[CML 001716] Re: 天皇即位 20 周年記念式典 DVD 学校配布について
竹林 隆
tkbys at jca.apc.org
2009年 10月 17日 (土) 07:54:31 JST
初投稿します。
大阪の竹林といいます。学校現場の労働者で組織する労働組合の役員をやっています。
> 今年11月12日の「天皇即位20周年記念式典」を前に、内閣府大臣官房総務課は
> 当日上映予定のDVD「天皇陛下 御即位から20年」を作成し、文部科学省を経由し
> て各都道府県教育委員会などに送付しました。マスコミ各社に配布した件についての報
> 道がないですが、文部科学省は都道府県教育委員会・市町村教育委員会を通じ、このD
> VDを各学校へ一枚ずつ配布するとしていることが、内部情報で明らかになっています
> 。
>
この件は、内部情報というよりも、すでに公式の通知文で出されており、大阪府教委は私たちの組合に対しても通常の「情報提供」の1つとして出してきました。
流れとしてはまず、5月19日付で内閣官房長官から文部科学大臣あての「天皇陛下御在位20年慶祝行事について」(内閣閣第79号)が出され、「国民の祝意の機運を高めるため、教育委員会をはじめとした関係機関等への周知」の協力要請が書かれています。
次に5月27日付で、文部科学省大臣官房長から都道府県教委、政令指定都市教委、国公私大等にあてて、先の「内閣閣第79号」を受けて「天皇陛下御在位20年慶祝行事について」(21国文科総第6011号)を送り、11月21日の内閣主催慶祝行事および各省庁の行事の通知と学校への周知を指示しています。
そして今回のDVDについては、8月28日付で内閣官房内閣総務官室・内閣府内閣官房総務課より文部科学省大臣官房総務課宛に「『天皇陛下 御即位から20年』の送付について」を送り、その中で「多くの国民の皆様にこのDVDをご覧いただけるよう、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校、特別支援学校への配布についてご協力をお願いいたします。」という一文があり、これが今回の全国の学校に地教委がDVDを送付する直接の根拠になっているものです。
ちなみのこの文書では併せて、政府インターネットテレビでもこれが見られることが併記されています。
さらに文科省はこれを受けて、9月4日付で全国の都道府県教委、市区町村教委(政令指定都市だけではなく全市区町村対象であることに注意!)、都道府県私学主管課、附属学校設置国大法人、株式会社立学校あてに「『天皇陛下 御即位から20年』の送付について」(事務連絡)を送り、この間の慶祝行事およびDVDに関する国からの連絡文書の流れをおさえた上で、このDVDについて内閣府から協力依頼があったので各学校1部ずつ送る、教委等には各2部送る、という旨が記されています。
これを受けて、都道府県教委、市区町村教委等が学校現場に現物を送る、という動きにつながっていきます。
> 私の住む北海道について・・・北海道教育委員会では各教育局に対し、9月11日付
> の事務連絡「『天皇陛下 御即位から20年』の送付について」で、北海道内の公立学
> 校への配布を連絡しました。
>
大阪では府教委が府立学校(高校、支援学校)に対し9月16日付で「『天皇陛下 御即位から20年』の送付について」(通知)を送り、それとともにDVD現物を送りつけてきました。北海道は数日早かったようですね。
ただ大阪では、10月上旬段階で組合が地教委交渉等で確認している限りでは、市町村に送られた分については、どこも市町村教委が「検討中」などと様子見をしており、送付をしていないところがほとんどです。組合からは各市町村教委に対し、「送付するな」という申し入れをしています。
> 現在のところ、文部科学省・北海道教育委員会の事務連絡において、各学校への配布
> については依頼しているだけで、特別に配慮して取り組むことについての依頼はありま
> せん。
>
私の組合では、この動きに対し組合としての抗議申し入れ書を府教委に提出し、府教委としての主体的な見解表明、DVDの即刻回収、教育課程への介入反対、などを申し入れました。現在折衝中ですが、現在得ている口頭回答としては、「文科省から言ってきたことであって、府教委が主体的にどうこうと考えたことではない。使用について何も指示する考えもないし、教育課程への介入なども考えていない」というスタンスに終始していました。よくいえば、配布以上の考えはない、悪く言えばきわめて没主体的、そしてそれ自体が天皇制の強化に手を貸している、ということだと思います。
おそらく、大方の地教委は「配るだけ」という姿勢になるでしょう。
ただ、文科省ルートとは別に、総務省―自治体というルートでも都道府県庁、市区役所、町村役場宛に各2部送られています。そしてさっそく、各自治体のHPを見ていると、「このDVDを住民のみなさんにレンタルします」などという記事がアップされたりしています。
また、実は、このDVD、制作費だけで1,000万円かかっておりそれは内閣府の予算で執行されています(制作請負は毎日映画社)が、それ以外に全国の学校、自治体に発送する経費が別にかかっています。であるにもかかわらず、政府自身が広報するように政府インターネットテレビ・皇室チャンネルでDVDと全く同じ動画(約26分)を見ることができるのです。これぞ、税金の無駄遣いでしょう。
> 天皇即位20年に対して祝意を表すかどうかについてはご承知のように、憲法19条
> 「思想および良心の自由」、21条「集会・結社・表現の自由」および23条「学問の
> 自由」が定められ、国民一人ひとりの内心に関わることであり、学校が配布されたDV
> Dを児童生徒に対し、「強制して」行事や授業で使用することはあってはならいことで
> す。
>
もちろん、この問題は「思想及び良心の自由」の問題でもあります。ただ、そのように問題を立てた場合、この種の問題で必ず付きまとってくるのが、「では、賛成する者の権利をどう保障するのか」という意見に対する対応です。今回のような場合には、それ以前の問題として、このDVDそのものが(それ自体私は反対ですけど)戦後象徴天皇制を逸脱したものであること、言い換えれば憲法違反の内容であること、等を前面に押し出した方がいいと思います。そのようなものが学校に送られるべきではない、と。
私たちの組合は天皇制自体に反対の立場から運動を展開していますが、使用するかどうか以前に、現行象徴天皇制を定めた憲法に規定されている「天皇の国事行為」を大きく逸脱しているこのDVD(内容を私も見ましたが、天皇への個人崇拝の強要はすさまじいです)や戦後の天皇のあり方などに対しては、はっきりとものを言わなければいけない、批判しなければいけないと思います。
> 記念式典まで一ヵ月を切り、ますます過度になっていくことも予想されます。一国民
> として児童生徒への「押し付け」とならないよう、今後の動向に注意深く見ていくこと
> が迫られると思います。
>
ご指摘のように、国家権力(民主党政権になっても本質は変わりないでしょう。慶祝行事そのものをやめると民主党が言えばまた話は別ですが、言わないでしょう)の本命は、「天皇制を嫌悪しない、反発を持たない、天皇制と親和的であり、『日の丸・君が代』を国民意識統合のツールとして一体感を生み出す国民性」をつくりだすことにあります。ですから、たんにこのDVDだけではなく、11月12日の行事に対する国民動員の全体的輪郭を見ておくことが必要だと思います。
また、他の全国的状況も教えていただけたらと思います。
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