[CML 002154] 【報告】11・6 PAC3等に関する防衛省ヒアリング

杉原浩司(Koji Sugihara) kojis at agate.plala.or.jp
2009年 11月 28日 (土) 00:28:11 JST


【報告】                [転送・転載歓迎/重複失礼]

★「ミサイル防衛」は「名ばかり防衛」!
  〜 防衛省ヒアリングで疑惑ますます深まる 〜

東京の杉原浩司(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)です。

ご報告が遅れましたが、11月6日(金)に行った「ミサイル防衛」(MD)
に関する防衛省公開ヒアリング[呼びかけ:パトリオットミサイルはいら
ない!習志野基地行動実行委員会、核とミサイル防衛にNO!キャンペー
ン]の報告(概要)をお伝えします。

防衛省の対応はご覧の通り、まったくひどいものでした。要するに「都合
の悪いことには答えない」のです。本来、こうしたやり取りは国会審議の
場で行われるべきでしょう。防衛省のデタラメを白日のもとにさらし、M
Dの抜本的見直しに舵を切ることが必要です。現職閣僚からPAC3追加
配備への異論が出ている今はそのチャンスです。

◇なお、極めて不十分な回答だったこともあり、追加の文書質問を後日提
 出しました。その内容は別メールにてお知らせします。

………………………………………………………………………………………

<「ミサイル防衛」に関する防衛省公開ヒアリングの報告(概要)>
  (文責:杉原)

 2009年11月6日午後 / 参議院議員会館 第6会議室
           [協力:福島みずほ参議院議員事務所]

[防衛省側説明者]

 防衛政策局防衛政策課    江原康雄
      防衛計画課    尾形竜二
 運用企画局事態対処課    林 太郎
      情報通信・研究課 吉田 努
        〃      岩佐まもる
 経理装備局装備政策課    福田一徳
        〃      礒崎恒明
 経理装備局システム装備課  酒井行信
        〃      笹川和幸
 経理装備局艦船武器課    伊藤俊男
        〃      吉川 毅

  ※ ◆印が防衛省の回答部分

1. 4月のPAC3システムの初めての発動に関して

(1)防衛省グラウンドに配備されたPAC3発射機には、「INERT」と表記
された模擬弾が含まれていたことが明らかになっている。実戦態勢と称しな
がら模擬弾を配備した理由は何か、明らかにされたい。また、その事実を公
表しているのか否か、その理由も含めて明らかにされたい。

[回答]
◆部隊運用に関わる内容なので回答を差し控えたい。

(2)秋田、岩手や防衛省グラウンド、朝霞、習志野に配備されたPAC3
のレーダー装置は実際に運用されたのかを確認したい。都内への配備につい
ては、レーダーの実際の運用は朝霞基地のみで行われ、レーダー運用時には
警備の陸自隊員はその都度退避したと言われている。それが事実なら、その
理由は何か。また、なぜ防衛省では行わなかったのか。

◆部隊運用に関わる内容なので回答を差し控えたい。

(3)また、強力な電磁波を発すると言われるレーダーの運用について、周
辺住民には事前、また運用時に周知されたのか。さらには、レーダー波の計
測は行われたのか。

◆部隊運用に関わる内容なので回答を差し控えたい。レーダーについては関
係法令(電波法)に基づき安全性を確保したうえで適切に運用することとし
ている。

(4)今後再びPAC3を人口密集地に配備する場合、周辺住民への事前説
明会を開催する意思はないのか。

◆関係自治体に適切に説明を行っている。今後も状況に応じて適切に説明を
行っていく。

(5)高さ2.5メートルの防護柵が設置されたといわれるが、実際の発射時に
その程度のもので周辺への被害を抑えることができると本当に考えているの
か。その根拠は何か。

◆不断に検討を行い、被害を発生させないように安全に運用している。

(6)PAC3の発射時の爆風に含まれる有害成分に関して、防衛省は米国
側からの情報に基づく回答として「塩化水素、一酸化炭素など」としている。
この「など」に相当する成分を具体的に明らかにされたい。ロケット、ミサ
イル等の発射時に排出されるとされる過塩素酸塩は含まれていないのか。

◆固体燃料に含まれる物質として、他に二酸化窒素が記されていた。過塩素
酸塩の記述はない。

【注】「過塩素酸塩」によるレタスなどの汚染が米国で報告されている。海
   自イージス艦が迎撃ミサイル試験に使用しているハワイの米軍施設「太
   平洋ミサイル射場」周辺の汚染がハワイ先住民により告発されている。

(7)この米側の回答は、具体的にどこのどの部署からの回答なのか。また、
具体的な回答日時も明らかにされたい。

◆米国側からの回答文書の発出日は、昨年2008年2月20日付となっており、
その数日後にこちらに届いた。文書は、米陸軍の「下層防御プロジェクトオ
フィス(LTPO)」名のものである。

(8)4月の浜松と首都圏のPAC3の移動展開について、どこの部隊がどこ
に移動したのか、全体像を具体的に示されたい。また、岐阜基地のPAC3
が首都圏に移動展開したことが明らかになっているが、どこに展開したのか。

◆部隊運用に関わる内容なので回答を差し控えたい。

(9)浜松基地の空自部隊は教育部隊であるため、浜松にはPAC3の実弾
は存在しないと言われていた。実際にはどうなのか。もし含まれていないと
すれば、東北地方に海上輸送され配備されたPAC3に、実弾はいかにして
装てんされたのか。

◆浜松は教育部隊のため、実弾は保管していない。東北に移動した際の実弾
装てんに関する問いは、部隊運用に関わるため回答を差し控えたい。

(10)今までPAC3は環境省所管の新宿御苑と自衛隊基地に移動展開され
ているが、今後都立公園などを展開地とすることは想定されているのか。

◆PAC3は状況に応じて適切な場所に展開することとしている。候補地な
どについては運用に支障を及ぼすので公表は差し控えたい。

(11)PAC3の米国における迎撃実験では、標的とされる模擬弾はわずか
120キロ程度の飛翔距離しかない。日本のMDが想定している朝鮮民主主義
人民共和国(北朝鮮)の弾道ミサイルは、1000キロ以上の飛翔距離といわれ
ている。全く現実とかけ離れた想定にも関わらず、迎撃できるとして装備認
定、配備した根拠を示されたい。

◆試験結果を踏まえて、技術的信頼性は高いと判断している。政府として国
民の安全を守るためにできる限りのことはやるという姿勢で配備を行った。

(12)米国でさえ、発射に失敗して回転しながら落下するロケット(ミサイ
ル)部品を迎撃する実験を一度も実施していない(2009年3月26日、産経、
フィリップ・コイル元国防次官補の証言)。それにも関わらず、迎撃が可
能だとして実戦配備を行った科学的な根拠を具体的に示されたい。

◆国民の安全を確保するためにできる限りのことをやったつもりである。

2. PAC3追加配備経費944億円の2010年度予算概算要求への計上等について

(13)追加配備経費944億円のより具体的な細目を示されたい。

◆7個高射隊と予備機材1式の改修分である。

(14)追加配備予定地域(北海道、青森、沖縄)のうち、沖縄県には既に米
軍としては日本国内唯一のPAC3部隊が、濃密な形で嘉手納に配備されて
いる。もし沖縄に追加配備された場合、自衛隊のPAC3部隊は米軍PAC
3部隊と何らかの共同展開などを行う可能性はあるのか。

◆まだ配備も決まっておらず、仮定に基づく質問には答えられない。また、
部隊運用に関することには答えられない。

(15)追加配備は現「防衛計画の大綱」・別表には記載されていない。麻生
前政権は、当初年末に策定を予定していた次期「防衛大綱」に記載すること
を前提に、8月末の時点で追加配備経費が計上されていたとされる。その後
の政権交代を受けて、鳩山政権は大綱改定を2010年末まで1年先送りするこ
とを決定した。これにより、追加配備は法的根拠を失ったはずである。にも
関わらず、出し直しの概算要求でなおも計上するのは、本来許されないので
はないか。即刻削除すべきと考えるが見解は。

◆現在の大綱は年末で寿命が尽きるわけではない。概算要求はあくまで省と
しての案である。年末の予算案決定までに政府として準拠となる方針を定め
て正式な予算案としたい。

(16)概算要求に「イージスBMD武器システム構成要素の日米共同開発」
経費(16億円)が記載されているが、具体的にどのようなシステムなのか。
また、この共同開発は日米のどちらから提案されたものか。さらに、関わる
ことになるであろう企業名を明らかにされたい。そして、何年間かけて総計
どの程度の経費がかかると想定しているのか。日本側負担額の予測は。

◆イージスBMDシステムの高度化・多様化に基づき、指揮官・オペレータ
ーの迅速・確実な情勢判断を支援するとともに、その抗たん性を高めるソフ
トウェア・コンポーネントについて日米共同開発を行う。日米どちらから提
案したかについては、交渉の詳細に関わるので回答は差し控えたい。共同開
発は2010年から2015年(「平成」22年から27年)までの6年間の開発期間と
日本側負担総額約92億円を見込んでいる。参加企業はまだ概算要求の段階な
ので決まっていない。

(17)PAC3ミサイル1発の値段(経費)を、米国からの購入分と三菱重
工によるライセンス生産分のそれぞれについて示されたい。

◆ミサイルの単価については、保有数が明らかになってしまうので公表でき
ない。

【注】米国からの購入分は1発約4億円、ライセンス生産分は1発約8〜9億円
   と言われている。

(18)イージス艦のミサイル防衛対応用の改修経費はいくらか、今までの3
隻と今後の1隻それぞれについて示されたい。

◆「こんごう」が412億円、「ちょうかい」が321億円、「みょうこう」が
308億円、「きりしま」が315億円。

3. 日米共同開発中のSM3ブロック2Aの第3国への輸出の可能性について

(19)来日したゲーツ米国防長官が10月21日に北澤防衛相に対して、日米共
同開発中の能力向上型SM3ブロック2Aを欧州などに供与できるよう、武
器輸出政策を緩和してほしいと求めたことが報じられている。もともとSM
3ブロック2Aは日本防衛を想定して共同開発に入ったものであり、欧州な
どへの輸出は、共同開発の趣旨を明らかに逸脱する「目的外使用」に他なら
ない。また、「国是」とされる武器輸出禁止三原則を更に骨抜きにするもの
でもある。日本政府として、こうした不当な要求には即刻拒否を表明すべき
と考えるが、見解はどうか。

◆欧州への配備は未決定なので回答は差し控えたい。この意見については持
ち帰り報告させていただきたい。







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