[CML 002352] 天皇制を対立軸にした鳩山内閣の偉業

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2009年 12月 17日 (木) 00:10:22 JST


林田力2009/12/15 
 歴史的な政権交代を果たした鳩山政権によって、天皇制が日本社会の対立軸となりつつある。
 http://www.news.janjan.jp/government/0912/0912144409/1.php
 鳩山政権では発足直後に岡田克也外相が天皇のお言葉見直し発言で批判を浴びた。岡田外相は陳謝を余儀なくされたものの、天皇制を議論の俎上に載せる上で意義あるものであった(「岡田外相の天皇お言葉見直し発言騒動に見る攻守逆転」)。そしていま、新たに天皇と中国の習近平国家副主席の会見を設定したことが波紋を呼んでいる。天皇が外国要人と会見する際には1カ月前に同庁に申し入れる慣例に反して習副主席との会見が認められた。

 これに対し、羽毛田信吾宮内庁長官は「天皇の政治利用」と、公然と懸念を表明した。一方で鳩山由紀夫首相は「日中関係をさらに未来的に発展させるために大変大きな意味がある。判断は間違ってなかった」と主張した。また、民主党の小沢一郎幹事長は「どうしても反対なら、辞表を提出した後に言うべき」と批判した。
 
 宮内庁長官が公然と内閣の決定を批判することは尋常ではない。天皇は内閣の助言と承認に基づいて行動する存在である。宮内庁は内閣の下位組織であり、内閣の決定に従うべきものである。宮内庁は天皇の代弁者を気取って、内閣の方針に異を唱えることが許される聖域ではない。政治主導を掲げる鳩山政権にとって宮内庁も障害となる官僚組織であることが判明した。
 
 会見設定の批判者は天皇の政治利用を問題視するが、中国と友好を深める鳩山政権の方針に不満があることが批判の根本的な動機ではないか吟味する必要がある。インターネット上の言説には、露骨な嫌中感情から鳩山政権を売国奴呼ばわりする暴言も多い。その種の非難を行うために天皇を持ち出すことこそが天皇の政治利用である。その意味で宮内庁長官が内閣を公然と批判したことの方が民主主義にとって懸念材料である。
 
 それでも宮内庁長官の懸念を支持する声には一定の広がりがある。岡田外相の「お言葉」発言も合わせ、鳩山政権は天皇を軽視しているという反感が渦巻いている。ここにおいて天皇へのスタンスが日本社会の対立軸として形成されつつある。これは画期的なことである。
 
 戦後日本では天皇制に批判的である筈の左派ですら護憲を旗印としたために天皇制は対立軸とならなかった。改憲論が憲法第9条の改正を狙ったものである以上、たとえば憲法第1章削除を唱えて改憲派と同じ改憲論の土俵に乗ることが戦略的に妥当かは議論を要する。それ故に左派勢力が護憲にこだわったこと自体は時代状況からやむをえない面があったことは否定しない。
 
 しかし、その結果、天皇制批判を深められなかったことは事実である。天皇制を素通りした平和憲法擁護の運動は、天皇個人の戦争責任や天皇制が侵略に果たした役割の分析を不十分なものとし、観念的な平和主義に陥りやすい。これは「被害者意識は過剰なほど豊富だが、加害者意識が乏しい」という日本人の平和意識にも通じる問題である。
 
 天皇は「国民統合の象徴」となることに存在意義がある。ところが、今は天皇制の信奉者を自称する側が、国民の大多数の支持により成立した鳩山政権を非難し、自ら対立軸を作っている状態である。天皇制を維持強化したい立場から見れば末期症状である。
 
 意図したか否かは別として鳩山政権では伝統な左派勢力も行わなかった天皇制を対立軸にした。社会が動いていることを実感する。東急不動産だまし売り裁判の経験から社会性に目覚めた新参者の私であるが、鳩山政権の動きを注視していきたい。 
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http://www.news.janjan.jp/government/0910/0910272301/1.php  

林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
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http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0001030341








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