果的にリコールは行われた」「欠陥は微細である」という類の言い訳は無意味である。

 日本人がジャパン・バッシングと感じる批判は戦前から続く古くて新しい問題である。日米のすれ違いの背景には日本社会の公正さへの感覚の鈍さがある。たとえば日本の輸出企業批判には労働者を低賃金・長時間で働かせて低価格な商品を販売することはアンフェアであるという感覚が背景に存在した。この点に思い至らなければ、表面的な技術論で安全性を主張しようと、トヨタ自動車への信頼は回復しないだろう。

 日本でもトヨタ自動車の品質保証担当役員である横山裕行常務役員が「お客さまの感覚と車両の挙動がずれている」と消費者側に責任転嫁する発言で反感を買った。日本社会でも健全な消費者感覚とずれてしまっている。トヨタ自動車はアメリカ社会との乖離が大きいことを自覚し、謙虚に反省する必要がある。
http://www.janjannews.jp/archives/2596528.html
林田力(『東急不動産だまし売り裁判』著者)
http://sky.geocities.jp/hayariki4/book.htm
東急不動産で買ってはいけない 被害者が語る「騙し売り」の手口
http://www.mynewsjapan.com/reports/1101









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