[CML 002322] 辺野古の目はなくなった? ほんとうでしょうか??〜池田香代子ブログ「辺野古の目はなくなった」記事への疑問 

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2009年 12月 15日 (火) 01:19:25 JST


池田香代子さんがご自身のブログに「辺野古の目はなくなった」(2009年12月13日付)という記事を
書かれていますが、ほんとうでしょうか? 私はそうは思いません。

■辺野古の目はなくなった(池田香代子ブログ 2009年12月13日)
http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/archives/51304674.html

池田さんのブログ記事に異見を述べるのはこれで2回目です。一般的にいって意見の相違は誰と
でもありえるものですから、あるブログ記事を読んで、またあるML記事を読んで、そのブログ記事
なりML記事の筆者の認識に異論があるからといって、私はいちいち反論したりしませんし、また、
反論しようとも思いません。異見を認め合うことが民主主義の基本だという思いもありますが、それ
以上にきりがない、という思いが強いからです。実際、きりがありません。しかし、池田さんとは議論
は成立するだろう、という思いもありますし、なによりも池田さんは世界平和アピール七人委員会の
おひとりとしてその発言には影響力があります。池田さんにはご迷惑かもしれませんが、私として池
田さんのご認識に誤りがあると思われる点について私の意見を対置しておくことは有意味だろう、
という思いがあります。それが池田さんのブログ記事に異見を述べる理由です。小言幸兵衛に渡る
点についてはご容赦ください。

さて、池田さんが「辺野古の目はなくなった」とする理由は以下の3つのようです。

一つ目の理由。「06年の米軍再編にかかわる日米合意に基づいて米陸軍第1軍団はキャンプ座
間に移転することになっていたのに、アメリカ側のつごうでとりやめになった」。「米軍再編は一体
的なもので、どこかひとつでも計画通りに行かないと全体がだめになる、とアメリカは言っていた」。
その「日米同意はどうなる、との半田さん(注:東京新聞編集委員)の追求に、アメリカ側は『あれ
は過去の話』ですと」答えたという。そうであれば米国は「日本に、合意にもとづいて辺野古沖にV
字型滑走路と港湾をつくれ、と迫っていた」が「それも『過去の話』として悪いはずが」ない。すなわ
ち「辺野古の目はなくなった」。

理屈を言えばそういうことになりますが、それはあくまでもこちら(辺野古基地建設反対)側の理屈
です。アメリカ側が理屈どおりにことを進める保障はありません。現にアメリカ側は米陸軍第1軍
団のキャンプ座間への移転とりやめと06年の日米合意との矛盾を衝かれても「あれは過去の話」
と屁理屈をこねるばかりです。それどころかアメリカ側は普天間基地建設を今月18日までに決断
せよ、と日本政府を恫喝し続けています(「普天間、決断期限は18日 米政府が日本側に要請」
東京新聞 2009年12月12日)。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009121201000150.html

アメリカ側にあなたたちの言っていることは筋が通りませんよ、ということはできても、「辺野古の
目はなくなった」理由にはならない、と私は思います。

二つ目の理由。沖縄ジュゴン訴訟に関連して「アメリカ政府はアメリカの国内法によって、辺野古
には指一本触れることができない、という事実」がある。「米国内法に照らして建設を違法とする
第一審(連邦地裁)中間判決が言い渡されており、現在は最終判決待ち。米政府/米軍に関係
者と協議を尽くすよう命令する強い判決文が出るのは必須らしい」。「その協議が続き、あるいは
控訴審も争われるあいだ、キャンプ・シュワブの敷地にかかる基地は建設できないという。なぜ
なら、米政府/米軍は米国司法の判断に縛られるからだ」。「現行計画の代替ヘリポートは」、
「計画が米軍キャンプ・シュワブの敷地と、基地に使用を提供された海域を使うため、日本政府
が建設を実行するには、その部分に関して米政府/米軍の許可が必要となる。ジュゴン訴訟に
よって、この許可が出ない」(星川淳さんのブログからの引用)。

しかし、私はアメリカ法には詳しくはありませんが、アメリカにも「政治問題(political question)の
法理」と呼ばれる一種の統治行為論があるようです。国家統治の基本に関する高度な政治性を
有する国家の行為については、高度の政治性を有するがゆえに司法審査の対象から除外すべ
きとする理論です。そうであれば、米国が辺野古基地計画をあくまで強行しようとする場合、同
政府がこの統治行為論を主張して裁判所に「効力停止判決の取り消し」を要請することは十分
考えられるように思いますし、この件について住民に訴えられて仮に訴訟になったとしても、そこ
でも統治行為論を主張して同主張が裁判所の認めるところとなる可能性も決して捨てきれない
ように思います。そういうわけで、この沖縄ジュゴン訴訟に関する米国の第一審(連邦地裁)中
間判決も「辺野古の目はなくなった」とする理由にはおそらくならない、と私は思います。もちろ
ん私は、ここで統治行為論の是非を述べているわけではありません。同行為論の是非を問わ
れればもちろん私は「非」と答えます(参考:「1995〜96年の海外労働情勢」 (e(2))。
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpyj199601/b0035.html

三つ目の理由。「鳩山さんは、沖縄米軍基地問題は3党で協議する、と明言し」た。「福島さん
が辺野古移設に合意するわけはないので、社民カードをつかって辺野古案を白紙撤回するつ
もり」だろう。「(鳩山さんは)タフで周到な政治家だと思」う。

上記も、池田さんが「辺野古の目はなくなった」とする理由のひとつになっているようです。この
点について池田さんは「『ふつうの国になりましょう』 田中宇さんの沖縄米軍基地問題解説
(2)」(2009年12月12日付)という記事では次のようにも述べています。

「ここへきてマスメディアの大勢は、鳩山首相の優柔不断を笠に着てあげつらっています。でも、
鳩山さんは外相と防衛相に、『解決策をひとつずつ出すように』と指示したのです。それで岡田
さんは嘉手納統合を提案しました。北沢さんは、グアムはだめ、とひとつの案を否定しただけ
で、代案はまだです」。「鳩山さんは北沢さんの『グアムだめ』案に、『そうかな?』と一言。この
一言は大きいと思います。そうやって、じわりじわりと選択肢を狭め、『最後はわたしが決める』、
つまりグアム全面移転の方針を出す。なかなかタフで、いい意味で権謀術数にたけた政治家
だと、わたしはうけとめています」。
http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/archives/51304127.html

池田さんが鳩山内閣、また鳩山首相をひいきにするのは、現実問題として普天間基地問題を
解決できる力を持っているのは政権与党としての民主党であり、そうであれば「『最終的には
わたしが結論を出す』という鳩山さんを、国外移転よりほかに選択の余地のないところへと追
い込んで『あげる』のがいい」(「やっぱり Marines wanna go home 全国紙ってやつは!」2009
年11月28日付)という思いからなのでしょうが、下記のようなそれこそ優柔不断な発言を繰り
返す鳩山首相を「タフで周到な政治家」と褒めたたえるのは私には現実の政治情勢を見誤っ
たあまりにも思い込みのすぎる見方であるように思えます。

報道例:
■政府、普天間合意容認へ=「公約は時間で変わる」−鳩山首相(時事通信 2009年10月8日)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009100700880
■普天間移設 鳩山首相「辺野古」否定せず(琉球新報 2009年10月8日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-150931-storytopic-53.html
■普天間飛行場の県内移設、鳩山首相が容認示唆(読売新聞 2009年10月8日)
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20091008-OYS1T00281.htm
■在日米軍再編:普天間移設計画見直し 首相、公約変化否定せず(毎日新聞 2009年10月8日)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091008ddm005010019000c.html

池田さんが上記のように鳩山内閣、また鳩山首相を評価するのにはもしかしたら池田さんが
評価される田中宇さんの影響も大きいのかもしれません。田中さんも「日本の民主党自身、
以前から沖縄を覚醒にいざなってきた」(「沖縄から覚醒する日本」田中宇ブログ、2009年11
月4日付)などとする非論理的な(思いこみの強い)民主党擁護論者のように私は見ています。

その田中さんについて、池田さんは「田中宇さんの立論すべてに納得しているわけではあり
ません」として、その納得できない理由として田中さんの「911米政府陰謀説」「温暖化陰謀説」
などの論を挙げられます(「兵員もヘリも沖縄には残らない 田中宇さんの沖縄米軍基地問
題解説(1)」池田香代子ブログ 2009年12月12日付)。私は先日CML 002144(2009年11月
27日付)で田中宇さんの政治情勢の認識の危うさを指摘しましたが、私が田中さんの論に危
ういものを感じるのは「911米政府陰謀説」「温暖化陰謀説」、また先日指摘した事項に限りま
せん。

以前(4年前)に別MLで日本に事実上亡命していたフジモリ元ペルー大統領が突然日本を
出国しペルーの隣国チリで身柄拘束された事件に関連して「フジモリの勝算」という田中宇さ
んの論の問題点を指摘したことがあります。
http://tanakanews.com/f1115fujimori.htm

下記にその私の論を2点転記してみようと思います。田中さんのどのような認識を私は危う
いとしているのか。ご参照いただければ幸いです。

まずフジモリ問題とはなんだったか、について。
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日本に事実上亡命していたフジモリ元ペルー大統領が突然日本を出国し、ペルーの隣国
チリで身柄拘束された事件はご承知のとおりです。

しかし、なぜか日本のマスコミはフジモリ問題の真相を明らかにすることに消極的です。フ
ジモリ氏が日本に「亡命」してすでに5年が経っています。この間、フジモリ氏は、作家の曽
野綾子氏、自由連合の徳田虎男氏、特攻隊精神復活をとなえる片岡都美氏などの保護、
住居の提供を受け、渡邊恒雄読売新聞グループ本社社長や石原慎太郎東京都知事など
日本の保守系人脈や財界との関係をもち、彼らから手厚い経済的支援も受けてきました。
また、日本政府も、公然、非公然にフジモリ氏を擁護してきました。

日本のマスコミの「沈黙」のせい?で、少なくない日本人がフジモリ問題の真相、ペルーで
の彼の「犯罪」を知らないまま漠然とフジモリ氏に同情を寄せるという現象も見受けられま
す。

以下は、アムネスティ・インターナショナル日本などを構成メンバーとする『フジモリ氏に裁
きを!日本ネットワーク』の「フジモリ元大統領身柄引き渡し請求書提出についての声明」
http://homepage2.nifty.com/ai152hannah/appeal3.htm
 
大串和雄東大法学部教授の「フジモリ問題をめぐる10の疑問」
http://homepage2.nifty.com/ai152hannah/10gimon.htm

大串和雄東大法学部教授の「フジモリ政権下のペルーの実態」
http://homepage2.nifty.com/ai152hannah/0107nl1.htm

上記によってフジモリ問題の真相の一端をご理解いただけるものと思います。なぜ、日
本のマスコミは、フジモリ問題の真相を報ずるに消極的なのか? 本メールは、その疑
問から発信しているものです。
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次にフジモリ問題と「フジモリの勝算」という田中宇さんの論の関連について。
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フジモリ問題の本質は、大雑把に下記の3点をどのように評価するか、ということにか
かっているように思います。
.侫献皀蠕権時代に下記(イ)(ロ)を含む多数の重大人権侵害事件が生じているこ
と。
 イ)バリオスアルトス事件(1991年11月3日。パーティーの最中に軍が突入して銃を乱
   射し無辜の市民15人を射殺して4名に重傷を負わせた事件、後者は大学に軍が
   押し入り学生9名と教授1名を拉致し殺害した事件)
 ロ)ラカントゥタ事件(1992年7月18日。大学に軍が押し入り学生9名と教授1名を拉致
   し殺害した事件)
恩赦法の制定により加害者を免責し、ペルー国内での責任追及の道を閉ざした事
実。両事件の被害者および遺族らは、ある日突然生命・家族を奪われ、そして加害者
の責任追及の道をも奪われている事実。
フジモリ氏は重国籍であるが、実効的国籍原則によりペルー国籍であり、難民条約
のノン・ルフルーマン(難民の強制送還禁止)原則も逃亡犯罪人引渡法の自国民不引
渡原則も適用されないこと。したがって日本政府は、フジモリ氏の身柄をペルー政府
に引き渡すべき国際法上の責務があったこと。

上記´△了実がフジモリ政権時代に生じていることは、各国政府レベルでも認めら
れている国際的な周知事項です。だとすれば、時の絶対権力者であったフジモリ氏が
下記事件になんらかの形で関与しているのではないか、と疑うのは、道理のある自然
な疑問というべきでしょう。

だから、「ドイツ・イタリア・コスタリカ・ニュージーランド等10数カ国は、フジモリ氏が自
国の土を踏んだならば国際逮捕手配書に従って身柄を拘束する意思を表明し、ラテ
ンアメリカ議会(中南米の国会の連合組織)も、日本にフジモリ氏引渡を要請する決
議を採択している」のであり、「また、アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・
ライツ・ウォッチをはじめとする国際人権団体も、ペルーの国内人権団体も、一致し
てフジモリ氏の引渡を日本に要求している。つまり日本以外では、フジモリ氏が訴追
されるべきであると、広く認識されている」のだと思います。

フリーの国際情勢解説者、田中宇(たなか・さかい)氏は、「フジモリの政敵の一人だ
ったアレハンドロ・トレドが政権をとり、フジモリに対し、左翼ゲリラの虐殺など『人類
に対する罪』で4種類、公金横領など汚職関係で18種類の罪を着せ、訴追」したと、
フジモリ氏の「冤罪」を主張していますが、大串教授(東大法学部・ラテンアメリカ政
治。ちなみにお連れ合いもラテンアメリカの方のようです。それだからか、大串さん
の文章には正義感と怒りが漲っているように思えます)の言うように、これまで日本
のマスコミが報道してきた「フジモリ氏に対する疑惑追及は政争の道具にすぎない」
という主張を追認しているだけの俗論、といわなければならないでしょう。

田中氏の上記の主張には何の根拠もありません。田中氏は、根拠らしいものとして
「汚職案件の一つである『フジモリは公金を横領して秘密の口座に隠した』という容
疑については、ペルー政府が調査会社に35万ドル(約4千万円)を払って調べさせ
たが、秘密口座は見つからなかった」ことを挙げていますが、それが事実だったとし
ても、そのたったひとつのことをもって「フジモリに対するこれらの罪の一部または
全部は、ペルー政府がフジモリを有罪にするという目的で無理をして立件したもの
だ」と決めつけるのは暴論以外のなにものでもないでしょう。

田中氏は「二重国籍」の問題でも、南米に移民した日系人の「二重国籍」の問題と
犯罪者として国際手配されているフジモリ氏の「二重国籍」の問題とを同一視する
暴論を展開しています。歴史的経緯のある南米移民日系人の「二重国籍」は同情
に値するものですが、犯罪者のそれとは明らかに性質が異なるでしょう。田中氏は、
「二重国籍」者は、法の裁きを受ける必要はない、とでも主張するつもりでしょうか?

田中氏の本は、PHP研究所、光文社、文春などから出版されており、その出版の
傾向から察すると、どうやら本質的には保守系の論客の人のようです(もちろん、
すべてがそうだというつもりはありません。注:当時の私の評価)。共同通信社出
身という点では、辺見庸と同じですが、その思想的傾向は、ずいぶん異にするよう
ですね。
━━━━━━━━━━━


東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp



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