[CML 000825] Re: 三鷹市市民協働センターでの<お話しと「慰安婦」展>の成功を

Ken Masuoka kmasuoka at jca.apc.org
2009年 7月 28日 (火) 09:42:25 JST


鷹嘴さん・motteiさん・みなさま:

益岡です。たびたびすみません。7月27日付けの私の鷹嘴さん
に対するお返事に一部誤りがありました。また、日本政府の人種
差別撤廃条約をめぐる重要なポイントについて抜け落ちていたの
で補足します。長くなり、申し訳ありません。また、釈迦に説法
の面もあるかもしれませんが、ご容赦ください。

人種差別撤廃条約の第4条では、以下のようにあります。
====
締約国は、一の人種の優越性若しくは一の皮膚の色若しくは種族的出身
の人の集団の優越性の思想若しくは理論に基づくあらゆる宣伝及び団体
又は人種的憎悪及び人種差別(形態のいかんを問わない。)を正当化し
若しくは助長することを企てるあらゆる宣伝及び団体を非難し、また、
このような差別のあらゆる扇動又は行為を根絶することを目的とする迅
速かつ積極的な措置をとることを約束する。このため、締約国は、世界
人権宣言に具現された原則及び次条に明示的に定める権利に十分な考慮
を払って、特に次のことを行う。

(a)人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動、
いかなる人種若しくは皮膚の色若しくは種族的出身を異にする人の集団
に対するものであるかを問わずすべての暴力行為又はその行為の扇動及
び人種主義に基づく活動に対する資金援助を含むいかなる援助の提供も、
法律で処罰すべき犯罪であることを宣言すること。

(b)人種差別を助長し及び扇動する団体及び組織的宣伝活動その他のす
べての宣伝活動を違法であるとして禁止するものとし、このような団体
又は活動への参加が法律で処罰すべき犯罪であることを認めること。

(c)国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動するこ
とを認めないこと。 
====
ですから、団体そのものの違法性も当然、国が問題にすべきであ
るということです。ちなみに「世界人権宣言に具現された原則」
というところで、表現の自由とか思想・信条の自由への配慮が入
ってきます。

さて、国連人権高等弁務官事務所が1993年3月23日に出し
た一般的勧告第15号によると、この第4条は、人種差別撤廃条
約において「人種差別に反対する闘いの中で中心的なものとみな
されていた」とされており、「第4条を適用することの重要性は
増している」とあります。また、一般的勧告7の中で「第4条の
規定は義務的なものだ」とされています。
http://www.minoritycentre.org/sites/default/files/cerd_gen_rec_15_organizedviolence.pdf

ここで「世界人権宣言に具現された原則」との関係ですが、一般
的勧告第15号は、「人種的優越または憎悪に基づくあらゆる思
想の流布を禁ずること」は、世界人権宣言第19条で規定された
意見と表現の自由の権利と両立するものだと明記しています。思
想や表現の自由の権利には、人権宣言第29条第2節で規定され
た「すべて人は、自己の権利及び自由を行使するに当たっては、
他人の権利及び自由の正当な承認及び尊重を保障すること・・・
を満たすことをもっぱら目的として・・・」という規定があり、
これに従って、「人種的優越または憎悪に基づくあらゆる思想の
流布を禁ずること」は世界人権宣言に照らしても妥当だ、という
ことです。

さて、ところで、日本は、この人種差別撤廃条約第4条の(a)
と(b)を保留しているのです。2006年の人権委員会におけ
る人種差別に関する日本に関する報告では、日本では「そのため、
人種的優越または憎悪に基づく考えを広めることはそれ自体とし
て処罰されるわけではなく、それが身体的暴力や脅迫、名誉毀損
などの犯罪行為を生み出したときにのみ処罰可能ということにな
る」と述べています。人権高等弁務官事務所の一般的勧告で最重
要と言われている人種差別撤廃条約の条項が日本では保留されて
いるのです。

ですから、私が「法的には個々の行為について扱う必要がある」
と言ったのは事なかれ主義の表明になってしまっていました。

結論なしで説明ばかりですが、長くなりましたので、ここで終わ
りにします。

益岡
-- 
Ken Masuoka <kmasuoka at jca.apc.org>


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