[CML 002382] 二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2009年 12月 19日 (土) 13:12:38 JST


二子玉川東地区再開発差止訴訟控訴審が東京高裁で2009年12月15日に開かれた。これは東京・世田谷の二子玉川周辺住民らが二子玉川東地区市街地再開発組合(川邉義高・理事長)を相手に二子玉川東地区第1種市街地再開発事業の差し止めを求めた訴訟の控訴審である。洪水被害などを立証するために住民側が申請した証人の尋問可否を判断するために審理続行となった。
口頭弁論では再開発組合側が準備書面(4)、住民側が準備書面(5)を陳述した。住民側代理人の淵脇みどり弁護士が準備書面(5)を口頭で補足説明した。
淵脇弁護士は最初に再開発事業が周辺地域の洪水被害を激化させることが問題であると裁判の経緯に沿って論点を整理した。再開発組合側は人工地盤の下に雨水を流入させるから洪水被害を激化させないと反論するものの、人工地盤がどのような構造になっており、どれだけの水量を保てるのか何ら科学的に論証しておらず、資料も提示していないと批判した。
しかも、準備書面(4)では人工地盤の下の機械式駐車場は約1.5mまでは浸水を免れることができると認めている。これは裏返せば水深約1.5mまでは塞き止めるということである。つまり、周辺地域は約1.5mの浸水を覚悟しなければならない。淵脇弁護士は「再開発組合の主張によって洪水被害が一層明らかになった」とまとめた。
最後に淵脇弁護士は裁判の進行について述べた。住民側は5人の本人尋問を申請している。特に洪水被害に関係ある低地居住者や洪水被害経験のある人らの採用をお願いしたいと結んだ。
裁判長は再開発組合側に「主張は準備書面(4)で尽きたということで宜しいですか」と尋ねた。これに再開発組合側代理人は同意し、「準備書面(4)を良くお読みいただければ」と答えた。
裁判長は住民側には「準備書面(5)を読むと、まだ反論がありそうですが」と水を向けた。これに淵脇弁護士は「最終的には反論するが、本人尋問をした後で最終準備書面を提出する形でお願いしたい」と述べた。
裁判長は「本人尋問の申請は出ているが、尋問事項書は出ていない。どの当事者に何を聞くかを明らかにしていただきたい。洪水被害に重点を置くのであれば、それに沿った形でお願いする」と述べ、住民側に5人分の尋問事項書の提出を求めた。
本人尋問の採否を決定するために弁論の続行とし、次回期日を1月26日14時半からと定めた。その上で住民側に「まだ何か主張がありそうに見えたので、主張があれば次回提出してください。最終準備書面まで取っておかないで結構です」と語った。この言葉に傍聴席の住民から笑いが漏れた。法廷で笑いが起こることは珍しい。
今回の弁論では再開発地域の周辺住民以外にも関心を持たずにはいられない内容があった。本記事では2点指摘する。
第一に再開発組合側は再開発地域の人工地盤が洪水時の周辺住民の避難場所になると主張する点である。住民からすれば1.5mの洪水は床上浸水であり、甚大な財産的損害を確実に受けることになる。しかも想定される洪水は一般の成人でも首まで浸かるレベルであり、安全に避難できる状態ではないことは淵脇弁護士も弁論で指摘した。
それ故に住民からは到底容認できない主張だが、再開発地域のマンション「二子玉川ライズタワー&レジデンス」購入者にとっても問題がある。機械式駐車場を貯留槽代わりにすることや人工地盤を周辺住民の避難場所にすることはマンション住民にとっては負担・制約である。
社会的には地域に負の効用をもたらしたマンションによる負担は正当であるが、マンション購入検討者にとっては悪条件の物件となる。分譲マンションではデベロッパーは売ったら終わりであり、マンション購入者が制約や負担を負い続けなければならない。実際、ビジネス誌でマンション建設による電波障害解消のための共聴施設がマンションの新たなリスクになると指摘されている(「盲点は都会に潜む"陰"」日経ビジネス2009年12月7日号95頁)。
住民側は再開発組合側の主張が事実と異なると反論するが、仮に再開発組合側の主張が正しいならば、マンション購入者は洪水時に機械式駐車場を水没させることや周辺住民の避難場所となることを覚悟しなければならないことになる。
第二に多摩川スーパー堤防との関係である。再開発地域を人工地盤でかさ上げすることに対し、住民側は周辺地域を犠牲にして洪水被害から自衛するためのものと批判した。これに対し、再開発組合側は多摩川スーパー堤防に人々が安心安全にアプローチするためのものと位置付ける。
しかし、スーパー堤防自体が税金の無駄遣いと古くから批判されているものである。二子玉川南地区の堤防整備も地元住民の反対が強く、国土交通省は当初計画より小規模化した暫定堤防整備に転換したが、それでも反対の声が上がっている。暫定堤防でも堤防のサイズが現状にそぐわない上、堤防建設で自然環境が失われ、川岸が南地区と分断されることで無法地帯化する恐れがあるためである。
鳩山政権の理念は「コンクリートから人へ」である。これは開発優先・公共事業偏重・土建国家に対する国民の厳しい批判を受けてのものである。スーパー堤防を前提に再開発を正当化する再開発組合の論理は、無駄な公共事業削減を求める立場からも議論を呼びそうである。(林田力)
http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912164460/1.php
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4904350138
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0001030341








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