[CML 001705] イダヒロユキさん(ジェンダー研究者)の「金光翔の『<佐藤優現象>批判』を支持する」の弁のご紹介

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2009年 10月 16日 (金) 11:18:28 JST


私の尊敬するML仲間でジェンダー研究者の伊田広行(イダヒロユキ)さんが「<佐藤優現象>
に対抗する共同声明」についてご自身のブログに「金光翔の『<佐藤優現象>批判」を支持する』
(2009年10月10日付)という一文を書かれています。
http://blog.zaq.ne.jp/spisin/

私は先のメールでそれが賛同要請のメールであるがゆえに私として金さんのご主張にやや違
和を感じる部分についてはあえてオミットしていましたが、伊田さんは金さんの「格差社会論議」
「プレカリアート運動」への批判などをあげてご自身とやや見解を異にする金さんの論の問題点
も率直に指摘し、その上で「共同声明」に賛意を表明されています。

私の「共同声明」賛同の趣意は伊田さんのご見解に近いものです(といっても、伊田さんの見解
に全面同意するというのでもありません)。みなさまのご参考に供するために伊田さんの「共同
声明」賛意の論を紹介させていただきたいと思います。ある要請に対する「賛同」は必ずしも
その主張に対する全面同意を必要としないだろう。その主張の基線に同意できるならば「賛同」
のあり方はいろいろあっていい、と私は思っています。いうまでもなく左記は私の考えです。

以下、伊田さんの「金光翔の『<佐藤優現象>批判』を支持する」の一文です。


東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp 

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金光翔(キムガンサン)さんという人がいます。彼は『世界』や『金曜日』などの「リベラル・左派」
系雑誌が、佐藤優という元外交官の右翼知識人を重用していることを一貫して批判してきて
います。遅ればせながら彼の「<佐藤優現象>批判」という論文を読みました。

彼のHPに、『インパクション』第160号(2007年11月10日発行)に掲載された、「<佐藤優現象>
批判」の全文が公開されています。
http://gskim.blog102.fc2.com/blog-entry-1.html
金光翔「<佐藤優現象>批判」(『インパクション』第160号(2007年11月刊)掲載)

彼の主張は、おもしろいし、おおむね賛成です。

僕は、〈スピリチュアル・シングル主義〉者であり、フェミニスト・人権派・左翼系だし、アナーキ
スト系だし、北欧型社会民主主義の擁護者です。非常にラジカルで、長期的な理想の方向を
基準に、現実の不十分点を批判し続ける立場です。現実主義といってひどい状況をもたらす
ような動きに反対する立場です。でも、同時に、現実を一歩進めるような改良や改革にも、
バランスを考えて、総体的にマシだと判断すれば賛成します。民主党の改革にも、オバマの
動きにも、評価できるところは支持します。
そういう僕ですから、金光翔(キムガンサン)さんが批判・否定する対象全部を全否定はしな
い立場です。

しかし、彼の主張の本筋にはまったく賛成します。

というのは、僕は以下のようなことが大事だと思うからです。
イスラエルのパレスチナ攻撃のひどさにはちゃんと反対しないといけない。今後の状況の変
化の中でも、「日本国家と日本人が生き残っていける状況が何より大事」等とは思わないこ
と。「国家が自衛権をもつのは当然」とはおもっていないこと。護憲かどうか抽象的に言って
いるのではなく、北朝鮮への軍事的攻撃に反対するかどうかが大事だと言うこと。軍事国家
化や管理統制社会化を進めようとする策動に反対すること。多様な考え方、マイノリティの
立場が尊重されることが大事であると思っていること。歴史を踏まえ、反植民地主義の立場
であることが大事であること。「従軍慰安婦」問題で、「アジア女性基金」などで日本が既に
適切に対応したという欺瞞をゆるさず、国際的な要請(各国での慰安婦決議)にも素直に応
じて、徹底して当事者の立場に立った真の解決を図ること。
日本の歴史的責任を忘却せず、韓国や中国の領土主義的ナショナリズムと「まともな動き」
の区分が大事だとみること。総理靖国神社参拝問題が日中関係を悪化させているとみるこ
と。拉致問題を右翼の排外主義や軍事国家化の策動に利用させてはならないこと。「拉致
問題の解決抜きにして日朝交渉はありえない」に反対すること。内閣法制局の集団的自衛
権解釈変更に反対であること。周辺事態法の「周辺地域」に台湾海峡が含まれることなどの
拡大解釈に反対であること。「非核三原則」を緩和して朝鮮半島有事の際には「持ち込み可」
とすることを許さないこと。格差・貧困の拡大には、外国人や在日コリアンも含めて、平等・
均等待遇を進め、生存権保障をしていくこと。

こういうことが大事だと思う僕は、そこをちゃんと言わずに(行動せずに、要求せずに)、佐藤
の言い方に騙されるような、ちょっと博識ぶられたらすぐになびく、脆弱なリベラル系知識人
のあり方に反発します。
「改憲と戦争国家体制を拒否」する僕ですから、〈佐藤優現象〉及び同質の現象を煽るメディ
ア・知識人等を批判する立場に立ちます。日本のメディアが左派系も含めて腰砕けであった
り、ひどい中で、金さんの訴えは、基本的に的をえていると思います。だから彼の意見の側
に立ちます。

佐藤優が「仮に日本国家と国民が正しくない道を歩んでいると筆者に見えるような事態が
生じることがあっても、筆者は自分ひとりだけが「正しい」道を歩むという選択はしたくない。
日本国家、同胞の日本人とともに同じ「正しくない」道を歩む中で、自分が「正しい」と考える
事柄の実現を図りたい」と述べ、戦争に反対の立場であっても、戦争が起こってしまったか
らには、自国の国防、「国益」を前提にして行動せよといっているような、考え方や生き方
そのものに反対していきたいと思います。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆ 

ただし金さんの、近年の「格差社会論議」「プレカリアート運動」への批判には、問題もある
と思っています。
「ユニオンぼちぼち」などで個別労働運動・反貧困の運動をしている僕にとって、リアルなの
は、雨宮処凛さんの本などで触発されて自分へのひどい扱いに憤って「ユニオンぼちぼち」
にきて、闘う決意をする人たちです。「ユニオンぼちぼち」のまわりのユニオン運動では、
外国人労働者の立場で戦っています。
だから「格差社会の議論に、排外主義が含まれている」「若年者の労働運動は、「既得権益」
に入ることを要求するもので、所詮は「国民内部」の格差を是正する運動である」といった
主旨の主張は、一面あたっている部分があるとしても、偏り過ぎで不十分なものだと言える
と思います。

また、「小泉の選挙での大勝」が、「メディアの煽動により「国民」がコントロールされ、自分た
ちの利害に反する新自由主義政党、小泉自民党に投票した、というのはマチガイだ」と言う
のもいいすぎだと僕は思います。メディアによる洗脳・影響の面は大きくあったと僕は思い
ます。
「若い人たち」と女性が大量に自民党に投票したことを、彼・彼女らの企業社会や会社での
位置が、周辺的な点にあるからで、その意味では「自民党に投票したのは、その時点に
おいて、合理的な投票行動だった」というのも間違いだと思います。周辺的な位置にいたの
はその通りですが、合理的な投票行動ではありませんでした。庶民や大衆はバカではない
から愚民視はマチガイだと言うのは単純すぎる大衆擁護論だと僕は思います。

だから金光翔(キムガンサン)さんの主張に全て同意するというわけではありませんが、HP
・ブログなどをみていても全体としてはとても鋭く考察を重ねている人なので、稀有な論客だ
と思うし、そのラジカルなスタンスは、日本社会のなかでとても大事です。
だから僕は、彼を支持します。

論文「<佐藤優現象>批判」 全文公開
http://gskim.blog102.fc2.com/blog-entry-1.html
金光翔「<佐藤優現象>批判」(『インパクション』第160号(2007年11月刊)掲載)

ということで、金光翔さんのをぜひ読んでみて下さい。
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