[CML 000754] 総選挙 「政権交代」を活かす軸を強めよう(雑誌『プランB』第22号より)

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2009年 7月 22日 (水) 15:40:15 JST


雑誌『プランB』の編集委員をしている紅林進と申します。
  いよいよ総選挙の日程も決まり、政権交代ということも言われていますが、
  政権交代自体は必要だと思いますが、単に政権が交代すればよいという
  ものではなく、問題はどのような政策を実現させるかにあります。
  本誌編集長が『プランB』第22号(8月1日発売予定)に書いた下記論文
  を転載させていただきます。
   
   
  村岡到:総選挙 「政権交代」を活かす軸を強めよう

 『プランB』第22号=8月1日刊行 に掲載予定

 七月二一日に、麻生太郎首相は衆議院の解散を宣言し、八月三〇日に
  総選挙が行われることになった。
 無責任なマスコミでは都議選の翌日には「さらば自民党」とか「自民党崩壊」
の大きな見出しが踊っている。「死に体内閣」「泥船政権」もある。解散の日に
は「自民地獄絵」とも書いている。自民党内からこのまま総選挙に突入したので
は「集団自殺」だ、「分裂選挙だ」と危機感に溢れた声があげられている。まだ
、何が起きるか分からないが、余ほどのことが突発しないかぎり、総選挙では民
主党が勝利して「政権交代」が実現する。週刊誌は競って、民主党が単独
  過半数二四一を遙かに越えると予想して煽っている。
 総選挙にたいしてどういう姿勢で臨んだらよいのかは、後で提起することにして、
  まずは局面を決定的に加速させた東京都議選について最小限のことを確認
  しておこう。
 都議選は七月一二日に投票された。有権者約一〇四七万人、投票率
  五四%(前回より一〇ポイント上昇)、定数は一二七議席。自民党は四八→
  三八、公明党は二二→二三、民主党は三四→五四、共産党は一三→八、
  ほか。自治市民93の福士敬子さんは四期目当選。
 自民党は一〇議席も後退、千代田区で七期目を狙う都議会のドンが二六歳
  の民主党の新人に敗北したことに象徴されるように、惨敗となった。民主党は
  第一党の座を占めたが、過半数六四には九足りず、共産党と福士さんなどが
  キャスティングボートを握る。共産党は議席では大幅に後退したが、得票では
  七一万票(得票率は一三%)で、二〇〇七年の参院選比例区と比較すると
  一六万票増やした。
 国政では野党の民主党が石原都知事提案に九九%賛成する都議会与党
  であるというネジレが、争点をぼかすことになり、マスコミが煽る「政権交代」の
  雰囲気が大きく民主党に追い風となった。石原知事は「総選挙の前相撲に
  させられた」と悔しがったが、今後の都政では、民主党がテストされる。
  新銀行東京問題などで、果たして民主党は都民の要求に添うことができるのか。
  一〇月に二〇一六年のオリンピック招致が仮に決定された場合、それを花道に
  石原退陣すらあり得る。
 総選挙にどのように対応したらよいのか。
 〇五年の郵政選挙で小泉純一郎首相主導によって自民党が二九六議席を
  獲得するほど圧勝し、以後強行してきた新自由主義の経済政策が生み出した
  国民生活破壊は、安倍、福田、麻生と三代つづいた自公政権によって、折から
  の世界恐慌にも直撃されいっそうその歪みを拡大した。この経済的難題への
  脱出策が見出せないことが根底的な根拠となって、日本の政治は低迷し、
  ようやく自公政権は国民から見放され、「政権交代」必至となった。だから、
  自公政権を退場させる点ではプラスであるが、問題は「政権交代」後にこそある。
  民主党は大企業優先と日米安保堅持の基本路線を修正できるのか、
  が根本問題である。さらに民主党は、衆議院の比例部分一八〇から一〇〇に
  削減すると公約し、道州制の導入を提案している。一九九三年に細川護煕連立
  政権が誕生し、翌年に小選挙区制導入を許した誤りを繰り返してはならない。
 共産党は七月一六日に幹部会声明を発表して、戦術を手直しした。「民主党
  中心の政権が成立する可能性が大きい」ことを認めたうえで、「建設的野党」の
  立場を取ると表明した。声明を説明する記者会見で志位和夫委員長は「行動
  する是々非々」とも語った。だが、いま一つ分かりやすさに欠ける。今までも「建設
  的野党」だったはずである。二一日には、志位氏は記者に問われて、首相指名
  について「決選投票では条件を付けて民主党に投ずることはありうる」と回りくどく
答えた。問われて答えるという受け身の姿勢は「建設的」ではない。五日前の
  「声明」ではどうしてこの肝心な問題に触れなかったのか。「朝日新聞」によれば、
  共産党の穀田恵二衆議院議員は「自公政治をやめさせるために民主を選択
  するのはやむえを得ない」と言い、そのうえで「共産党を伸ばす」必要性を説いた。
 正しくは民主党政権への〈批判的閣外協力〉と打ち出すべきである。これなら、
  衆議院で共産党がキャスティングボートを握ることになった場合、民主党中心
政権の成立に与することを明示できる。〈政権交代を活かす軸への成長を〉でも
良い。共産党も含んだ「野党連合政権を」という意見もあるが、それでは共産党
は埋没してしまう。社民党は連立政権を願望・約束しているが、飲み込まれる
  だけである。
 国政選挙における左派のバーター選挙協力を、私はかねてから提唱している。
具体的には、共産党、社民党、新社会党が、選挙区ごとに自分の党の候補者
  の立候補を取りやめ、他の党の候補を支持する戦術である。選挙協力を締結
  するのが望ましいが、それが無理なら、例えば共産党が率先して東京八区の
  社民党の保坂展人候補への投票を呼びかけて自党の候補者を立てないことにし、
  その代わりに京都一区の穀田恵二候補に投票するように社民党とその支持者に
  訴える。そうすれば、この新戦術は共産党の評価を高め、他の地域での得票増大
  に結びつくであろう。公明党の場合には、自民党候補にも平気で投票できる
  「柔軟さ」がある。左派にもこの「柔軟さ」が求められている。
 総選挙後に政界再編が起こるであろう。自民党分解し、民主党を補完する
  新党の可能性もある。あるいは一定の期間後に民主党政権が壁にぶつかって
  立ち往生して、内部分解する可能性もある。現在でも国民新党も存在しているが、
  政界再編の動向は「二大政党制」が日本の政治の実態に適合的ではないことを
  示す。もともと小政党を制度的に排除する小選挙区制は〈歪曲民主政〉を意味する。
 したがって、私たちは、小選挙区制の打破を重要な政治課題として押し上げなく
  てはならない。自民党や公明党までふくめて小選挙区制打破の一点で共闘する
必要がある。左派はその動向を主導しなければならない。高額供託金、選挙期間
の短さ、個別訪問の禁止、政党以外のビラまき禁止なども改善する必要がある。
 「政権交代」の実現は、思想的解体傾向を深めている左派のいっそうの孤立を
生み、左派はさらに自信を喪失して民主党的傾向に溶解する危険性が高い。
  いよいよ左派の存在理由が根本から問われる正念場に直面する。資本制経済
  への根底的批判を貫けるか否か、別言すれば社会主義への展望を、現実的な
  〈プランB〉と合わせて提示できるか否かが試金石となる。
                             (村岡到/本誌編集長)

 

 
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