[CML 001233] 書籍案内 冬の兵士 イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実
YAMASAKI Hisataka
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2009年 9月 4日 (金) 18:16:11 JST
【転載自由です。重複して受信される方にはお詫びいたします】
「TUP速報冬の兵士プロジェクトチーム」の山崎久隆です。
ドキュメンタリーにもなっている「冬の兵士」翻訳版が岩波書店から出版さ
れています。1995円で各書店にて販売中ですが、Amazonなどでも買えます。
どうぞ、イラクアフガン戦争の真実の姿を知ってください。そして、そこに
自衛隊を出している、あるいはこれから出していくことの意味を考えていただ
ければ幸いです。
おそらく、自衛隊員がこれまで戦闘で死傷しなかったことが奇跡に思われる
と共に、イラク帰還自衛官の自殺が多い理由の一端も見えるかも知れません。
「死と隣り合わせ」という表現がありますが、死を生み出すのが自分自身で
もあるとしたら、この言葉の意味が全く異なってきます。
戦後日本は「死と隣り合わせ」にはならずに済んだかも知れません。それは、
それ以前の歴史において日本軍が「冬の兵士」に描かれている兵士たちと全く
同じ状況に置かれていて、そのことが「二度と戦争はご免だ」と思う意識を生
み、戦争につながる物事を直感的に感じ取って忌避してきたからでもあると思
います。
しかし今や戦場や空襲や引き上げや虐殺の記憶を持つ人は減っていき、逆に
泥沼に足を取られるように戦場に向かう「意識」が芽生えはじめています。
「やられたらやり返せ」これを文字通り体現する思想が「的基地攻撃」論で
す。「目には目を」これは核武装を推進する論理です。「備えあれば憂いな
し」ミサイル防衛推進派の口にすることですが、この「備え」が迎撃「ミサイ
ル」であることに気づいていません。
全ての戦争は「自衛戦争」から始まります。日本の中国出兵は「侵略しま
す」と言って行ったのではないのです。現代では万余の兵士を出兵させる代わ
りにミサイルを撃ち込むだけであって、本質的な違いはありません。
冬の兵士の物語は、1945年以前の日本でも存在し、そして数こそ少ないかも
知れませんが今も密かに日夜自衛隊の中で起きていることです。
政権が変わります。「幸いにして」と言えるような政策転換を引き起こすた
めには、ここで安心などしては居られません。まだ政策は実行されていません。
自衛隊はインド洋にいますし、アフガンに送られる可能性はあります。
止めるためには知ることと行動することが必要でしょう。
「冬の兵士」
イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実反戦イラク帰還兵の会と
アーロン・グランツ著
TUP(Translators United for Peace=平和をめざす翻訳家たち)翻訳
イラク戦争をめぐる私たちの様々な疑問に対して答えをくれるの
はどんな人たちだろう。
中東政策をデザインする米国政府の高官たちだろうか。
国の復活を主張する新生イラク政府の閣僚たちだろうか。
現地で作戦を指揮する経験豊かな将軍たちだろうか。
中東を知り尽くした学者や批評家たちだろうか。
軍隊と行動をともにする企業メディアの記者たちだろうか。
地元民のあいだに入り込む独立した記者たちだろうか。
地元から発信されるブログや電子メールの書き手たちだろうか。
そのどれもが答えの一片ではあるだろう。
そして、もう一つのあまり顧みられることのなかった一片、現場に
立つ兵士たちの声をかつてない規模で収集したのが本書『冬の兵士
イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実』である。
私たちは本書から様々な疑問に対する答えを得ることができる。
それぞれは巨大なパズルの一片にすぎないが、ひとつひとつを適切
な位置にはめこんでいくとき、いままで見たことのなかった戦場の
真実 があなたの目にも見えてくるだろう。
イラク戦争は終わったのだろうか。
戦争が終わったのなら、市民や兵士が死に続けるのはなぜだろうか。
精密兵器のおかげで市民の被害はほんとうに減ったのだろうか。
発射を命ずる指揮官たちも、兵器と同じぐらい精密になれるのだろ
うか。
巻き添え被害にあったイラク人は補償を受けているのだろうか。
占領に反対する抵抗分子はみなアルカイダか過激派なのだろうか。
米軍による第二次大戦後の日本占領はあんなに平穏だったのに、な
ぜイラクではうまくいかないのだろうか。
ブッシュの「増派」戦略は成功し、イラクは平和に近づいたのだろ
うか。
オバマの「増派」はアフガニスタンに良い結果をもたらすだろうか。
しばしば報じられる兵士の残虐な行いはなぜ起きるのだろうか。
志願して兵士になる人は戦争好きの乱暴者なのだろうか。
志願兵が戦闘を拒否するなんてとんでもないことだろうか。
毎日平均18人の米兵が自死するのはなぜだろうか。
それとも、そんな遠い国の話や、よその国の兵士の話にはなんの関
心もないですか。
貧しい若者たちが大学への進学給付を求めて志願兵になったとき、
新兵訓練で、戦場で、帰還後の故郷で何がかれらを待ち受けていた
か。
自衛隊と米軍との一体化がますます進行するいま、好戦的で威勢の
いい軍隊賛美がまかり通るいま、不況にあえぐ日本社会で高卒後の
堅実な就職先としての自衛隊が注目されるいま、進学の希望と愛国
的な志に燃えた17歳の新兵たちが数年後、置き去りにされた過酷
な現実を知ることは日本とその若者の将来を考えるうえでの想像と
予想の助けになるに違いない。
そうした苦境から若者たちがどのようにして立ち上がったか、どれ
ほどの決意で軍を告発するか、日本の若者がそうなる前に知ってお
いてもいいのではないか。
自衛隊の新兵が送り出される前線への扉は、憲法九条のすぐ隣に開
いています。
冬の兵士 イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実反戦イラク
帰還兵の会とアーロン・グランツ著TUP(Translators United for
Peace=平和をめざす翻訳家たち)翻訳2009年8月6日刊行岩波書店発
行320ページ1995円(1900円+税)
【目次】
はじめに読者のみなさまへ序章第一章 交戦規則第二章 人種差別
と非人間化第三章 民間人の証言――イラクの犠牲第四章 分断し、
統治せよ――ジェンダーとセクシュアリティ第五章 帰還兵医療の
危機と祖国における戦争の犠牲第六章 企業のよる略奪と米軍の崩
壊第七章 GIレジスタンスの将来結びの言葉あとがき謝辞
表紙の写真について
本書の表紙および裏表紙の若者たちは、本書に証言を寄せた「冬の
兵士」の一部である。カメラを見据える視線は強いが、服装や髪型
などから、いまどきの普通の若者であることが見てとれるだろう。
書影のPDFはTUPのウェブサイトからダウンロードできます。
http://www.tup-bulletin.org/
著者:反戦イラク帰還兵の会について
反戦イラク帰還兵の会(Iraq Veterans Against the War、略称 IVAW)
は、イラク戦争に反対しながらも声を上げられずにいた現役および
退役軍人に意思表明の場を与えるために、2004年7月、ボストンで
発足した。以来、IVAWは一貫して以下の事項を要求し、活動してい
る。
イラクから全占領軍を即時撤退させるイラクが被った人的およ
び物的損害に対する賠償すべての帰還兵に対する完全な給付と
十分な医療会員は軍全部門にわたり、最近除隊した退役軍人と
現役将兵、各州の州兵、そして2001年9月11日以降米軍に勤務
した予備役兵が含まれる。
IVAWウェブサイト:http://www.ivaw.org/
書名:冬の兵士とは
「冬の兵士」は反戦イラク帰還兵の会(IVAW)が、2008年3月に開
催した4日間の証言集会(公聴会)の名称である。ベトナム戦争時
に開催され、全米に反戦気運を呼び起こすきっかけのひとつとなっ
た同名の集会に習ったものだ。
数十人の退役および現役兵士が、戦地での残虐行為や軍規の乱れ、
軍隊内での性差別や人種差別、軍事に携わる民間企業の腐敗などに
ついて証言したほか、イラク人や兵士の家族、亡くなった兵士の遺
族も同様に証言した。
この公聴会は独立系メディア、パシフィカ・ネットワークによって
全米に同時中継された後、ジャーナリスト、アーロン・グランツの
手による編集で同タイトルの1冊にまとめられ、同年9月に緊急出
版された。
本書の翻訳について
世界初の本書の翻訳は、TUP(Translators United for Peace=平和
をめざす翻訳家たち)の有志20名が協同で手がけた。TUPは2003年、
イラク戦争前夜に誕生した反戦市民による翻訳集団である。反戦と
平和に関する海外の情報を、インターネットのメーリングリストを
作業場にして日本語に訳出し、TUP速報という無料のメールマガジ
ンで配信して来た。昨年7月4日、アメリカ独立記念日にあわせて開
始した「冬の兵士シリーズ」ではいままでに11人の証言を無料配信
してきたが、本書の翻訳はそれと並行して進められた。
TUPウェブサイト: http://www.tup-bulletin.org/
TUPの過去6年余の活動で配信した速報は800号を越える。速報の一
部をまとめたアンソロジー2冊、速報の常連作家の随筆集などのほ
か、今年に入ってからはイスラエルによるガザ攻撃を戦火の中から
告発したアブデルワーヘド教授の『ガザ通信』(青土社)が書籍化
された。本書が過去の出版活動と大きく異なるのは、300ページを
越えるテキストを、速報とは別に訳し下ろした点である。
翻訳メンバー20名には翻訳の専門家も数名含まれるが、ほとんどは
別の生業を持っている。英語教師であるメンバーは自ら教材を作成
し、兵士の証言を授業に取り入れた。タクシードライバーのメンバー
はラップトップを助手席に置き、客待ちの合間を縫って推敲を続け
た。寿司屋の板前、日本語教師、イラク戦争帰還兵の妻、宇宙物理
学の研究者、下宿屋経営、大学院生、引退した教師などなど背景も
年齢もばらばらだ。首都圏在住は10名足らず、残りは九州、関西、
中部など日本各地とアメリカ、イギリス、フランスに居住する。ほ
とんどのメンバーが互いの顔も声も知らない。
翻訳に取り組むあいだ、わたしたちは何度も泣いた。証言を放送で
聞いて泣き、映像を見て兵士たちのあまりの若さに泣き、訳しなが
ら、推敲しながら、かれらが背負わされたものの巨大さに泣いた。
そして、そのたびに、これをひとりでも多くの人と共有しなければ
との使命感を強くしてきた。
本書翻訳の特徴
本書は、インターネットのメーリングリストを作業場にして、20名
の共同作業で翻訳された。荒訳し、訳語について議論を重ね、アラ
ビア語や軍事用語を調査検討し、推敲を繰り返して校閲し、入稿に
至るまで、すべての原稿に少なくとも5名の、場合によっては20名
全員の意見が反映され、何度も手が加えられている。おかげで翻訳
作業には通常の倍以上の時間を要したが、その分、正確かつ現状に
即した翻訳が実現できたのではないかと自負している。
訳語については、マスコミなどに広く使用されている語の再検討も
含めて積極的な議論が行われた。例えば、collateraldamage の訳
語には「副次的被害」「二次的被害」といった官僚的婉曲表現では
なく、より実態に即した「巻き添え被害」をあてたり、air ride
の訳として「空爆」ではなく「空襲」をあてるなど。
イラク戦争で生まれた新しい表現については、直訳より使用法に重
きを置いた訳を心がけた。捨て置き武器(drop weapon)
、よれよれ装甲(Hillbilly Armor)など。背景が複雑で一言では
意味を伝えにくい言葉や日本語化が望ましい語は訳さずにカタカナ
書きし、訳注を添えた(ストップロス、ハジなど)。
地名、人名のアラビア語はできる限り原語に近い(かつ日本語表記
に即した)書き方に改めた(例:バグダッド→バグダード、ファルー
ジャ→ファッルージャ)。これは、日本人に馴染みの薄い土地の歴
史や地理が、しばしば英語経由のかな書きに書き換えられることに
対する、ささやかな異議申し立てでもある。
訳注については、中学生、高校生にも読んでもらいたいという訳者
のわがままを岩波書店に聞き入れていただき、ベトナム戦争、湾岸
戦争など、三十代、四十代以降には不要と思われる語にも解説を施
した。同様の理由により漢字の読みがなも比較的多めに付けた。
本書についてのお問い合わせ
TUP速報冬の兵士プロジェクトチームへのお問い合わせには冬の兵
士ウェブサイトの問い合わせフォームをご利用ください。
TUPウェブサイト: http://www.tup-bulletin.org/
岩波書店への問い合わせは、岩波書店 生活社会編集部 「冬の兵
士」係 山川良子ファクス03−5210−4398メール:
ryoko2.y at iwanami.co.jp
ご不明の点など、なんでもお問い合わせください。
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