[CML 001586] 【ご報告】死刑執行の停止を強く要求する市民の共同声明
加賀谷いそみ
QZF01055 at nifty.ne.jp
2009年 10月 6日 (火) 08:35:22 JST
(転載歓迎)
【ご報告】
「千葉景子新法相に、死刑執行の停止を強く要求する市民の共同声明」
運動の経過と結果について
共同声明運動事務局
奥田恭子・加賀谷いそみ・井上澄夫・廣崎リュウ
2009年10月6日
「千葉景子新法相に、死刑執行の停止を強く要求する市民の共同声明」への賛同
の呼びかけにご賛同下さったみなさん! そして運動の呼びかけ人になって下さっ
たみなさん!
日本全国と海外から寄せられたご賛同は、賛同の締め切り期限(10月4日)
を1日過ぎた10月5日現在、830件に達しました。そのうち、個人賛同は7
86件、団体賛同は44件です。賛同の表明は文字通り、全国47都道府県から
寄せられ、さらにフランス、ドイツ、イギリス、米国、タイなど海外在住の方か
らも届きました。賛同表明をお寄せ下さったすべてのみなさまに、深い感謝をこ
めて、厚く御礼申し上げます。
「市民の共同声明」はすべてのみなさんのお名前および団体名とともに、法務
省と首相官邸に送られました。その際、お一人おひとりのおおまかな住所や肩書
きあるいは職業、そして団体の所在地を記しました。同省と官邸からは当事務局
に受領の通知が届きました。
《運動の経過》
・この運動は8月30日衆院選の2週間前に準備が始まりました。運動の事務
局を担当した「死刑廃止を求める市民の声」(略称「市民の声」)はこれまで、
歴代法相による死刑執行への抗議などを続けてきましたが、8月30日衆院選が
大きな政治の変化を生むと予感し、新しい法務大臣に「死刑執行の停止」を強く
要求しようと考えました。
・そのために、「市民の声」単独ではなく、全国各地の多様な立場の人びとに
よる〈共同の呼びかけ〉によって運動を広げようと考え、アピールの冒頭に列記
したように、51名の方がたによる〈共同の呼びかけ〉が実現しました。
・衆院選の結果、ご存知のように、鳩山連立政権が発足し、新法務大臣には千
葉景子氏が就任しました。そこで私たちは、新政権成立の翌日、9月17日午前
1時に〈共同の呼びかけ〉を全国に発信しました。
・反響は実に爆発的でした。連日、賛同表明が、次々に寄せられました。寄せ
られたご賛同は冒頭記したように830件です。
《爆発的な反響の意味について》
今回の反響の大きさは、私たちがかつて経験したことのないものでした。それ
は何より、衆院選の結果、「政権交代」が実現したことによると思います。多く
の人がこの「政権交代」によって「今こそ声をあげる好機」と感じたのではない
でしょうか。
1993年の後藤田正晴法相による死刑執行再開以来、「国家による殺人」が
続いてきました。長勢甚遠法相は10人の死刑を執行し、「ベルトコンベアー式」
の自動執行を主張した鳩山邦夫法相は在任中、ほぼ隔月に13人の死刑を強行し
ました。死刑執行の停止や死刑廃止が世界の大勢になっているのに、日本では死
刑執行が激増していました。
その一方で、足利事件で無期懲役に服せられていた菅谷利和さんの無実が明ら
かになり、菅谷さんが釈放されて、再審が決まりました。刑事事件で冤罪(えん
ざい)が生まれることが改めて白日の下にさらされ、死刑執行への疑問が幅広く
世論に共有されるようになってきました。また、民間から抽出される市民が場合
によっては死刑判決を下す判断を迫られる「裁判員制度」が動き出し、同制度へ
の疑問も高まっています。
〈共同の呼びかけ〉に「爆発的な反響」が生まれた背景はおよそ以上のような
ことだったと思います。賛同者で一番多かったのは、初めて死刑反対の声をあげ
た人たちでした。言うまでなく、これまで死刑廃止運動を支えてこられた方がた
も多数賛同されました。
今回の運動の特徴は、呼びかけが無数の自主的な協力によって広まったことで
す。ネットやFAXでアピールが転送・転載され、ブログやホームページでの紹
介で、〈共同の呼びかけ〉が広がっていきました。ご協力下さったみなさんに厚
く御礼申し上げます。
《今後の運動について》
私たちの思いは千葉法相に届けられました。しかし千葉法相が死刑執行につい
て「慎重に判断する」とのべていることを非難するマスメディアが執行存続を求
める世論を煽っています。それを背景に法務省高官が千葉法相に対し死刑執行命
令書に署名するよう圧力をかけているだろうことは想像にかたくありません。
民主党が本年7月17日にまとめた政策集『INDEX2009』は、「『終
身刑』の検討を含む刑罰の見直し」と題する項目をもうけ、「死刑存廃の国民的
議論を行うとともに、終身刑を検討、仮釈放制度の客観化・透明化をはかります。
(中略)国際的な動向にも注視しながら死刑の存廃問題だけでなく当面の執行停
止や死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続していき
ます。」と記していましたが、その10日後、7月27日に公表された同党『マ
ニフェスト』ではその部分は削除されました。
世界人権宣言(1948年)はその第3条で「すべて人は、生命、自由及び身
体の安全に対する権利を有する」と規定しています。しかし1989年に国連総
会で採択された国連死刑廃止条約を日本は批准していません。自由民権運動の理
論家だった植木枝盛(うえき・えもり)による「東洋大日本国国憲案」はその4
5条で「日本の人民は何らの罪ありと雖(いえど)も生命を奪はれざるべし」と
明確に規定したのですが、その先駆的な主張は今もって実現していません。
法務省は世論の8割が支持していることを死刑制度存置の理由としていますが、
EU(欧州連合)は日本政府に対し「死刑廃止の是非は、世論調査によって決め
るべき問題ではありません。死刑制度の廃止は、国家としての主義の問題です。
ひとつの社会を統括する政府には、この問題に関する議論の舵取りを行う責任が
あります。根強い偏見に賛同したり、死刑執行にまつわる秘密主義を助長したり
すべきではありません。」と勧告しています。
死刑執行をめぐる状況はまったく楽観を許すものではありません。この国では
人権思想の定着になお時間を要すると思われます。しかし〈共同の呼びかけ〉へ
の大きな反響に励まされ、私たちはみなさんとともに努力を続けようと思います。
「国家による殺人」を停止させ、死刑制度を廃止するため、どうか、ともに歩ん
で下さい。ご賛同に重ねて深く感謝しつつ、報告を終わらせていただきます。
CML メーリングリストの案内