[CML 001940] Re2: 【佐賀】 罪位20年 「誰が祝うか」 抗議集会

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2009年 11月 7日 (土) 16:45:02 JST


田口さんのご返信へのまた少し遅い応答のようなものです。

田口さん wrote:
>   だいたい、虐げられている人々のエネルギーを結集してアチラ側を打ち砕くよい智慧があり
> ませんかねえ。「各問題の根っこは同じなんだ」と皆の意志を統一させる方法が。

重要な問いだと思います。しかし、難しい問いです。少なくとも私には容易に答が出せそうもあり
ません。そういうわけで私には応答不能の問いとしてこのままやりすごそうかとも思いました。し
かし、下記の太田昌国さんのご論を紹介することは、少しばかりの応答の代わりになりうるかも
しれない、と思い直しました。

■改憲潮流と右翼イデオロギーの現在(現代企画室「状況20〜21」 2009年9月15日)
http://www.jca.apc.org/gendai/20-21/index.html

太田さんはそのご論の「光景1」の末尾に「こうして、日本における『右翼イデオロギーの現在』を
見るうえで、一九八八年の天皇『下血』騒動に始まり、東西冷戦構造の消滅・ソ連東欧社会主義
圏の崩壊に象徴される一九九〇年代初頭までの内外状況を視野に入れておくこと――進歩派
と左翼がなすすべもなく立ち竦んでいた時期に、右翼は、国内と世界における状況を見極め、
実に巧みにこれを利用したことを見ておくことが必要だろう。/右翼の台頭が、進歩派や左翼の
『立往生』や『沈黙』と背中合わせであることを自覚しておくことは、こうして、決定的に重要なこと
なのだ」と記されています。

太田さんの指摘されるこの時期(80年代末〜90年代初頭)は、私たちの国のいわゆる55年体
制が音を立てて瓦解していった時期と重なります。この時期を革新側の視点から見れば、「護
憲・反安保」体制(統一戦線)の瓦解ということができるでしょう。87年に国鉄が分割民営化され、
連合が発足します。89年には総評が解散。同年、日教組が分裂し、翌々年の91年には全日本
教職員組合(全教)が結成されます。94年には村山自社さ連立内閣が発足し、当時の社会党
党首でもあった村山総理は第130回国会でそれまでの同党の政策を180度転換する「自衛隊
合憲、日米安保堅持」の所信表明演説を行います。96年には社会党が解体。改称して社民党
を結成しますが、同年にあった同党最初の総選挙での獲得議席は15議席。同党の過去最高
獲得議席の166議席(58年)の10分の1以下という惨敗を喫します。

太田さんのおっしゃる「進歩派と左翼がなすすべもなく立ち竦んでいた時期」はまさにそういう
「時期」でした。右翼の台頭は、そうした「進歩派や左翼の『立往生』や『沈黙』」の時期と「背中
合わせで」あった、というのが太田さんの指摘だろうと思います。

上記、問題の核心に迫りえない抽象的な応答になってしまっている点、ご寛恕ください。

その代わりというわけでもないのですが、先の私のメールに対して地元のMLで若干の応答が
ありましたので、以下にその応答を掲げさせていただこうと思います。相手方の「応」の部分は
相手方の了解を得ていませんので思いきり「要約」しています。私の「答」の部分も若干訂正し
ています。

【Aさんの応答】(思いきり要約)
………………………………………………………………………………
要約:
「おそらく、共産党の判断としては、昭和天皇の存在自体が日本の戦争責任への態度のあり
方に重大な障害をつくりだしていた時代とは状況が変わり、象徴天皇が日本政治に果たして
いる役割は問題にしなくてもよいくらい小さくなったから、象徴天皇制を支持している国民世論
に迎合して、国民多数との無用な摩擦を避けようという意図があるのではないでしょうか。保
守勢力や民主党政府が、天皇を政治利用しようとしても、もはや国民がそれを政治的なことと
思うことはなく、天皇制を利用した国民の政治的動員はもはや不可能になっている、という現
状認識があるのだと思います。僕自身は、共産党の象徴天皇制についての現状認識は妥当
なものだと思います」

「共産党24回大会での、共産党の象徴天皇制論は、僕なりに乱暴に要約すれば、『象徴天皇
制はもはや盲腸のようなものになった』という認識を示したものだと思います。現在、天皇が
政治的権能を有していないのは、誰が見ても肯定できる現実です」「在位20周年奉祝につい
ての共産党の今度の態度表明には、違和感はありますが、『盲腸のようなもの』に関すること
に取り立てて目くじらを立てることもないんじゃないか、という感覚があります。天皇のことより
も、優先順位の高い問題が山積、というのが僕の思いです」
………………………………………………………………………………

【私の応答】
………………………………………………………………………………
Aさん。あなたは「共産党の今度の態度表明に」「違和感」を持つといわれます。「天皇陛下御
即位20年奉祝」運動はそもそも日本の超保守、右翼勢力の総本山ともいうべきあの日本会
議の提唱から始まったものです(Wiki:『日本会議』)。今回の大阪府堺市共産党市議団の「天
皇陛下御即位二十年を祝す賀詞」決議賛成は、その右翼、日本会議の提唱に共産党は進ん
で協力した、ということにならざるをえないわけですから、共産党支持、不支持の問題を超え
て、民主主義のまっとうな感覚の保持者であれば同党の態度に「違和感」を持って当然のこと
だと思います。共産党員や熱心な同党支持者からも少なくなく「違和感」を持たれるような「共
産党の今度の態度表明」がどうして「盲腸のようなもの」だとか「目くじらを立てることもない」
小さな問題だといえるでしょうか? 

私は、「共産党の今度の態度表明」は、同党のいわばレーゾン・デートル(存立根拠)にも関
わる致命的な問題群を含んでいると思います。Aさんが「共産党の今度の態度表明に」少な
くなく「違和感」を持つ、とおっしゃるのであれば、そのご自身の違和感の所在についてもっと
考究されることを望みます。それが「象徴天皇制」というわが国の憲法上の「特殊性を事実
に沿ってリアルにとらえる」(七中総不破報告)ことの意味だろうとも思います(決して「天皇陛
下御即位二十年を祝す賀詞」決議に賛成する、もしくは理解を示す、ということではなく)。

私が共産党七中総の不破報告を批判したのは、「天皇は国政に関する権能をもたないから
君主とはいえない」とするこの不破報告が、上記の大阪府堺市同党市議団の「天皇制翼賛」
決議賛成という反動的表明を導き出す理論的根拠になっていると思われるからです。

昨年の9月にあった「もう やめちょくれ!大分国体」の集会(天皇問題を考える市民ネットワ
ーク主催)の講師にもなった反戦反天皇制労働者ネットワーク大阪の吉田宗弘さんは「天皇
在位20年」祝賀の性格について、また象徴天皇の政治的役割について、次のように述べて
います。

「政府、右翼議員、財界、右翼などが一体で進める『天皇在位20年』の祝賀は、第一に臣民
が君主を祝賀するというもので、民主主義の原則である主権在民を根本的に否定する許し
がたい暴挙です。しかも、第二に海外に出兵せず戦争もしなかった日本がアメリカの侵略戦
争に参戦しインド洋やイラク、ソマリア沖で軍事力(自衛隊)を展開するまでになった、つまり
戦争国家になった20年であり、そのために天皇アキヒトがイラク派遣の自衛隊員を皇居に
招いて慰労するなど大きな役割を果たしことを見るとき、この『記念式典』は新たな天皇制軍
国主義を推し進めるものといわねばなりません」(CML 001394 2009年9月18日)
http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-September/001375.html

不破氏の上記命題は、日本会議など「天皇を政治利用しようとする」反動勢力側の政治的
意図、天皇の「お言葉」また「行動」が上記で述べたような現に日本国内や中国、韓国など
の近隣諸国に少なからぬ影響を与えている政治的・社会的機能の「リアル」な側面をも捨象
してしまいかねない大きな陥穽を持っています。今回の大阪府堺市同党市議団の「天皇制
翼賛」決議賛成の事例はそのことを端的に示しています。私は先のメールでは上記の意味
で不破報告を批判しました。決して共産党を批判するための一般論として不破報告を批判
したのではありません。

さて、その私の不破報告批判に関して、Aさんは、憲法について私の紹介した「Yahoo!辞
書」(大辞泉)の定義を「不正確で、国語辞典にはありがちな、憲法学への無理解が含まれ
て」いると裁断されるのですが、その裁断は、「国語辞典は所詮国語辞典に過ぎない」とい
う世間によくあるたぐいの偏見に基づくものといってよいでしょう。上記の定義は、例えば正
確な国語、百科辞書としてわが国の中型国語辞典の両雄と一般に評価されている『広辞
苑』(岩波書店)や『大辞林』(三省堂)でも同様です。『広辞苑』の「後記」には「御助力を賜
った学者・専門家諸先生の数は優に二百名を超える」とあります。左記は、例えば法律用
語の定義及び解説は法律の専門家の校訂を経た上で確定している、という意味です。国
語学者が素人考えで法律の定義をしているわけでは決してありません。いま私の手元に
ある『法律用語辞典』(自由国民社)の「憲法」の定義も上記の定義と同様ですし、法律の
専門家が書いたと思われるウィキペディアの下記の「憲法」の定義とも同様です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%86%B2%E6%B3%95

憲法の一般的定義は、憲法学、法律学、政治学などの各専門用語辞典を含めて、上記で
見たとおり、憲法を「国家の統治権・統治作用に関する根本原則を定める基礎法。国の最
高法規」と見る点で同じです。そうした「憲法」定義(すなわち不破氏のように憲法第4条だ
けを統治権・統治作用に関する規定として見るのではなく、憲法総体を「国家の統治権・統
治作用に関する根本原則」として見る)をひとつの前提にして、私は、不破氏の憲法解釈、
すなわち七中総報告の天皇制解釈は誤りではないか、と5点に渡ってその根拠を述べて
いるのです。

なお、同不破報告批判では将来的に共産党が「天皇制廃止をめざす」かどうかについて疑
念を提起しているのではありません(同綱領が将来的に「天皇制廃止をめざす」としている
のは明白なことです。ただ、「その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によっ
て解決されるべきもの」という提起には「誰が」「どのようにして」という変革主体の明記が
なく、賛成しがたいものがあります)。私が問題にしているのは、「天皇制の廃止」という規
定を同綱領から削除することにした不破報告の説明の理論的恣意性についてです。Aさん
の憲法解釈と相違するところがあるようですが、私は上記でも述べたように共産党の「天皇
制翼賛」決議賛成の暗愚を批判する意味で、その理論的根拠となっていると思われる不破
報告をも批判したのであって、憲法の一般論について論争するつもりはありません。ご了承
ください。
………………………………………………………………………………

なお、明日の11月8日には大分でも下記のような「天皇即位20年祝賀」反対!の集会が
予定されています。

━━━━━━━━
天皇の即位20周年奉祝行事が11月12日に東京の国立劇場で開催されます。
私達は国体、植樹祭、海の日など天皇のための国家的行事によって多額の税金が浪費
され、自然破壊や人権侵害が繰り返される現状を目の当たりにしてきました。
象徴天皇制は政治に関与しないしながらも、イラクからの帰還自衛官の慰労など重大な
政治関与を行っています。
奉祝式典の問題を考えて見ます。

とき:11月8日(日)午後1時半〜
ところ:大分コンパルホール視聴覚室(4F)
講師:藤岡正雄さん
 「天皇即位20年祝賀」反対!大阪行動
 反戦天皇制労働者ネットワーク 世話人
演題 「平成」流天皇賛美を批判する
主催:天皇問題を考える市民ネットワーク大分
入場カンパ 500円
連絡先 島田  097−534−6116
━━━━━━━━


東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp

----- Original Message ----- 
From: "田口" <hantenno at m10.alpha-net.ne.jp>
To: "CML 投稿" <cml at list.jca.apc.org>
Sent: Wednesday, November 04, 2009 1:46 PM
Subject: [CML 001903] Re: 【佐賀】 罪位20年 「誰が祝うか」 抗議集会


> 東本様、 皆様
>  共産党も宗教団体も末端の構成員 一人ひとりは 「いい人」 たちですよね。私の周りにも何人かいらっしゃいますが社会に貢献したいという思いで活動なさっています。木だけ見て 「組織という森」 全体が見えな い場合もあるし、「我が組織はちょっとおかしい」 と思っていても口には出せないこともあ
> るでしょう。
>  「あんたは間違うとる」 と叫んで組織から強引に引っ張り出すか、気長に少しずつ話していくか。自分が組織に入って出世し、頂点を極めて組織を一気に変革するか。いずれにしろ難しゅうございますが。
>  だいたい、虐げられている人々のエネルギーを結集してアチラ側を打ち砕くよい智慧がありませんかねえ。「各問題の根っこは同じなんだ」
> と皆の意志を統一させる方法が。  田口



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