[CML 001190] 村岡到:総選挙の総括 自民党への懲罰の底にあるもの(転載)
skurbys at yahoo.co.jp
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2009年 9月 1日 (火) 09:43:42 JST
紅林進と申します。
私も関わっている「政治の変革をめざす市民連帯」の事務局長であり、
雑誌『プランB』の編集長でもある村岡到氏の総選挙の結果を受けての
下記の論考を転載させていただきます。
なおこの論考はあくまで村岡氏個人の意見であり、「政治の変革をめざす
市民連帯」全体の公式見解でもありませんし、また私自身も多少意見を
異にする点もありますが、重要な見方だと思いますので転載させていただきます。
村岡到 総選挙の総括 自民党への懲罰の底にあるもの
今年八月三〇日は、戦後史に特筆される日となった。衆議院総選挙で、野党の民主党が三〇八議席の大勝利となり、一〇年間続いた自公政権が退場して、民主党中心政権が誕生することになった。
投票前のマスコミは一斉に「自民激減百以下も」「民主三二〇」と選挙結果を予想して「政権交代」を煽っていたが、結果はそこまでは達しなかったが、自民党は現有議席のほぼ三分の一の一一九に大激減、公明党も八つの選挙区で全敗し一〇減の二一、共産党は九、社民党は七でともに現有議席を維持、となった。有権者数は一
億四〇〇万人で、投票率は一・八ポイント上がって六九%(七二〇二万人)。比例区の得票数は別表。民主党は八八〇万増、自民党は七〇八万減。共産党は二万五〇〇〇増の四九四万票。社民党は七一万減。
自民党は首相経験者や派閥のトップが相次いで選挙区で民主党の新人に敗北(かろうじて比例で復活もあり)、麻生首相は早々と辞任を表明、党の再建はきわめて重大な困難に直面する。
臨時国会の開会は九月中旬になるので、新政権発足までに枠組みをどうするのか、民主党と社民党、国民新党との折衝が重ねられる。衆議院では民主党だけで絶対安定過半数を越えたが、参議院では他の党を加えないと過半数に届かないので、社民党や国民新党との連立となるだろうが、「左」から注文を付ける社民党を抱え込む
よりは、自民党の一部をもぎとるほうが楽だから、その画策も模索される。そうなれば、社民党は草履のように捨てられる(民主党に流れ込む議員が現れるかも知れない)。
このすさまじいとも言える選挙結果はなぜ生じたのか。その最大の理由と意味は、この四年間の自公政権の余りに大きい全般的失政に、国民が懲罰を加えたことである。誰もが指摘している、ワーキングプアーの激増と格差の拡大、そこに基礎を置く社会の不安定の増大が、国民の平均的感覚となった。四年前には小泉純一郎首
相が単純に叫ぶ「郵政民営化」がキーワードとされ、「郵政民営化」に反対する者は「旧守派」で、ある場合には「非国民」扱いさせるほどであったが、その結果が日本社会の歪みと崩壊を加速させるものにすぎなかったことを、国民は肌で実感した。その結果が、自民党の歴史的大敗北を招いたのである。別な視点から言えば「閉
塞感からの脱出」(後出の高村薫寄稿)である。
問題は、この全般的失政をどのようなものとして理解するかである。日本経済を成長軌道に乗せられなかったと評価する場合には、その先の方向はどうしたら経済成長を実現できるのかと設定されることになる。この点では、共産党まで含めてすべての党が共通している。この点は後で再考する。
だが、自公政権の余りに大きい全般的失政がどうして社民党や共産党に向かわずに民主党への投票に結びついたのか。その根本的理由は、民主党が自公政権とそれほど大きな違いがないからである。日米安保、財界への姿勢では自民党と民主党に大きな相違はない。この点は共産党の批判が当たっている。
選挙戦のなかで鳩山代表は時に「革命」などと言うこともあったが、今回の選挙はけっして「革命」ではない。彼の言う「革命」の意味を、この言葉の本来の意味と離れて「大きな政治的変化」と好意的に理解したとしても、「革命」ではない。残念ながら国民の圧倒的多数は、「大きな政治的変化」すら望んでいない。だから、
自公政権に懲罰を加えるというレベルで民主党に投票したにすぎない。有権者は冷めていて、民主党を信頼しているわけではない。
大きな変化は起きないと思っているから、従来の自民党支持者が安心して民主党に投票した。このことは、期待の大きさゆえに生まれる「反動」的な批判や離反をそれほど大きくしない方向に作用する。
激変をもたらした制度上の基礎は言うまでもなく小選挙区制にある。投票者の約一一%にすぎない八〇〇万票によって、議席の上では前回とまったく逆転した結果を生み出した。選挙区での票の分析が必要だが、その余裕はないが、民意の歪曲が激しいことは歴然である。民主党の得票率四一%(比例)で議席は六四%。〈歪曲
民主政〉はその度合いを一段と深めた。
民主党政権が直面する難題もきわめて大きい。経済危機に対して有効な政策は用意されているのか、ばらまきを公約した財源はどうするのか、対米関係は「対等」とは言うが、本当に日米地位協定を見直したり、思いやり予算を削れるのか、が直ちに問われることになる。経験も能力もないままに当選した国会議員先生が不祥事を
起こす可能性も低くない。一体性の薄い党内統括はうまくいくのか。すでに「影の党首・小沢一郎」への警戒が発せられている。来年夏の参議院選挙まえに一波乱生じてもおかしくない。九月に予想される新型インフルエンザの大流行(二五五〇万人が発病!)も不気味に甚大な影響をもたらす。
左派の課題は、自公政権の全般的失政の意味をまったく別の文脈で解き明かすことにある。結論を指摘する紙数しかないが、〈経済成長の時代の終焉〉として理解することがカギである。この点では、選挙前日の「朝日新聞」に「寄稿」された高村薫さんの提起から全面的に学ばなくてはならない。実に優れた考察である。「二
〇世紀型の経済成長の終わり」を共通認識にしたうえで、次ぎに問われる課題は、では「経済成長」を超える未来の展望は何か、である。高村さんの言う「暮らし方、働き方などの価値観全体」に内実を生み出すことが問われる。私にしてもなお言葉しか書けないが、〈平等経済〉を志向することを脱出路として提示しなければなら
ない。今度の選挙で、「ベーシックインカム」が浮上した(新党日本がマニフェストの中心に掲げたからである)。このことは重要な意味を秘めている。このカタカナよりも、私が一九九八年に提起した〈生存権所得〉のほうが憲法第二五条と関連していることを明示できるから適切であるが、経済システムを転換させる基軸になる
からである。
左派には、〈生存権所得〉を主軸とする経済政策の立案、日米安保廃棄の追求、国会議員定数削減反対・小選挙区制廃止、活憲による市民自治確立が四つの主要課題である。
政策的対決というレベルでは、民主党がマニフェストに掲げた、国会議員定数の削減(衆議院比例区を一八〇から一〇〇に削減する)に反対する闘いがきわめて重要である。選挙でも共産党がはっきりと主張していたが、〈歪曲民主政〉をこれ以上歪めないためにも、政党や潮流の相違を超えて大きな市民運動を巻き起こさなくて
はならない。
自民党の再生はあるのか。むしろ、民主党をも含む政党再編が起きるかも知れない。
公明党は、この一〇年の自民党との連立の総括が問われる。政権の座からすべり落ちた自民党と組んでも何のメリットもないからである。
社民党は、民主党との連立優先に走れば、一九九〇年代の村山富市委員長時代の社会党と同じに解体するであろう。
共産党は「建設的野党」としてではなく、明確な政権ビジョンを提示することこそが課題になる。そして「民主集中制」に代わる組織論が必要となる。
政権交代は、マルクス主義の教条の有効性をも問うている。マルクス主義によれば、ブルジョア民主主義では資本家階級が階級支配を貫徹していて、政治は支配階級の意志を貫く場(あるいはそれを跳ね返す階級闘争の場)だと理解されてきたが、民主党政権の成立は支配階級の意志によるものなのか? 教条を守るためには、
「民主党も支配階級の党にすぎない」と片づけるほかないが、その場合ですら、どういうプロセスでその意志決定がなされ、伝達されたのか、説明することはできない。そうではなく、国民多数の意志という形式のなかで政権交代は起きたのである。だから、国民の意志が歪曲されて表現することが支配的階層にとっては重要な要件
とされる。
「第四の権力」と言われるマスコミの役割が巨大であることも明らかにした。その特徴、危険な傾向は深く分析・批判しなければならない。だが、一見するとマスコミが主導しているかに見えるが、そうではない。乾いたおがくずが山積みされていたから、点火したら大火事になったのであって、湿った枯れ葉に火を点けても燃え
上がることはない。ワーキングプアーの激増はマスコミが作りだしたのではなく、日本経済が生み出したのである。確かに四年前は小泉劇場に夢中になり、今度は内実は定かではない「政権交代」に踊らされる、日本国民の浮動性、付和雷同性は非常に危険ではあり、警戒を要するが、だからといって「ファシズムの到来」を想像す
るのは大きな誤りである。繰り返し言うように、大きな相違・変化がないから、票の移動が起きたのであって、仮に「北朝鮮を軍事的に懲罰しよう」などという選択肢が提示されれば同調する人はほとんどいない。改憲の叫びがほとんど消えたことの意味は大きい。
ついでながら、8月30日に「小選挙区制廃止をめざす連絡会」が主催した「討論会 小選挙区制反対・議員定数削減反対」は、わずか五一人の参加であったが、小選挙区制反対の活動の新しい出発点となった。最初に同連絡会の村岡到幹事(政治の変革をめざす市民連帯事務局長、『ブランB』誌編集長)の開会の挨拶の後、羽原
清雅氏(帝京平成大学教授)が「日本の政治をダメにした小選挙区制」と題して講演。司会は林克明氏。
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