[CML 002349] 【北限のジュゴンについての無知をさらけ出した暴言への抗議文】
加賀谷いそみ
QZF01055 at nifty.ne.jp
2009年 12月 16日 (水) 22:14:41 JST
(転載歓迎)
【北限のジュゴンについての無知をさらけ出した暴言への抗議文】
防衛大学校長 五百旗頭真様
北限のジュゴンを見守る会(代表・鈴木雅子)
2009年12月16日
私たちは、地球上で最も北に生息する沖縄のジュゴンが絶滅の危機にあること
を深く憂慮し、ジュゴンが生き続けられる環境を保全するために自然保護の市民
運動を続けている「北限のジュゴンを見守る会」です。
あなたは12月5日、東京都内の財団法人・国際文化会館が主催する新渡戸国
際塾の公開講座で、沖縄・米海兵隊普天間基地の移転先候補とされている名護市
辺野古地区について、「あの地でジュゴンを見た人はいないらしい。藻を食べた
跡はある。あそこにしか(跡が)ないわけではない。あちこちにあるわけですね。
その程度のもの」と語りました。
私たちは、あなたの北限(沖縄)のジュゴンに関する無知に驚くとともに、国
の天然記念物の保護に何の関心も払わない自然環境破壊の姿勢に強く抗議します。
あなたの暴言は、沖縄防衛局が実施した環境影響評価(アセスメント)の結果
である準備書に基づくと思われますが、同準備書がおよそ真っ当なアセスメント
の結果と言えるものでないことは、仲井真沖縄県知事に提出された同準備書審査
会の答申によって明らかです。答申に基づいて公表された知事意見は準備書の数々
の欠陥を指摘し、とりわけジュゴンについては、複数年の調査が不可欠であるこ
とを追認しています。
沖縄島の東海岸でジュゴンの生存を確認する情報は、これまであまた確認され
ています。同島西海岸域に生息するジュゴンが東海岸に回遊していることも知ら
れています。あなたは「藻を食べた跡はある。あそこにしか(跡が)ないわけで
はない。あちこちにあるわけですね。」と発言されていますが、それは科学的に
間違っています。
ジュゴンは胞子植物である藻は食しません。ジュゴンの餌は光合成を行なう種
子植物である海草(うみくさ)です。太陽の光が降り注ぐイノー(礁湖=サンゴ
礁の内海)に広がる海草藻場にジュゴンは餌を求めて回遊しています。ジュゴン
は毎日、体重(成獣で約300Kg)の約1割の海草を食べると言われており、彼
らの生存のためには海草が豊富に繁茂する餌場が必要です。しかし沖縄島の沿岸
は埋め立て尽くされ、自然のままに残された海岸はごく限られ、現在、沖縄島東
海岸の辺野古や嘉陽沿岸域の豊かな海草藻場が彼らの主要な餌場となっています。
あなたは「あの地でジュゴンを見た人はいないらしい」とのべていますが、ご
く最近まで辺野古海域でもジュゴンが見られたのです。情報がなくなったのは、
那覇防衛施設局(当時)が普天間基地の「代替施設」とされる海上ヘリポートを
建設するためのボーリング調査に着手したあとのことです。私たち自然保護団体
は強引な調査強行が、騒音に敏感なジュゴンを追い払う結果になったのではない
かと推測しています。それは実に悲しむべきことです。
しかし辺野古崎の北側・大浦湾に隣接する嘉陽沿岸には、今も新しいジュゴン
・トレンチ(ジュゴンの食み跡)が数多く見られます。米国政府が強硬に主張し
ている新基地のキャンプ・シュワブ沿岸案は辺野古沿岸域だけではなく大浦湾も
埋め立てるので、辺野古の海草藻場は壊滅的打撃を受け、また嘉陽の海草藻場も
少なからぬ影響を被るのは必至です。嘉陽の海草藻場は辺野古の10分の1の面
積しかないので、辺野古の海草藻場が失われれば、嘉陽に何らかの条件の変化が
あった場合、ジュゴンは餌場を失い、北限のジュゴンは絶滅してしまうでしょう。
ジュゴンが回遊する海域は非常に広く、たとえば辺野古海域より南の金武(き
ん)湾でも視認されています。しかし海草があればどこでもジュゴンの餌場にな
るわけではなく、未だその生態に謎の多いジュゴンが餌場とする場所は限られて
います。その重要な場所が辺野古であり、静謐な環境さえ戻れば、ジュゴンが再
び同海域を生存の根拠地とする可能性は大きいと思われます。
あなたは辺野古への普天間基地移設について「沖縄の方には、いまよりはよく
なるわけですが、依然として、不自由をしていただくということに心から感謝し、
陳謝しなければなりません」とのべました。沖縄の人びとは住民の4分の1が失
われた沖縄戦の経験を踏まえ「基地のない平和な島」を心から望んでいます。そ
の人びとに向かってこれからも「依然として、不自由をしていただく」と語るこ
とがどのような意味を持つのか。あなたは人間として深く猛省すべきです。
また、普天間基地を辺野古に移設することが「いまよりはよくなる」と考える
沖縄県民はいないこと、それは沖縄にとっていっそうの「不自由」を強いるもの
でしかないことも付け加えておきます。
沖縄の豊かな自然環境、そこに生きる数々の貴重な生き物、それを大事にして
生きようとしている人びとについて学ぼうとせず、沖縄にこれからも「不自由」
を強制する人物が防衛省直属の教育施設の校長であることに、私たちは鳥肌の立
つ思いです。暴言にいささかでも人間として恥じるところがあれば、潔く進退を
熟考してはいかがでしょうか。
CML メーリングリストの案内