[CML 002904] 「阿久根市長 支持集めるわけ」という見出しの朝日新聞の記事

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2010年 2月 8日 (月) 00:37:08 JST


裁判所の決定を無視して市職員の職務への復帰、給与の支払いを拒否したままであったり、自身
の個人ブログに障害者を差別する記述をしたことをメディアや市民に批判されると逆に居直って、
「日本の裏社会を構成している主な要素はヤクザと同和そして在日」などと一段とエスカレートさせ
た差別的な記述を自身のブログにさらに書き連ねたり、 メディアの市庁舎内での撮影を原則禁止 
にして国民の知る権利、報道の自由に挑戦する姿勢を見せたり、と最近の鹿児島県・阿久根市長
の妄虚、蒙昧ぶりは目に余るというレベルをとうに越えた愚かしさです。彼は政治家というにはあら
ず、 もはや狂恣の人と形容するほかないでしょう。 今月の28日には地元の阿久根市では県内の
障害者団体などの阿久根市長抗議のための県民集会が開かれる予定のようです。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/149960

さて、そうした中、朝日新聞が昨日6日付で「阿久根市長 支持集めるわけ」という記事を掲載して
いるのですが、この記事、視点はなかなかユニークなものの、 肝心の記事の根幹の部分でケアレ
スミスでは済まされない深刻なミスを犯しています。同記事が「阿久根市長がそれでも支持を集め
る」 最大の理由にあげるのは、 公務員と民間の天と地ともいうべき賃金格差の問題ですが、その
根幹の部分の数字のはじき方が恣意的なのです。

記事には次のように書かれています。「市によると、 08年度の市職員の平均月給は36万2820
円、平均賞与は168万2849円。単純計算すると平均年収は約600万円だ。鹿児島県の統計で
は、1人あたりの市民所得で阿久根市は約102万円(06年度分)と、県内18市で最下位に近い。 
多くの市民が『公務員の給与は高い』と実感している」。なんと阿久根市職員と同市の民間労働者
の賃金格差は6対1。上記によれば市職員は同市の民間労働者の6倍もの高額所得者ということ
になるわけですから、市民の間に「公務員の給与は高い」という批判、 フラストレーションが生まれ
てくるのは見やすい道理です。これだけの「公民」 (公務員と民間) 格差があるならば竹原市長の
宣言する「革命」 (市職員給与の削減) の公約は阿久根市民ならずとも誰もが賛成するところとな
るに違いありません。こういう記事の書き方では記事の体裁はニュートラルであっても、結局「竹原
市長よ、頑張れ」というエールの記事になるほかありません。

しかし、上記記事の所得の数字のはじき方は誤っています。下記の阿久根市統計によれば、同市
の人口は26,689人(H10)、世帯数は10,285世帯(1世帯当たり人員 2.55人。H12)。であ
るならば、 上記の阿久根市職員の平均年収約600万円は単純計算(共働きなどの要件を除外)
で1世帯当たりの年収とみなすべきものですから、 市民所得の平均も1人当たりではなく、 1世帯
当たり(1世帯当たり人員2.55人)の所得に換算し直して市職員年収と比較する必要があります。
そうすると市民の平均年収(これも複雑な要因は除外した単純計算)は約472万円ということにな
り、市職員の平均年収約600万円との年収差は128万、 割合にして1.27対1の開きということ
になります。むろん依然として公務員の方が民間より年収が多いという事実には変わりはありませ
んが、賃金格差は全国の「公民」の格差の平均とそう違わないものになります。すなわち、この「公
民」の賃金格差は阿久根市特有のものではない、ということにもなります。
http://www.city.akune.kagoshima.jp/syokai/pdf/H13toukeiakune.pdf

朝日新聞は「阿久根市長に支持が集まる」みせかけの理由の本質にもっと迫るべきでした。そうす
ればほんとうにユニークな記事と呼んでいいものになったのだと思います。 朝日新聞は誤りを正し
て再度記事を練り直す必要があるように思います。 今度の記事は誤った認識をさらに増幅させる
結果しかもたらさないだろうという意味で「犯罪」的であるといわなければならないように思います。

以下、くだんの朝日新聞の記事です(インターネット版にはありませんのでご注意ください)。

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阿久根市長 支持集めるわけ(朝日新聞『もっと知りたい』 2010年2月6日) 

 意に添わぬ職員には「処分」をちらつかせ、市職労には庁舎からの事務所退去を迫り、報道陣の
庁舎内撮影は「原則禁止」。鹿児島県阿久根市の竹原信一(しんいち)市長(50)の政治姿勢に、疑
問の声が高まる一方で、「それでも市長を支持する」との声が絶えない。その事情とは――。
                                     (矢崎慶一、三輪千尋、周防原孝司)

「独裁」と批判 でも改革期待

 市長派の松元薫久(しげひさ)議員(33)は「市長を支持する市民や市議の基本にあるのは『公民』
(公務員と民間)格差。是正したいという強い思いがある」と指摘する。

 市長は昨年2月、消防を除く全市職員の2007年度の給与額などを市のホームページで1円単位
で公開。多くの市民が敏感に反応した。

 市によると、 08年度の市職員の平均月給は36万2820円、 平均賞与は168万2849円。単純
計算すると平均年収は約600万円だ。鹿児島県の統計では、 1人あたりの市民所得で阿久根市は
約102万円(06年度分)と、 県内18市で最下位に近い。 多くの市民が「公務員の給与は高い」と実
感している。

 ブログでの発信を含む徹底した情報公開の効果も市長に味方する。 市内の70代男性は 「竹原市
長になるまでは、市職員と民間との所得格差がそれほど大きいとは思ってもいなかった」と漏らす。

 閉塞感が漂う地域経済の現状も影響している。

 阿久根市の北隣にある同県出水市では昨年2月、パイオニアのプラズマディスプレー工場が閉鎖
し、12月には隣接するNECの液晶ディスプレー工場が40年間の歴史の幕を閉じた。人口約5万7
千人の街から約千人の雇用が一気に消えた。

 阿久根市の中心部から両工場まで約15繊車で通勤していた従業員も多かった。秋田などの工
場への配置転換に応じず地元に残った大半の元従業員は、 いまだに次の仕事が見つからない状
況だ。

 街の疲弊が目立ち始めたのは、04年3月の九州新幹線の一部開通 (鹿児島中央−新八代)以
降という。 新幹線ルートから外れただけでなくJR九州が撤退し、 特急が止まっていた阿久根駅は
第三セクターのローカル駅となり、駅前も寂れた。

 飲食店経営の女性は「市長はまだ改革を実現していない。辞めるなら徹底的に改革してから」

                             ● ● ●

 市議会から2回の不信任決議を突きつけられて失職しながらも昨年5月、562票差の接線を制
して再選を果たした竹原市長。だが、「逆風」も強まってきた。

 まず再選の2カ月後。部署ごとに張り出させていた07年度の人件費総額を記した紙をはがした
として、 市長は男性係長(45)を懲戒免職処分にした。 男性が処分取り消しを求めた訴訟では昨
年12月、「判決確定まで処分の効力を停止する」という地裁決定が確定。が、男性は今も職場復
帰できず、給料も支払われていない。

 ブログに「高度医療のおかげで機能障害を持ったのを生き残らせている」 と記したことについて
も、障害者団体などから強い抗議が相次ぐ。鹿児島県議会からは異例の非難決議を受け、市議
会も謝罪などを求めて決議した。

 そもそも、市議会の決議の提案者は「市長の改革を支持する」と昨年3月の市議選に立ち、 得
票4位で当選した女性市議(51)だ。選挙で市長を支持した市民団体 「阿想会」 の松岡徳博会長
(55)ですら、「議会、職員、市長の三位一体での改革を期待したが、現状は、 話を聞かない歩み
寄らない」という『独裁政治』。市政がマヒしている」とこぼす。

 20〜40代の市民らでつくる「阿久根の将来を考える会」が1月28日、初会合を開いた。 「法と
秩序を守らない人に市長の資格はない。辞職すべきだ」。市民約50人、市議15人の話し合いで
は、批判の声が目立った。


                             ● ● ●

 現在の市議会構成は市長派4人、 反市長派12人。 不信任決議案を出せば可決の可能性は
高いが、動きは鈍い。

 反市長派にとっては、 これまで2回の不信任決議の結末がトラウマとなっている。 1回目の不
信任で市長は議会を解散し、当時市長派だった5人が上位当選した。 2回目は出直し選で市長
が返り咲く。2回とも、むしろ不利な状況を招いた。「市長は議会解散をにらみ、不信任決議を待
っているのでは」。反市長派の市議らは疑心暗鬼だ。

 市民の解職請求(リコール)は制度上、選挙後1年間はできない。仮にその動きが出てきても、
請求は早くて6月以降になる。

 「今年は激動の年になります。これからの作業に比べれば、これまでのものは児戯です」。 市
長は1月1日付のブログで宣言した。

 多くの市民が戸惑いながらも、市長と市議会の動きを注視している。

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■竹原市長を巡る主な出来事
【2008年】
8月31日
 竹原氏が市長に初当選
10月17日
 市議会定数を16から6とする削減案などを市議会が否決
【2009年】
2月6日
 市議会で市長の不信任決議、市長は10日、議会を解散
4月16日
 市長が市庁舎内に2007年度の職員人件費総額を張り出させる
  17日
 再度の市長不信任決議。市長失職後、人件費の張り紙がすべてはがされる
5月31日
 出直し市長選で竹原氏、再選
6月11日
 市職労事務所の使用を取り消し、退去を通告。24日、市職労が処分取り消しを求めて提訴
7月31日
 人件費の張り紙をはがしたとして、男性係長を懲戒免職処分に
8月26日
 元係長が処分取り消しを求めて鹿児島地裁に提訴。10月21日、地裁が判決確定までの効力停止を決定
10月23日
 市職労事務所をめぐり、鹿児島地裁が事務所退去の処分を取り消す判決
11月30日
 元係長が未払い給与支払いを求めて提訴
12月17日
 県議会がブログ記述について非難決議案を全会一致で可決。市議会も18日、謝罪などを求める決議
【2010年】
1月27日
 報道各社に対し、市庁舎内での撮影は原則禁止すると文書で通知
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*上記新聞記事は著作権法第三十九条に基づいて転載しています。


東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp


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