[CML 001583] 民主党の宇宙行政「一元化」を批判する

杉原浩司(Koji Sugihara) kojis at agate.plala.or.jp
2009年 10月 5日 (月) 22:59:16 JST


東京の杉原浩司(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)です。社民党
の機関紙『社会新報』に以下の文章を書きました。それほど長くないもの
ですので、よろしければお読みください。民主党関係者にも読んでもらい
たいと思っています。なお、[注]は今回補足したものです。
                   [転載・転送歓迎/重複失礼]

………………………………………………………………………………………

              ―――『社会新報』2009年9月30日号掲載

宇宙行政「一元化」は「軍民一体化」

  杉原浩司(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)

  民主党は「一元化」が好きだ。政府・与党の意思決定の一元化を理由に、
議員立法までが原則禁止された[注1]。かつて、阪神・淡路大震災被災
者や小田実さんと共に、被災者への公的援助を求める市民=議員立法運動
を担った者の一人として、議員の自立的な立法活動を封じ込める動きの撤
回を求めたい。
 さて本題だが、前原誠司・宇宙開発担当相(国土交通相と兼務)は9月
17日の会見で、各省庁の宇宙関係部署と宇宙航空研究開発機構(JAXA)
の企画部門を内閣府に移管し、再編・一元化する方針を示した。民主党は、
将来はJAXA全体を含む独立組織である「宇宙庁(仮)」を日本版NA
SAとして設立するとしている。聞こえはいいが、NASAが国防総省や
軍需産業と密接につながってきたように、日本版もまた宇宙の軍事利用と
いう顔を併せ持つことになる。

  「平和利用」を破棄

 08年5月、西村康稔議員(自民)や細野豪志議員(民主)らの水面下の
調整による自公案と民主案の一本化を経て、宇宙基本法が衆参計4時間の
審議で成立した。40年近く維持された宇宙の平和利用原則は事実上廃棄さ
れ、軍需産業と国防族の悲願が成就した。それに基づき、内閣に「宇宙開
発戦略本部」が発足。有識者からなる「宇宙開発戦略専門調査会」が組織
され、秘密審議を重ねた。鳩山首相の外交ブレーンとされる寺島実郎氏(
日本総研会長)が座長を務め、青木節子氏(慶應大学)が内容策定の柱と
なった。形ばかりのパブリックコメントを経て、09年6月に宇宙基本計画
が決定された。案の定、ミサイル防衛(MD)用の早期警戒衛星の研究や、
偵察衛星の増強、軍事利用も見据えた準天頂衛星(日本版GPS)の開発、
軍事衛星打ち上げを目指してのGXロケット開発の延命(その後、麻生政
権でさえ概算要求を断念)などが盛り込まれた。

  無駄遣いの象徴

 現在でも、偵察衛星は内閣官房が管轄しており、毎年600億円を超える
巨費が隠れ軍事予算として計上されている。しかも、多目的利用を掲げつ
つ画像は一度も公開されず、検証不能である。「研究開発から利活用へ」
を掲げた一元化は、JAXAを軍事開発研究に動員し、軍事利用を加速さ
せるだろう。宇宙に「血税のブラックホール」が誕生しかねない。
 寺島氏は最近の論考で、米軍の前方展開兵力の見直しによる緊急派遣軍
構想を唱えながら、日米軍事同盟維持のコストの応分負担を、専守防衛型
軍事技術の日米共同開発費に向けることも提唱している(『文藝春秋』10
月号)。危険な構想と言わざるを得ない[注2]。
 オバマ政権による東欧MD計画中止は市民運動の歴史的な勝利だが、そ
れに替わる新欧州MD計画[注3]は、日米共同開発中の能力向上型SM
3ミサイルの海上・地上配備を前提としており、三菱重工などの日本の軍
需産業がグローバルなミサイル拡散に加担するという重大な意味を持つ。
 軍民一体の宇宙開発や一元化という方向性では、民主党と自民党の「大
連立」が成立している。連立政権の一翼を担う社民党は、MDや宇宙軍拡
という大連立テーマにこそ、クサビを打ち込む役割を果たしてほしい。10
年度予算案の策定や「防衛計画の大綱」改定に際して、無駄遣いの象徴で
あるMDを含む宇宙の軍事利用を、いかにして削減させていくか、共に知
恵を絞りたい。

【注】
[1]通称「小沢ペーパー」(9月18日付のメール)による議員立法原則禁
止については、法学館憲法研究所ウェブサイトの「浦部法穂の憲法時評」
の『議員立法』を参照。
http://www.jicl.jp/urabe/backnumber/20091001.html

[2]寺島実郎氏の構想への批判については、「市民の意見30の会・東京」
(TEL:03-3423-0185 FAX:03-3402-3218)発行の『市民の意見』10月1日号
(No.116号)所収の拙稿「『脱冷戦』の名による質的軍拡の危険性はらむ
〜鳩山政権の安保・外交政策の行方〜」を参照。

[3]オバマ政権の東欧MD計画中止と新欧州MD計画については以下を。
ブルース・ギャグノンによる「ミサイル防衛:もう一方の計画」
http://www.anatakara.com/petition/the-otehr-story-of-missile-defense.html
チェコの反MD運動リーダーであるヤン・タマスの声明など
http://www.anatakara.com/petition/statement-of-jan-tamas.html



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