[CML 003605] 商業地域の仮処分決定に見る日照権保護の積み重ね

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 4月 6日 (火) 21:28:44 JST


【PJニュース 2010年4月3日】尼崎市の阪急塚口駅北側で建設中の14階建てマンションをめぐり、北隣の8階建てマンション住民らが日照権侵害などを理由とする建築差し止めの仮処分申し立てに対し、神戸地裁尼崎支部(工藤涼二裁判官)は10階以上の工事を差し止める仮処分決定をした。
http://www.pjnews.net/news/794/20100403_1
http://news.livedoor.com/article/detail/4697534/
建築地は日影による建築物の高さ規制がない都市計画法上の「近隣商業地域」に当たり、日照権を理由にした工事差し止めが認められたことは異例である。住民側弁護士は「最低限の行政基準だけ守ればいいと考える業者が多い中、日照権の存在を明示したことは意義がある」とコメントする。

日照権は海外でもローマ字の「Nisshoken」として紹介されるほど知名度が高い。太陽の光を浴びるという当たり前の状態を権利として主張しなければならないという日本の異常性は海外でもインパクトを与えた。「ウサギ小屋」と揶揄される日本の住環境の貧困は物理的スペースの狭さだけの問題ではないことを海外では見抜いていた。

言葉だけが先行する感のある環境権の中で古くから権利性が認められた日照権であったが、裁判所の適用範囲は極めて狭く、被害者救済には不十分であった。行政法規の日影規制を超えて日照権が保護されることが稀であったためである。その意味で、商業地域で日照権を理由に工事差し止めを認めた神戸地裁尼崎支部決定は画期的である。

日照権の根底には人間らしく生きていくためには日照が必要という発想がある。それならば商業地域であろうとも人が居住している以上、日照権は認められるべきである。今回の決定は、ようやく日本の司法も開発よりも人権を優先させるようになった。

司法は判例の積み重ねである。今回の決定に至るまでにも積み重ねがあった。既に東京地裁平成18年8月30日判決(平成17年(ワ)3018号)では北側隣地建て替えによる、敷地の一部が商業地域のマンション住民の日照被害を認定した。

これは新築マンション売主の東急不動産が不利益事実(隣地建て替え)を説明せずに販売したとして、マンション購入者である林田が消費者契約法に基づき、売買代金の返還を求めて提訴した裁判である。そのために日照権という言葉は使われていないが、日影規制の有無で形式的に判断せず、北向きの窓からも採光があり、それが妨げられることの被害を認めた。ここには日影被害から日照被害というパラダイムの転換がある。この東京地裁判決は神戸地裁尼崎支部決定の先駆となるものである。

基本的人権は「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」である(日本国憲法第97条)。日照権も人々の裁判闘争の積み重ねが権利に実質的な内容を付与している。【了】

林田力(『東急不動産だまし売り裁判』著者)
http://sky.geocities.jp/hayariki4/book.htm
東急不動産で買ってはいけない 被害者が語る「騙し売り」の手口
http://www.mynewsjapan.com/reports/1101



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