[AML 8056] 被害も違法性もないのに、なぜ騒ぐ? 英タイムズ紙論説
Ryuzaburo Noda
nodarr.193 at do9.enjoy.ne.jp
2006年 7月 11日 (火) 22:08:50 JST
岡山の野田です。 重複お許しください。
北朝鮮ミサイル発射に対する日本の報道は常軌を逸しています。
このことに関する、表題の7月6日英タイムズ紙論説を
岡本三夫さんの翻訳でお届けします。転送歓迎だそうです。
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,25689-2258017.html
No damage, no laws broken: so just what has made everyone so jittery?
(一部)
これらの発射は物理的損害を与えることもなく、国際法にも違反しなかった。国際法
は主権国家がミサイル実験をすることを認めている。ではなぜ、世界中の軍隊がルー
ティンでやっている軍事演習ごときにあのような激怒が起きたのだろうか。
以下全訳
The Times July 06, 2006
No damage, no laws broken: so just what has made everyone so jittery?
被害も違法性もないのに、なぜ世界はナーバスになったのか
リチャード・ロイド・パリー
Analysis by Richard Lloyd Parry
岡本三夫訳
Translation by Mitsuo Okamoto
米国のスパイ衛星がミサイル発射台のテポドン2号を最初に発見してから7週間が過
ぎ、その間、多くの新聞論評と外交交渉がこれにどう対処すべきかについて時間を割
いてきた。
ミサイル自体の発見は5月半ばだった。その直後に、発射台近くの燃料トラックが目
撃され、補助ロケットと補給燃料タンクがミサイルに装着された。それでも、昨日の
ミサイル発射が生んだショックと怒りとパニックから判断すると、突然だった印象が
ぬぐえないようだ。
東京では外交官と軍幹部が小泉純一郎内閣総理大臣の首相官邸に設けられた非常事態
タスクフォースの右往左往ぶりがテレビに映し出された。新聞の見出しは「国際社会
への衝撃」とか「恐怖―それは現実だった」という調子だった。外交官は世界へ飛ん
で、事件への対応を模索した。しかし、この危機感を生んだのは、実際はなんだった
のか。
昨日の間に6基の中距離ミサイルが北朝鮮から発射され、数百マイル離れた海上に落
下したが、被害はなかった。従来、北朝鮮が繰り返しやってきた実験だ。明らかに長
距離ロケットの新しいテポドン2号大陸弾道弾も発射されたようだが、失敗したか、
同じく遠い洋上で単独に破壊されたらしい。
これらの発射は物理的損害を与えることもなく、国際法にも違反しなかった。国際法
は主権国家がミサイル実験をすることを認めている。ではなぜ、世界中の軍隊がルー
ティンでやっている軍事演習ごときにあのような激怒が起きたのだろうか。北朝鮮と
その指導者の金正日があのような行動をとった動機は何だったのか。そして、世界は
どのような対策を―もしあるとしたら―講じることができるのだろうか。
月並みの答は、金正日は極めて危険な指導者であり、彼の予測不可能性は狂気に近
く、合理的な理由はないというものだ。安全で、豊かで、快適な日本の視点からする
ならば、まさにそう感じられるのだ。昨日の読売新聞は評論家の意見を書いている。
「多くの日本人は7月4日(米独立記念日)のスペースシャトル打ち上げに期待しな
がら就寝したが、朝になってテレビをつけたら、空を飛んでいたのは北朝鮮のミサイ
ルだった。北朝鮮の指導者の馬鹿さ加減には言葉もない。頭がおかしくなったのでは
ないか」。
小泉首相は似たような見解を表明した。「その意図が何であれ、北朝鮮にとってこれ
らのミサイルを発射するメリットは何もない」、と。
しかし、平壌から見ると世界はまったく違って見えるのだ。金正日は残酷な独裁者か
らも知れないが、狂人ではない。昨日のミサイル発射は北朝鮮とその指導者の不適合
性だけでなく、主要国の不適合性を暴露している。
北朝鮮が北日本の空を超えて長距離ミサイルを発射してからほぼ8年になる。それ以
来、北朝鮮を囲む環境は劇的に変化した。あの国は破局的な飢饉を経験し、西側との
かつてない純粋な和解の一歩手前まで漕ぎ着けた。2000年に、金正日は韓国の金
大中前大統領とも、クリントン米大統領の国務長官マドレーヌ・オルブライトとも、
初めて握手を交わした。しかし、いわゆる「太陽政策」という寛大なかかわりかたは
ブッシュ大統領の当選によって突然の終焉を迎えた。
ブッシュ大統領は有名な2002年の施政方針演説で北朝鮮を「悪の枢軸」の一味と
呼んだ。1年後、金正日は「枢軸」の一員であるサダム・フセインが侵攻され、退位
させられるのを目撃した。一方で、米国は北朝鮮が不法なウラン濃縮プログラムを実
行し、核兵器製造能力を開発していると非難して、北朝鮮の現存する原子炉を買い取
る約束を迫った。これに対する北朝鮮の反応は核不拡散条約からの離脱とプルトニウ
ム生産の開始であり、すでに10数の核弾頭を製造したかも知れない。
北朝鮮は直接米国としか協議しないと宣言している。これに対して、米国はそれは
北朝鮮のわがままを認めることであり、あらゆる協議は多国間でなければならないと
突っぱねている。中国、韓国、ロシア、日本を含むいわゆる六ヵ国協議が何回か開催
されたが、北朝鮮は譲歩していない。そして次第に明らかになってきたことは、米国
がどれほど強く直接協議という考えに反対しても、米国には厄介者の金氏に決定的な
影響を及ぼすことはほとんどできないということだ。
軍事力行使は論外である―すくなくとも現時点では―というのは、北朝鮮のミサイル
攻撃が韓国に与え得る甚大な被害があるからだ。北朝鮮の唯一の同盟国である中国は
これまで北朝鮮に強力な圧力をかける選択をしていない。しかし、今年はじめ、米国
は北朝鮮がマネーロンダリングと紙幣捏造をしていることを理由にマカオ銀行が北朝
鮮と取引することをやめさせ、北朝鮮に圧力をかけることに成功した。
理性的な見かたからするならば、ミサイル実験は米国の金融的な圧力に対するリベ
ンジの域を出ていないのかも知れない(7月4日の米独立記念日とほとんど同時のス
ペースシャトル発射というタイミングに合わせたミサイル実験は米国へのダブルパン
チのようにさえ思われる)。
実験が北朝鮮の強力で自尊心の強い軍部―その支持なしに金氏の存続はあり得ない
―を喜ばせることは疑いようもない。そして、さらには、実験は混乱と警戒を撒き散
らすことによって金氏に利益を与え、彼の敵たちをたじろがさせている。
実験はまた、世界にはほとんどなす術のないことも裏書している。昨日のショック
ウェーブが広がると、日本は「制裁」の音頭とりを始めた。制裁の内容は北朝鮮の官
僚の訪日禁止と貨客船の6ヶ月入港禁止である。しかし、この貨客船は帰国する修学
旅行生を乗せて停泊していることが判明し、結局、入港許可になった。
これからの数日間、小泉政権は東京から平壌への銀行送金を停止させる措置をとる
かも知れないが、送金は間接的なルートで可能になるだけの話である。米国は北朝鮮
との商取引禁止措置に踏み切るかも知れないが、この措置には限界がある。何年も前
に経済が破綻した国に経済的制裁を加えるのは容易なことではないからだ。
出入港禁止などのような付帯的措置に対しては中国が確実に反対するだろう。国連
安保理大使たちがこれからの数日間この問題を討議するだろうが、中国の態度がカギ
となるだろう。しかし、北朝鮮のサイズの小ささ、極端な隔離、経済危機の深刻さを
考えるならば、選択肢がほとんどないことは驚くほどである。
おそらく、このことは昨日のミサイル実験が惹き起こしたパニックを説明してくれる
かも知れない―それは、実験自体が脅威だということよりも、誰にもほとんど何をす
る手立てもないということだ。
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