[CML 002509] マスメディアの報じない厚労省、派遣法改正報告案の重大な問題点を問う

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2009年 12月 29日 (火) 20:38:31 JST


みなさますでにご存知のとおり、昨日28日に「労働者派遣制度の改正を検討する労働政策審議
会(厚生労働相の諮問機関)の労働力需給制度部会が開かれ」、「仕事がある時だけ雇用契約を
結ぶ登録型派遣や製造業派遣の原則禁止を柱とした報告書を取りまとめ」ました(「『登録型派遣
原則禁止』 労政審部会報告書 製造業も規制強化」東京新聞、2009年12月28日 夕刊)。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009122802000197.html

この鳩山内閣の派遣法改正案(いまだ閣議決定されているわけではありませんが、あえて左記の
ように呼んでおきます)についてマスメディア各紙は「まだ不十分な点も残る」(朝日新聞、2009年
12月28日付社説)などとしながらもおおむね肯定的な評価をしています。

「派遣法はこれまで改正のたびに雇用の流動化の面ばかりを拡大してきた。今回、それを労働者
保護の方向にかじを切った意義は大きい」(「派遣法改正―労働者保護への方向転換」朝日新聞、
2009年12月28日付社説)
http://www.asahi.com/paper/editorial20091228.html?ref=any#Edit1

「一連の内容は評価できる。『コンクリートから人へ』と人間重視の政策を掲げる鳩山政権にとって
同法改正は真骨頂となろう。」(「派遣法改正 労働者保護の第一歩だ」東京新聞、2009年12月28
日付社説)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2009122802000067.html

しかし、このマスメディアの鳩山内閣の派遣法改正案の評価には私は大きな異議があります。下
記のNPO法人・派遣労働ネットワークの「見解」はその私の異議をよく代弁してくれていますので、
「ソウル・ヨガ(イダヒロユキ)」ブログから同ネットワークの見解を紹介させていただこうと思います。

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■労働政策審議会建議に対する見解(NPO法人・派遣労働ネットワーク 2009年12月28日)
http://blog.zaq.ne.jp/spisin/article/1221/

「偽装請負」「日雇い派遣」「派遣切り」は、労働者派遣制度の根本的構造的矛盾が露呈したもの
であった。雇用とは人間の生活を支えるに足りる「安定」を本質的に要請するものであり、仕事と
は誇りと社会的価値の源泉であって、人間の尊厳に値する条件のもとで営まれることを要請して
いる。

こうした社会の要請を完全に否定するかのように、使用者が雇用に対する責任を放棄し、明日の
生活も見えない細切れ「雇用」と最低労働基準さえ遵守されない過酷な貧困労働を拡大し、大事
にされるべき働き手を機械のパーツのように使い捨てるツールとして労働者派遣制度が利用され
てきた。そうした状況から決別し、労働者保護を基本とした法制へ転換することであったはずであ
る。

しかし、本日公表された労働政策審議会建議の内容は、そうした時代の要請・期待からすれば、
きわめて問題と言わざるをえない。

第1に、旧野党共同法案を基本にするのではなく、すでに国民の支持を失っていた自民党政権の
もとで政府が第170 回臨時国会に提出した改正法案をベースとしており、「期間の定めのない雇
用労働者については派遣先による特定を可能にする」という規制緩和が盛り込まれた。
これは、雇用責任を負担しない派遣先は派遣労働者の決定権を有しないという労働者派遣制度
の本質的要請を否定するものであり、これが実現されたときには、大手を振ってまかり通ってきた
事前面接による派遣決定が公然と横行することを許し、「ユーザー」である派遣先の支配が格段
と強化される。派遣先が、法的に雇用責任を負担しないという労働者派遣制度のうまみを享受し
ながら、労働者の雇用に支配力を行使し、影響を及ぼすことができるようになれば、労働者の生
活と権利は、派遣先の我が儘によって翻弄され、根底から否定されてしまうことに強い懸念を抱
かざるを得ない。

第2に、今回の改正に問われたものは、「雇用」の回復であり、派遣先の労働関係上の責任を格
段に強化することであったが、以下の点で極めて不十分なものにとどまった。

 派遣元の雇用責任さえかなぐり捨てた「派遣切り」の温床=登録型派遣の禁止については、
「常用型」と「登録型」の区別が明確でなく、これまでの登録型を常用型と言い換えただけの責任
逃れがまかり通ってしまう。

 派遣受入範囲の再検討については、適用対象業務及び受け入れ期間制限による労働者保
護に対する実効性を多面的に検証することなく、2ヶ月以内の有期雇用による派遣について大幅
な例外を認めた。また、かねてから必要が指摘されていた26業務の再検討も示していない。

 旧野党共同法案で打ち出されていた団体交渉への応諾義務を含む派遣先の労働法上の共
同責任制については、基本的に先送りして、悪質な法逸脱に対して「派遣先が派遣労働者に対
して労働契約を申し込んだものとみなす」制度のみを導入した。しかし、その契約内容はあくまで
派遣元の労働条件と同一の内容となっている。

第3に、派遣労働者の人間としての尊厳を確保するに足りる制度とすることも課題であったが、
派遣元の均衡考慮の努力義務にとどまった。派遣労働者も派遣先に直接雇用されて働く労働
者と同じ人間であり、派遣労働者であることを理由として差別されてはならないはずである。派
遣労働が、雇用のあらゆるステージにおいて、完全な労働法上の権利を享受することができ、
また待遇において差別されない権利を確立すべきである。

派遣労働ネットワークは、労働者派遣制度を四半世紀にわたって運用してきた歴史の節目に
ふさわしい真の法改正の実現に向け今後さらに働きかけを強める決意である。
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また、働く女性の全国センター(ACW2)も同派遣法改正案について下記のような異議申し立て
を述べています(昨日紹介済みですのでURLのみご紹介しておきます)。

■今後の労働者派遣制度の在り方について(報告)に対する声明(働く女性の全国センター 2009年12月28日)
http://files.acw2.org/091228seimei.doc

なお、上記の厚労省会労働需給制度部会の報告そのものは下記で見ることができます。

■今後の労働者派遣制度の在り方について(報告)(厚生労働省労働政策審議会職業安定分科会労働需給制度部会)
http://files.acw2.org/091228.pdf

また、いま、派遣労働者がいかに劣悪な状況下に置かれ、過酷な日々を強いられているか。
下記の自由法曹団作成の「派遣黒書」(35頁)をご一読ください。上記の派遣法改正案なるも
のが派遣労働者の現実に背いた答申になっているか。憤りのようなものさえ沸いてきます。

■派遣黒書〜 労働者派遣法抜本改正のために 〜(自由法曹団 2009年12月8日)
http://www.jlaf.jp/jlaf_file/20091208hakenkokusyo.pdf

また、本来の派遣法改正案のあるべき姿については下記のイダヒロユキさんのご論攷をご
参照ください。同論攷は自・公政権化での派遣法「改正」案についての批判、対案ですが、
今回の鳩山政権下での派遣法改正案の問題点の指摘、対案としても同論攷の意義はまっ
たく失われていません。なかんずく同論攷で紹介されている「フランスの派遣のあり方」は目
からうろこの大参照になりえると思います。是非ご参照ください。

■派遣法改正案の問題と、対案(ソウル・ヨガ(イダヒロユキ)ブログ 2008年12月15日)
http://blog.zaq.ne.jp/spisin/article/697/


東本高志@大分
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