[AML 7114] 続・NSAの違法通信記録収集は共謀罪と無縁ではない
toshimaru ogura
ogr at nsknet.or.jp
2006年 5月 13日 (土) 18:36:10 JST
小倉です。重複投稿御容赦ください。NSAのスパイ問題は大きなひろがりを見せ
ています。と同時に、このNSAのやり口からさらに、共謀罪にかかわって私たち
が「組織」や「団体」の概念についても根本から考え直さなければならないとい
う教訓を引き出しておく必要があります。
最初にNSAの通話記録違法収集を報じたUSATdayの報道内容について、情報源とさ
れる人物との一問一答やその後のワシントンポストの記事などを参考に、以下、
先に書いたことの補足をします。
収集されていた通話記録は、自宅や会社の固定電話だけでなく、携帯通話も含ま
れている。(通話内容の盗聴はない)開始時期は、2001年の911「同時多
発テロ」からでかなり長期に渡っている。ワシントンポストによれば、通話記録
が違法に収集された規模は、固定電話市場の四分の三、携帯電話市場の半分以上
に及んでいる。また、NSAに協力していた通信事業者3社の通話数は、2005
年だけで、年間5000億通話、2001年の911以降からの累計では、2兆
通話に及ぶという。これらの記録には名前や住所は含まれていないが、電話番号
から名前を逆引きすることはけっして難しくない。
データ収集の目的は、テロリストの容疑者の割り出しと監視にあるとされている
が、では、なぜ無関係な人々の通話まで網羅的に監視するのか。USATdayのイン
タビューに答えている人物の話では、テロリストの通話パターンの特徴を割り出
すための作業だという。テロリストの通話パターンが他とは異なる特徴的なパ
ターンを示すことを発見するには膨大な通話記録データベースを構築して、照合
検査(cross-checking)することが必要だからだという。普通の市民の通話と普
通ではない市民のそれとを比較できる統計的なデータが必要だ、ということであ
れば、確かにこうした作業は不可欠だろう。しかし、だからといって、通話記録
を違法に収集でいよいということになならない。
さらに専門家の話として、こうした大量の通話記録のデータベースは「便利」で
あるという。大量のデータから何ひとつ有意味なものを見出せなかったとして
も、近い将来、だれかがテロリストと通話したときに、過去の無意味なデータを
再度このあらたな事実をふまえて洗い直すことによって、新たな「意味」を見出
すことができるようになる。誰がテロリストかはあらかじめ決まるわけではな
い。政治状況が変化することによって、昨日の友が今日はテロリストとして遇さ
れる、ということに対応できるようなシステムを構築したいということだ。
先の投稿で、データ・マイニングの手法に言及したが、ワシントンポストの記事
では、NSAはこれに加えて、「社会ネットワーク分析」の手法を用いているので
はないかという指摘がなされている。社会ネットワーク分析というのは、集団
(フォーマルでもインフォーマルでもどちらでもよい)を構成するメンバー相互
の人間関係を数値化して分析して、誰が事実上リーダー的な役割をはたしている
か(あるいはリーダーにふさわしいか)などを解析する手法。こうした手法が捜
査機関によって使われているとすれば、「組織」や「集団」について、ある種の
「科学的」な装いをもって、当事者の意志とは無関係に、集団や組織の性格規定
が行われるようになるだろうと容易に想像できる。こうした社会ネットワーク分
析の手法による集団の性格規定を裁判所が証拠として採用する可能性もでてくる
かもしれない。
この社会ネットワーク分析がやっかいなのは、共謀罪の立件にこうした新しい社
会集団分析が利用される恐れがあるからだ。集団を特定する際に、規約などの明
文規定がない場合、組織実態を証明するにはもってこいの手法である。しかも、
数値化されるために、証拠として扱いやすく、逆に反論がしずらい。同時に、組
織や団体の性格についての証拠がためのために、日本の捜査機関などがNSA同様
のことをやりたがるだろうことも目に見えている。共謀罪が成立すれば、必ずこ
うしたインフォーマルな人間関係を客観的に分析するためのデータ収集のノウハ
ウやシステムへの権力の関心は急速に高まらざるをえないだろう。
こうして、組織や団体を構成する個人の意志とは無関係に、権力が「科学的」な
手法で組織yあ団体を規定するといった時代がすでに現実のものとなりはじめて
いるとすれば、私たちの市民的な自由を守るための闘いは、こうした学問的な装
いをとってやってくる権力の政治的な弾圧との闘いを避けるわけにはいかなくな
る。NSAの動向は、必ず日本の諜報、捜査機関の動向に反映するから、「データ
マイニング」と「社会ネットワーク分析」のふたつは今後、注目しておく必要が
ある。
NSAをめぐる疑惑は、今回がはじめてではない。この点を補足します。
NSAには、昨年12月にニューヨークタイムスがすっぱ抜いたもうひとつ別の盗
聴プログラムがある。これは、ブッシュ大統領が指示して、米国の国際電話を令
状なしで盗聴できるとしたもの。昨年明らかになった、国際電話の盗聴について
は、アルカイダなどと関わりのあるとおもわれる通話のみが無令状で盗聴されて
いるということだったのだが、その後今年の二月に、ワシントンポストは、この
国際電話盗聴の規模が5000名という大きな規模であったこと、しかもこの盗
聴対象となった大半の人々のテロリストとしての容疑は斥けられたと報じた。
(いったい、この5000人への盗聴っていうのはいったい何だったのだろうか?)
これに関連して、AT&TとNSAの癒着はすでに昨年時点で問題化していた。ロサン
ゼルズ・タイムスの報道では、昨年時点で、AT&Tは自社の電話番号や通話時間を
記録するデータベース、通称Daytona(312テラバイト、データCD換算で40
万枚の規模をもつ)にNSAが直接アクセスできるように便宜をはかっていたと報
じており、電子フロンティア財団(EFF)は、AT&Tに対して今年1月にプライバ
シー侵害などの理由で訴訟を起している。
(注)
EFF's Class-Action Lawsuit Against AT&T for Collaboration with Illegal
Domestic Spying Program
http://www.eff.org/legal/cases/att/
昨年のNSAの盗聴から今生じている大規模な通信記録取得にいたる一連の流れに
対して、ブッシュ政権がテロ対策として必要であり、一般市民のプライバシーは
侵害していないと弁解しつづけているが、もはやこの弁解は通用していない。む
しろ、多くの米国民は、ブッシュは嘘をついてきたと感じていることは確かだ。
米国自由人権協会はDon't Spy on Meというキャンペーンを開始している。
NSAに協力した三つの大手通信会社への抗議文
https://secure.aclu.org/site/SPageServer?pagename=DTT_petition2
友人知人への呼びかけ
http://action.aclu.org/site/R?i=Qn_1SV_jd7aqczLy9IlW8w..
などだ。
参考にしたデータは下記
Questions and answers about the NSA phone record collection program
http://www.usatoday.com/news/washington/2006-05-10-nsa-qna_x.htm
Data on Phone Calls Monitored
Extent of Administration's Domestic Surveillance Decried in Both Parties
By Barton Gellman and Arshad Mohammed
Washington Post Staff Writers
Friday, May 12, 2006; A01
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/05/11/AR2006051100539_pf.html
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