[CML 002515] 追伸:マスメディアの報じない厚労省、派遣法改正報告案の重大な問題点を問う

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2009年 12月 30日 (水) 12:39:19 JST


標題の件について、ある方から、「今回の厚労省部会の報告案に「『期間の定めのない雇用労働
者については派遣先による特定を可能にする』という規制緩和が盛り込まれた」という根拠を問う
質問がきました。「そうだとしたら、だまし討ちのような議論だったと思います」が、上記のことは今
回の報告案のどこに記載されていますか、という。

たしかに今回の厚労省部会の報告案(http://files.acw2.org/091228.pdf)には上記のことは明確
に語られていません。上記について明確に語っていないところは、これは官僚作文の常套手段と
いうべきものですがまさに「だまし討ち」といって差し支えない代物です。官僚作文の「だまし討ち」
は書かれていないところにあります。読み取る必要があります。

以下、上記の質問者に答えた私の応答です。「だまし討ち」の手口の参考にしていただければ幸
いです。

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━
> 「期間の定めのない雇用労働者については派遣先による特定を可能にする」という規制緩和が
> 盛り込まれた。

という点について、どこで確認されているのか、というお尋ねですが、この点について私は次のよ
うに考えます。

厚労省労働政策審議会の労働需給制度部会が今回発表した「今後の労働者派遣制度の在り方
について」という報告の「機ハ働者派遣法の改正法案に盛り込むべき事項」には次のような記載
があります。

「政府が次期通常国会に労働者派遣法の改正法案を提出するに当たっては、昨年11月に第170
臨時国会に提出した法案(以下「20年法案」という。)の内容に、下記の各事項に示した内容を追
加・変更した内容の法案とすることが適当である」
http://files.acw2.org/091228.pdf

すなわち今回の厚労省の派遣法改正報告案は、「自民党政権のもとで政府が第170 回臨時国会
に提出した改正法案をベース」(「NPO法人・派遣労働ネットワーク」の見解、2009年12月28日)に
して、その自民党政権案に上記の部会のあらたな追加・変更案を加えたものです。が、今回の報
告案には「2 製造業派遣の原則禁止」の項の「(2)ただし、雇用の安定性が比較的高い常用雇
用の労働者派遣については、禁止の例外とすることが適当である」とする規定のほか「期間の定
めのない雇用労働者について」の追加・変更はありません。

つまり、20年法案の下記の規定は、今回の報告案においてもいまなお生きている、ということです。

━━━━━━━━━━━
■労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等
の一部を改正する法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/dl/h1104-1b.pdf

第一 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律
の一部改正(第一条及び第二条による改正関係)

四 期間を定めないで雇用される労働者に係る特定を目的とする行為
(一)期間を定めないで雇用される労働者に係る特定を目的とする行為の解禁
労働者派遣契約の締結に際し、派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努め
なければならないこととする規定について、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者が当該
労働者派遣に係る派遣労働者を期間を定めないで雇用される労働者の中から特定することにつ
き当該労働者派遣契約の当事者が合意したときは、これを適用しないものとすること。(第二十六
条第七項関係)
━━━━━━━━━━━

上記の今回の報告案の2の(2)の「ただし、雇用の安定性が比較的高い常用雇用の労働者派遣
については、禁止の例外とすることが適当である」とする規定は、20年法案の上掲の規定が「いま
なお生きている」証左の規定ということができます。

だから、私が先のメールで引用したNPO法人・派遣労働ネットワークは、今回の報告案には「『期
間の定めのない雇用労働者については派遣先による特定を可能にする』という規制緩和が盛り
込まれた」と指摘しているのだと思いますし、私もそう思っています。

「期間の定めのない雇用労働者については派遣先による特定を可能にする」という規制緩和の規
定の問題性についてイダヒロユキさんは以下のように指摘しています。再掲しておきます。イダさん
の下記の指摘は、20年法案の上記の規定が今回の報告案においても踏襲されている以上、これ
もいまなお生きている、というべき指摘だと私は思っています。

………………………………………………………………………………
■派遣法改正案の問題と、対案(ソウル・ヨガ(イダヒロユキ)ブログ 2008年12月15日)
http://blog.zaq.ne.jp/spisin/article/697/

3 派遣法「改正」案の問題点

今回の改正案に滑り込まされた大問題のひとつが、登録型から常用型へ移行させる誘導策です。
常用型に限り、事前面接を解禁するとか、専門職で3年以上働いた場合、派遣先が労働者に優先
的に直接雇用を申し込む義務も免除するとして、そのような「企業にとってお得」なようにして常用
型を増やそうというのです。
いっけん、常用型を増やすというのは、野党や労働運動側が求めていることに合致しているように
思いますが、実態はまったく逆です。

つまり、実態はどうあれ「常用型」という名にさえすれば、事前面接をOKにするというのですから、
これは改悪です。派遣は、技能を売るものなのだから、事前面接は本来は必要ないものです。派
遣は、派遣先が雇用するのではないので、派遣先が面接するのは絶対にダメなのです。でも今で
も実際はこれがまかり通っています。しかも面接となると、容姿や性格(従順)など、差別的な要素
も入ってきます。

(略)

そしてそもそも、常用型といっても、登録型との区別があいまいです。無期雇用だと「常用型」という
のですが、今は、事実上、契約更新して1年以上働けばいいとなっており、有期雇用でも常用型と
呼べます。つまり会社が「常用」といえばすむのです。

実際、常用型とされているのは、約87万人(06年)ですが、無期雇用は4割程度でしかありません。
残りは、有期雇用。ただ、一応月給制で、仕事がなくても給料保障ということで、常用型といわれて
いますが、実態は、同じところにずっと送られている有期雇用です。常用型といっても、仕事がなく
なれば、解雇(雇止め)されるのです。常用型といいつつ、社会保険に入っていない、ボーナスもな
しの労働者がいます。

今回の改正案で、常用型を規制緩和するのだからせめて「常用=無期雇用」と明確にしようという
話もありましたが、それさえも見送られました。結局、規制緩和だけです。

常用型は、一見、登録型よりはましにみえますが、常用といって2年も3年も派遣として使っていると
いう実体もあり、そもそも、どうしてずっと雇い続けるのに、派遣にするのか、という問題があります。
直接雇用にすればいいのに。今回の改正案では、常用という名にして「ずっと派遣」(長期利用)と
いう道を解禁しました。規制緩和による改悪です。

常用型というだけで、派遣会社の資格をとる認可がゆるく、誰でも行えてしまいます。この点も危険
です。常用型といいつつ、実質上、有期で不安定な派遣を使う会社が今後増え、その派遣労働者
は、事前面接され、正社員にもなれない。今夏の改正案は、派遣という不安定を増やし、その条件
を悪くする側面がおおいにあり、「日雇い派遣禁止」といううたい文句での改悪法です。
(以下、略)
………………………………………………………………………………

東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp

----- Original Message ----- 
From: "higashimoto takashi" <taka.h77 at basil.ocn.ne.jp>
To: "市民のML" <cml at list.jca.apc.org>
Sent: Tuesday, December 29, 2009 8:38 PM
Subject: [CML 002509] マスメディアの報じない厚労省、派遣法改正報告案の重大な問題点を問う


> みなさますでにご存知のとおり、昨日28日に「労働者派遣制度の改正を検討する労働政策審議
> 会(厚生労働相の諮問機関)の労働力需給制度部会が開かれ」、「仕事がある時だけ雇用契約を
> 結ぶ登録型派遣や製造業派遣の原則禁止を柱とした報告書を取りまとめ」ました(「『登録型派遣
> 原則禁止』 労政審部会報告書 製造業も規制強化」東京新聞、2009年12月28日 夕刊)。
> http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009122802000197.html
>
> この鳩山内閣の派遣法改正案(いまだ閣議決定されているわけではありませんが、あえて左記の
> ように呼んでおきます)についてマスメディア各紙は「まだ不十分な点も残る」(朝日新聞、2009年
> 12月28日付社説)などとしながらもおおむね肯定的な評価をしています。
>
> 「派遣法はこれまで改正のたびに雇用の流動化の面ばかりを拡大してきた。今回、それを労働者
> 保護の方向にかじを切った意義は大きい」(「派遣法改正―労働者保護への方向転換」朝日新聞、
> 2009年12月28日付社説)
> http://www.asahi.com/paper/editorial20091228.html?ref=any#Edit1
>
> 「一連の内容は評価できる。『コンクリートから人へ』と人間重視の政策を掲げる鳩山政権にとって
> 同法改正は真骨頂となろう。」(「派遣法改正 労働者保護の第一歩だ」東京新聞、2009年12月28
> 日付社説)
> http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2009122802000067.html
>
> しかし、このマスメディアの鳩山内閣の派遣法改正案の評価には私は大きな異議があります。下
> 記のNPO法人・派遣労働ネットワークの「見解」はその私の異議をよく代弁してくれていますので、
> 「ソウル・ヨガ(イダヒロユキ)」ブログから同ネットワークの見解を紹介させていただこうと思います。
>
> ━━━━━━━━━━━
> ■労働政策審議会建議に対する見解(NPO法人・派遣労働ネットワーク 2009年12月28日)
> http://blog.zaq.ne.jp/spisin/article/1221/
>
> 「偽装請負」「日雇い派遣」「派遣切り」は、労働者派遣制度の根本的構造的矛盾が露呈したもの
> であった。雇用とは人間の生活を支えるに足りる「安定」を本質的に要請するものであり、仕事と
> は誇りと社会的価値の源泉であって、人間の尊厳に値する条件のもとで営まれることを要請して
> いる。
>
> こうした社会の要請を完全に否定するかのように、使用者が雇用に対する責任を放棄し、明日の
> 生活も見えない細切れ「雇用」と最低労働基準さえ遵守されない過酷な貧困労働を拡大し、大事
> にされるべき働き手を機械のパーツのように使い捨てるツールとして労働者派遣制度が利用され
> てきた。そうした状況から決別し、労働者保護を基本とした法制へ転換することであったはずであ
> る。
>
> しかし、本日公表された労働政策審議会建議の内容は、そうした時代の要請・期待からすれば、
> きわめて問題と言わざるをえない。
>
> 第1に、旧野党共同法案を基本にするのではなく、すでに国民の支持を失っていた自民党政権の
> もとで政府が第170 回臨時国会に提出した改正法案をベースとしており、「期間の定めのない雇
> 用労働者については派遣先による特定を可能にする」という規制緩和が盛り込まれた。
> これは、雇用責任を負担しない派遣先は派遣労働者の決定権を有しないという労働者派遣制度
> の本質的要請を否定するものであり、これが実現されたときには、大手を振ってまかり通ってきた
> 事前面接による派遣決定が公然と横行することを許し、「ユーザー」である派遣先の支配が格段
> と強化される。派遣先が、法的に雇用責任を負担しないという労働者派遣制度のうまみを享受し
> ながら、労働者の雇用に支配力を行使し、影響を及ぼすことができるようになれば、労働者の生
> 活と権利は、派遣先の我が儘によって翻弄され、根底から否定されてしまうことに強い懸念を抱
> かざるを得ない。
>
> 第2に、今回の改正に問われたものは、「雇用」の回復であり、派遣先の労働関係上の責任を格
> 段に強化することであったが、以下の点で極めて不十分なものにとどまった。
>
>  派遣元の雇用責任さえかなぐり捨てた「派遣切り」の温床=登録型派遣の禁止については、
> 「常用型」と「登録型」の区別が明確でなく、これまでの登録型を常用型と言い換えただけの責任
> 逃れがまかり通ってしまう。
>
>  派遣受入範囲の再検討については、適用対象業務及び受け入れ期間制限による労働者保
> 護に対する実効性を多面的に検証することなく、2ヶ月以内の有期雇用による派遣について大幅
> な例外を認めた。また、かねてから必要が指摘されていた26業務の再検討も示していない。
>
>  旧野党共同法案で打ち出されていた団体交渉への応諾義務を含む派遣先の労働法上の共
> 同責任制については、基本的に先送りして、悪質な法逸脱に対して「派遣先が派遣労働者に対
> して労働契約を申し込んだものとみなす」制度のみを導入した。しかし、その契約内容はあくまで
> 派遣元の労働条件と同一の内容となっている。
>
> 第3に、派遣労働者の人間としての尊厳を確保するに足りる制度とすることも課題であったが、
> 派遣元の均衡考慮の努力義務にとどまった。派遣労働者も派遣先に直接雇用されて働く労働
> 者と同じ人間であり、派遣労働者であることを理由として差別されてはならないはずである。派
> 遣労働が、雇用のあらゆるステージにおいて、完全な労働法上の権利を享受することができ、
> また待遇において差別されない権利を確立すべきである。
>
> 派遣労働ネットワークは、労働者派遣制度を四半世紀にわたって運用してきた歴史の節目に
> ふさわしい真の法改正の実現に向け今後さらに働きかけを強める決意である。
> ━━━━━━━━━━━
>
> また、働く女性の全国センター(ACW2)も同派遣法改正案について下記のような異議申し立て
> を述べています(昨日紹介済みですのでURLのみご紹介しておきます)。
>
> ■今後の労働者派遣制度の在り方について(報告)に対する声明(働く女性の全国センター 2009年12月28日)
> http://files.acw2.org/091228seimei.doc
>
> なお、上記の厚労省会労働需給制度部会の報告そのものは下記で見ることができます。
>
> ■今後の労働者派遣制度の在り方について(報告)(厚生労働省労働政策審議会職業安定分科会労働需給制度部会)
> http://files.acw2.org/091228.pdf
>
> また、いま、派遣労働者がいかに劣悪な状況下に置かれ、過酷な日々を強いられているか。
> 下記の自由法曹団作成の「派遣黒書」(35頁)をご一読ください。上記の派遣法改正案なるも
> のが派遣労働者の現実に背いた答申になっているか。憤りのようなものさえ沸いてきます。
>
> ■派遣黒書〜 労働者派遣法抜本改正のために 〜(自由法曹団 2009年12月8日)
> http://www.jlaf.jp/jlaf_file/20091208hakenkokusyo.pdf
>
> また、本来の派遣法改正案のあるべき姿については下記のイダヒロユキさんのご論攷をご
> 参照ください。同論攷は自・公政権化での派遣法「改正」案についての批判、対案ですが、
> 今回の鳩山政権下での派遣法改正案の問題点の指摘、対案としても同論攷の意義はまっ
> たく失われていません。なかんずく同論攷で紹介されている「フランスの派遣のあり方」は目
> からうろこの大参照になりえると思います。是非ご参照ください。
>
> ■派遣法改正案の問題と、対案(ソウル・ヨガ(イダヒロユキ)ブログ 2008年12月15日)
> http://blog.zaq.ne.jp/spisin/article/697/
>
>
> 東本高志@大分
> taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
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