[CML 003620] 新刊:前田 朗『ヘイト・クライム ――憎悪犯罪が日本を壊す』

maeda akira maeda at zokei.ac.jp
2010年 4月 8日 (木) 13:34:18 JST


前田 朗です。

4月8日

自著の宣伝です。

「アマゾン、本」のページで「ヘイト・クライム」で検索すれば一発で出てきます。

すごい長いアドレスです。


http://www.amazon.co.jp/%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0-%E6%86%8E%E6%82%AA%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E3%81%8C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%82%92%E5%A3%8A%E3%81%99-%E5%89%8D%E7%94%B0-%E6%9C%97/dp/4902773260/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1270627072&sr=8-1
<http://www.amazon.co.jp/%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0-%E6%86%8E%E6%82%AA%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E3%81%8C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%82%92%E5%A3%8A%E3%81%99-%E5%89%8D%E7%94%B0-%E6%9C%97/dp/4902773260/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1270627072&sr=8-1>

前田 朗『ヘイト・クライム ――憎悪犯罪が日本を壊す』(発行:三一書房労働
組合、発売:教育実務センター)

定価:1300円+税

はしがき    

第1章 噴き出すヘイト・クライム

   ――京都朝鮮学校事件から見えてきたこと             

京都朝鮮学校事件/保護者の訴え/差別と犯罪/相次ぐ差別と暴力/人種主義を
生み出す社会/どこが「保守」なのか/見て見ぬふりをする政府/差別を許さな
い市民/水晶の夜はゴメンです/マスメディアも注目/ヘイト・クライムの被害者

第2章 朝鮮人差別はいま

      ――9.17以後の硬直した日本

     制裁発動/誘発される差別/差別の再生産構造/人権侵害の出入国規
制/課税問題/住民からの排除/ディエン報告書/人種差別撤廃委員会における
日本/アイヌは先住民族/在日朝鮮人/数々の勧告/差別の現象学/差別の
<今、ここ>/日本人の責任

第3章 コリアン・ジェノサイドとは何か  

――よみがえる関東大震災朝鮮人虐殺

     歴史的に考える/石原都知事の差別発言/ジェノサイドとは/アルメ
ニアン・ジェノサイド/レムキンの提案/ジェノサイドの定義/コリアン・ジェ
ノサイド/軍隊による虐殺/ジェノサイドの意図/ジェノサイドの客体/人道に
対する罪とは/人道に対する罪の定義/ジェノサイドは終わったか/世界史のな
かで考えよう/私たちに何ができるか

第4章 人種差別との闘い

      ――国際人権法の歩み

国連憲章/世界人権宣言/植民地独立付与宣言/国際人権規約/人種差別撤廃条
約/人種差別の定義/ヘイト・クライムを非難/人種差別との闘い/モデル国内
法/ダーバン会議/ダーバン宣言/差別予防措置/救済と補償/ダーバン二〇〇
一・日本/国際人権法に学ぶ意味

第5章 ヘイト・クライムの刑事規制

      ――社会を壊さないために

     ヘイト・クライムとは/ホールの研究/ヘイト・クライム統計法/
<過程>としてのヘイト・クライム/権力理論/複合的な現象/ヘイト・クライ
ム法/人種差別撤廃委員会勧告一般的三一/人種差別の指標/差別予防戦略/被
害者のアクセス/人種差別なき刑事司法を

第6章 人種差別禁止法をつくろう

     初期の立法提案/国際社会からの勧告/最近の立法提案/立法提案の
特徴/ヘイト・クライムの類型/今後の検討課題

あとがき

**********************************

はしがき

インターネット上でうごめいてきた人種差別が現実世界に溢れ出してきた。

二〇〇九年、日本各地で外国人に対する差別と迫害が目立ち始めた。人種主義や
人種差別は以前から起きていたが、最近は、意図的に人種差別の呼びかけがなさ
れ、組織的なヘイト・クライム(憎悪犯罪)が継続的に行われている。

第一の特徴はインターネットである。ネット上の掲示板やメーリングリスト
(ML)に人種差別が蔓延していると指摘されて久しい。国際人権機関でも、
ネット上の人種差別問題に注目が向けられ、ネット上での人種差別を克服する教
育普及を課題として掲げてきた。日本でも同じことが指摘されてきたが、差別が
現実世界に躍り出てきた。ネット上で差別と排除の共同行動が呼びかけられ、
集った「市民」が少数者に暴力的に襲いかかり始めた。

 第二の特徴は、組織性、集団性である。チマ・チョゴリ事件をはじめとする朝
鮮人に対する差別と犯罪は、個人が前面に出ていた。背後に組織的な思惑が見え
隠れすることはあったが、実行行為は個人が単独で行っていた。ところが、最近
は、組織的集団的に押しかけて脅迫や暴力を繰り返している。

*             *

 人はみな平等であり、人種、民族、出身、性別その他の理由によって政治的経
済的社会的に差別してはならない。−−こんなことは当たり前であって、誰もが
「差別はよくない」と知っている。知っているだけではない。ほとんどの人は差
別をしてはいけないと考えているし、差別しないように努力している。差別を目
撃すれば憤慨する心情を持っている。

 とはいえ、日本社会にさまざまな差別があるのも否定できない事実だ。人種差
別もあれば、少数者や先住民族に対する差別、性差別、部落差別、障害者差別な
ど、さまざまな差別が現にあり、差別に苦しんでいる人がいる。差別と闘ってい
る人もいる。そのことも誰もが知っている。誰もが不当な差別を許してはならな
いと感じている。

 けれども、差別に取り組むのは結構しんどいものだ。差別を許すなと言って
も、自分の中にも同じようなメンタリティがあるのではないかと不安になってし
まう。自分の中の差別に向き合うのはかなりのエネルギーが必要だ。差別するか
もしれない自分に向き合って、差別を克服する作業なんて、できれば避けたい。

 「私は差別しない」と思っているほうが、たぶん楽だろう。私は差別しないの
だから、差別は他人の問題だ。自分と関係ないのに、差別のような重たいテーマ
に取り組む理由がない。単なる傍観者になろうというわけではない。いざとなれ
ば私は差別に反対する。ただ、日頃から差別のことばかり考えてはいられない。

 それに、差別はよくないが、人間社会から差別が簡単になくなるとも思えな
い。みんな同じだなんてありえない。差別はよくないが、区別は必要だ。みんな
自分で努力して這い上がっていかなくてはならないんだし、努力が報われない平
等社会なんて、却って不自然だ。だから差別、差別と言っているよりも、もっと
前向きになって、努力して自分を鍛えて、区別を乗り越えていけばいいんだ――こ
ういう風潮が社会を覆っていれば、悪質な差別がひそかに隙間に入り込むのは容
易なことだろう。差別に抗するエネルギーが奪われてしまうからだ。たしかに、
ほとんどの人は積極的に差別をすることはないだろう。しかし、他人の差別が自
分の問題ではない以上、理不尽な差別が行われたときに、本当にノー!と声を上
げることができるだろうか。

 目の前の「小さな差別」−−被害者にとって決して小さくはないが−−に目を
ふさぎ、声を上げない社会は、より大きな差別が起きたときに、断固として
ノー!と言えるだろうか。

 ヘイト・クライム(憎悪犯罪)はいつの間にか社会に浸透し、蔓延するかもし
れない。人種主義や人種差別が怖いのは、気づいたときには根深く、深刻な事態
になっているからだ。いざという時には手遅れになっているからだ。

 ヘイト・クライムを放置しておくと、差別がどんどん激化していく。社会から
信頼や連帯が失われていく。公正、正義、自由、権利、尊厳といった価値や理念
も損なわれる。残るのは侮蔑、破壊、敵意、憎悪、不正の感情だけである。

憎悪犯罪は社会を壊すのだ。

    *              *

 本書は、二〇〇九年に噴出したヘイト・クライム現象に焦点を当てて、日本に
おける人種主義と人種差別の問題について検討し、ヘイト・クライムをはびこら
せないために、社会全体として取り組むべき課題を明らかにすることをめざして
いる。

 ヘイト・クライムとは、あまり聞きなれない言葉だ。詳しい定義は本文に譲る
として、とりあえず、人種・民族・国民的な差異をことさらにターゲットにして
行われる差別行為と、そうした差別の煽動のことを指している。

 人種差別撤廃条約における定義や、人種差別撤廃委員会における議論の中で、
さまざまな人種主義と人種差別の存在が明らかにされてきた。日本にも同じよう
な差別が見られるが、二〇〇九年には、意図的、組織的に差別が行われ、従来に
ないヘイト・クライム現象が起きるようになってきた。被害も深刻である。

 本書の構成は次のとおりである。

 第1章では、京都朝鮮学校事件に典型的な朝鮮人差別や外国人に対する迫害、
排外主義の諸現象を取り上げ、この現象をめぐる日本社会の反応を確認する。

 第2章では、それ以前から長期間にわたって継続してきた朝鮮人差別を、日本
政府による差別と、日本社会における差別に分けて、それぞれ明らかにしていく。

 第3章では、ヘイト・クライムの極限とも言うべき関東大震災朝鮮人虐殺を、
ジェノサイドと人道に対する罪という観点から検討し、世界史の中におけるコリ
アン・ジェノサイドについて考える。

 第4章では、人種差別撤廃条約を中心とする国際的取組みをフォローし、さら
にダーバン人種差別反対世界会議の成果文書であるダーバン宣言を一瞥して、人
種差別との闘いを考える。

 第5章では、ヘイト・クライムを禁止する刑事規制に焦点を当てて、英米法に
おけるヘイト・クライムの状況や、人種差別撤廃委員会によるガイドラインを紹
介する。

第6章では、日本における人種差別禁止法についての議論を踏まえて、人種差別
禁止法制定の課題を探る。

 以上を通じて、ヘイト・クライムを許さない社会をいかにして形成していくの
かという課題への第一歩を踏み出すことができるだろう。

 



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