[CML 001295] Re2: PP研ウェブ新着:鳩山由紀夫さん、男同士の友愛、大事ですか?/青山薫

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2009年 9月 10日 (木) 18:47:17 JST


池田さん wrote:
> 青山さんは、Fraternite を英語を母語とする人が見たらぎょっとする、英語版を
> 作成したさい、そのことへの配慮が鳩山さんには欠けていたのでは、とおっしゃ
> っているのだと受け止めましたが、違うでしょうか。

池田さんのご指摘のとおり、青山さんの今回のご論攷の意図には鳩山氏の論攷「私の政治哲学」の
英語版の表現の問題も含まれていると思います。そのことは「『『友愛』の精神』。英訳がfraternityだ
と聞いて『「そりゃあないだろ…?』」と思った、という青山さんの今回の文章の冒頭のフレーズからも
明らかなように思います。また、「そのことへの配慮が鳩山さんには欠けていた」というのもご指摘の
とおりだと思います。だから、青山さんは「鳩山由紀夫さん、男同士の友愛、大事ですか?」と批判さ
れたのでしょう。池田さんが上記で指摘されるそのこと自体について私にも異議はないのです。



しかし、「英語版を作成」する際、「友愛」という言葉をどのように英訳すればよいのか? 鳩山氏が
「(「友愛」は)フランス革命のスローガン『自由・平等・博愛』の博愛=フラタナティ(fraternite)のこと
を指す。/祖父鳩山一郎が、クーデンホフ・カレルギーの著書を翻訳して出版したとき、このフラタナ
ティを博愛ではなくて友愛と訳した」(「私の政治哲学」)と表明している以上、その「友愛」はフランス
革命のスローガン「自由・平等・博愛」の「博愛」のことであり、そしてそのスローガンは仏語で成句と
なっている「Liberte, egalite, fraternite ou la mort」(自由、平等、博愛しからずんば死を)を指し、こ
の仏語の成句に対する英語の対応語も「Liberty, equality, fraternity」ということになります。この表
現はそのそれぞれの国の慣用句というべきものであり、「fraternite」という言葉の原義に異議があ
るからといって訳者が勝手にほかの言葉に替えてしまっては本来の意味が通じなくなります。訳者
にせいぜいできるのは「fraternite」という語に注をつけることくらいです。

そういう次第ですから、鳩山氏が「友愛」の英語表記を「fraternite」としたからといって、鳩山氏が
「男同士の友愛」だけを大切にしているというあかしにはまったくならないのです。もちろん、上記で
も述べたように鳩山氏は「fraternite」という語に注をつけることはできましたし、注をつけるべきでし
たが、鳩山氏にはそういう視点はもともとなかった、ということでしょう。この点について鳩山氏を批
判してももちろん差し支えありませんが、当然批判の内容は「鳩山由紀夫さん、男同士の友愛、大
事ですか?」というボルテージの上がったものにはなりえないでしょう。

私はそういう意味で「残念ながら今回の青山さんの論は少々勇み足だったような気がします」とコメ
ントしているのですが・・・

池田さん wrote:
> ある概念語が歴史を重ね、さらには翻訳を重ねていくうちに異なる内実をそなえ
> ていくことへの繊細さももちあわせることは、言葉をたいせつにすべき政治家に
> は要求してもいいと思います。

この点についても一般論としては池田さんのおっしゃるとおりだと思いますが、上記のような的を外
した批判(と、私としては思える)をしても説得力に欠けるでしょう、ということを私は言っているつも
りです。

付記1:
実は青山さんとは私は同じMLに属していて、青山さんから「確かに日本語の「友愛」自体には問
題はないと思え、出典の問題を鳩山問題にするのはどうかと迷いました。しかし鳩山さんが同じ文
章をNew York TimesとFinancial Timesに「freedom, equality, fraternity」のfraternityだ、と書かれ
ているので、そこに歴史的な含意があることをせめて知っておいてほしいわけです。(略)せめてこ
の歴史を意識して「注釈つきで」使ってほしいぞ、というのが私も賛成するところです」

「それでも苦情を言うのは、知らないで繰り返し使われているさまざまな差別的な習慣や言葉の方
が、自覚がないだけたちが悪い――というか、誰かがくぎを刺して意識的に変化させていかないと、
スル―されてしまうと、まずい、という原則にのっとたのです」という返信がきています。

上記の青山さんのご認識にはまったく賛成です。が、「青山さんの論は少々勇み足」という私の評
価は変わりません。

付記2:
私は鳩山氏の「友愛」理論自体は抽象的にすぎて政治家の論としては不適だと思っています。と
いうよりもむしろ胡散臭い感じの方が強いです。


東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp

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From: "池田香代子" <0146945001 at jcom.home.ne.jp>
To: "市民のML" <cml at list.jca.apc.org>
Sent: Thursday, September 10, 2009 11:29 AM
Subject: [CML 001290] Re: PP研ウェブ新着:鳩山由紀夫さん、男同士の友愛、大事ですか?/青山薫


> 池田香代子です。
>
> 東本さん、
> 青山さんは、Fraternite を英語を母語とする人が見たらぎょっとする、英語版を
> 作成したさい、そのことへの配慮が鳩山さんには欠けていたのでは、とおっしゃ
> っているのだと受け止めましたが、違うでしょうか。
>
> ある概念語が歴史を重ね、さらには翻訳を重ねていくうちに異なる内実をそなえ
> ていくことへの繊細さももちあわせることは、言葉をたいせつにすべき政治家に
> は要求してもいいと思います。
>
>
> ◇◇◇◇◇◇◇◇
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