[CML 003811] NPJシンポ植草報告「普天間基地移設問題の行方」を読んで ―間接的NPJシンポ感想とでもいうべきもの

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2010年 4月 23日 (金) 20:34:52 JST


先日、東京新聞編集委員(防衛省取材担当)の半田滋さんの講演を聴いた感想、もしくは批判のよう
なものを愚生ブログに少しばかり書いていたということもあって(「普天間問題 マス・メディアに勤める
記者の限界というべきなのか ――半田滋さん(東京新聞編集委員)の立ち位置について」2010年4月
11日)、その半田滋さんとエコノミストの植草一秀さんをゲスト・スピーカーにして今月20日に東京で
開かれた「どうなる日本? どうする日本?」(NPJ主催)と題されたシンポジウムの様子が気になって
いましたが、同シンポジウムの模様をそのシンポのスピーカーのおひとりだった植草さんがご自身の
ブログで報告されています(「NPJシンポ報告と普天間基地移設問題の行方」 2010年4月21日)。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-8990.html

その植草氏の報告によれば、「会場は100名のシンポ参加者で満席となり、活気に満ちた空気のな
かで熱い論議が闘わされた」ということです。なかなかの盛況であったようで、NPJ読者のひとりとし
てもちろんうれしく思います。

とはいえ、上記の植草氏の報告を読む限り、同シンポにおいて植草氏は民主党評価、また普天間問
題について私には同意できない認識を示しています。同氏をはじめとするある種の論者の民主党評
価の問題点については稿を改めて論じることにしたいと思っていますが、ここでは普天間問題に関す
る植草氏の認識について私の疑問とするところについて少し述べます(この記事では半田記者のこ
の問題についての直接の言及を知ることはできませんので、この問題についての同記者の認識の
問題についてはふれることはできませんが、植草氏の上記の記事のコンテキストから見て、半田記
者も植草氏とほぼ同様の考え方をしているのではないか、と推測できます)。

さて、上記ブログ記事によれば、植草氏はNPJシンポにおいて、「フロアからは普天間の問題は全
体から見れば大きな問題とは言えない。鳩山政権攻撃に終始するマスコミの姿勢が問題だとの指
摘と、沖縄の負担軽減を軸に最低でも県外の主張をもとに鳩山政権を批判するなら、国内での代
替地選定に向けての努力を求めなければ論理的整合性がないとの見解が示された。/まさに正
論である。県外移設を求めながら、徳之島の基地反対の住民意向を全面支援するのでは、『解な
し』をメディアが誘導していることになる」との自身の私見を述べた上で、「県外移設には沖縄負担
を代替する地域が存在することが不可欠である。しかし、日本にそのような地域が一箇所も存在し
ないなら、結論は海外しかないということになる」という持論を展開したようです。

しかし、植草氏の「普天間の問題は全体から見れば大きな問題とは言えない」、という認識がまず
間違っている、と言わなければならないだろう、と私は思います。(同認識はフロアからの指摘だと
いうものの、植草氏はその指摘を「まさに正論である」と肯定するわけですから、彼自身の認識だ
といって差し支えないものでしょう)。

植草氏が上記でいう「大きな問題」とは、昨年8月の総選挙で戦後半世紀にわたって日本を支配し
てきた自民党政権が崩壊し、民主党中心の政権交代が実現したことの歴史的意義の「大きさ」の
ことを言っているのでしょうが、その歴史的意義の問題と民主党中心政権(鳩山内閣)が政権交代
後8か月の間に実際に行ってきた政局運営、数々の公約不実行の問題とは性質を異にします。
民主党がマニフェストで掲げた公約の大半が実現されておらず、また中途半端なものでしかありま
せん。すでに紹介していることですが、このことは植草氏自身が天木直人氏との対論の中で次の
ように述べて認めていることです。

「ただこれまでの半年を見る限り、ほんとうに期待した成果はまだ目には見えてきていない。(略)
一番重要なのは天下りを根絶するということなんですけれども、これもかなり従来野党のときの主
張から比べると後退している。(略)それから政治と金の問題の根幹にあるのは企業が政治にお
金を出すということなんです。(略)ですからこの膿を出し切るにやはり企業団体献金を全面的に
禁止する新しい法体系を作る必要がある。(略)これをやらなければ政権交代の意味はないと思
います。それを実際にこの鳩山政権が実行に移さなければ私も鳩山政権を支持するのをやめま
す」(参照:「『鳩山政権潰しの動きに警告するウォルフレン論文(中央公論の最新号)』という投稿
への反論」)。
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi/1630875.html

その公約不実行の中でも普天間問題に関する鳩山政権の公約不実行(現在進行形)の問題は、
国民、沖縄県民の期待度の高さという点においても頭抜けた位置を占めており、「全体から見れ
ば大きな問題とは言えない」という問題とは決して言えません。政権交代という歴史的意義と普天
間問題という比較できない性質のものを比較して「普天間の問題は全体から見れば大きな問題
とは言えない」、という植草氏の認識は荒唐無稽なほど誤っている、というほかありません。

第2。植草氏は「鳩山政権攻撃に終始するマスコミの姿勢が問題だとの」フロアの指摘にも「まさ
に正論である」とわが意を得たり、の感で同意していますが、この植草氏の認識も誤っているよう
に私は思います。まず第一にマス・メディアの最大の役割は「権力監視」(権力に対する”ウォッチ
・ドッグ”(監視者)としての役割)にあるという民主主義の基本を学んだことのある者ならば誰もが
肯定するジャーナリズム論の基本中のキを植草氏は無視しています。「権力監視」とは政権党の
監視であることはいうまでもありません。植草氏にかかれば民主党はまるでボランティア団体か
なにかで、政権党でもなんでもないかのようです。マス・メディアにとって鳩山政権を批判的な視点
で論評することはまさに基本中のキというべきことなのです。そのメディアの政権批判を「攻撃」な
どと捉える視点は尋常な言論人のとるべき視点とはいえません。

たしかに今回の小沢民主党幹事長の政治資金規正法違反事件に関して、検察主導のリーク記
事を無批判に垂れ流すばかりで、世論をミスリードしてきたマス・メディアの責任はきわめて重大
なものがあるだろう、と私も思います。また、マス・メディアの上層部、または記者が自民党政権
時代に獲得した既得権を死守しようとして、あえて「民主党潰し」の記事を書いた側面も少なから
ずあるのではないか、と私も推測するところがあります。しかし、マス・メディアはこれまで2大政
党制推進の論陣を張り、そのため民主党よ頑張れ、というエールを送リ続ける記事を書いてい
たのです(参照:「マス・メディアのダブル・スタンダード報道」)。そのマス・メディアが単に「鳩山政
権攻撃に終始する」という認識は、これもかなりな程度に被害妄想的な荒唐無稽の類の論という
べきだろう、と私は思います。
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi/885670.html

第3。また、植草氏は、上記のNPJシンポにおいて、普天間基地のいわゆる「移設」問題につい
ても「県外移設を求めながら、徳之島の基地反対の住民意向を全面支援するのでは、『解なし』
をメディアが誘導していることになる」。「県外移設には沖縄負担を代替する地域が存在すること
が不可欠である。しかし、日本にそのような地域が一箇所も存在しないなら、結論は海外しかな
いということになる」という認識も述べているようです。しかし、この植草氏の認識も誤っているだ
ろう、と私は思います。

メディアはともかくとして、普天間基地無条件即時返還を求める少ないない人々は、「県外移設」
とか「国外移設」とかいうレベルではなく、県外にせよ、国外にせよどこそこの土地に普天間の
代替基地をつくろうと提案する「移設の論理」こそが「すでに破綻した論理に導かれており、それ
ゆえ袋小路に落ち込むか、最悪の結果を沖縄住民に押し付けるかにしかならない」という「移設
方式」そのものの破綻と誤りを指摘しているのです。

以下にそのことを証する2つの声明文(呼びかけ文)と1個の最近のブログ記事を紹介しておき
ます。そのうちの1個の声明文は次のようなものです。同声明には武藤一羊さん(ピープルズ・
プラン研究所)など501名の人々が連名者として名を連ねています。

■[鳩山首相への緊急提案]「移設」方式を放棄し、普天間基地の閉鎖のための対米交渉を
(2009年12月8日付。下記PDFの6/6頁参照)
http://www.peoples-plan.org/jp/ppmagazine/pp49/pp49_muto.pdf

上記と同様の認識はもうひとつの呼びかけ文にも見られます。この呼びかけ文にも596名の
人々が賛同者として名を連ねています。

■「今年こそ、鳩山連立政権に普天間基地の辺野古移設を断念させ、『世界一危険な普天間
基地』の即時閉鎖・撤去を実現しよう!!」(CML 002529 2010年1月1日)
http://list.jca.apc.org/public/cml/2010-January/002483.html

1個の最近のブログ記事は以下のようなものです。この記事は全文を示しておきたいのですが、
長文になりますので全文は下記URLをクリックしてぜひご参照ください。

■政府マスコミの皆さん、恐縮ですが再度ご確認を。普天間基地は「移設」でなくて「撤去・返還」です
(Afternoon Cafe 2010年4月21日)
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-228.html

また、徳之島案の不当性については下記の小論をご参照いただければ幸いです。

■徳之島案を「県外移設」といえるのか? 鳩山政権内に急浮上している徳之島案は琉球列
島・沖縄差別政策の延長というべきではないのか!(愚生ブログ 2010年4月10日付)
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi/1811585.html


植草氏には自らが拠りどころとする認識の誤りに早く気づいていただきたいものです。以上、
植草報告を読んでの間接的なNPJシンポの感想ということになるでしょうか。

参考:NPJシンポ植草報告「普天間基地移設問題の行方」を読んで ―間接的NPJシンポ感
想とでもいうべきもの 
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi/2496946.html


東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi



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