[AML 3695] 反戦の視点 その9
加賀谷いそみ
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2005年 9月 17日 (土) 19:01:28 JST
(転載歓迎)
反戦の視点 その9
悔しさを大元気に変えて、心機一転、反戦の道を進もう!!
井上澄夫(市民の意見30の会・東京)
9月11日夜、同日投票の衆院選の結果の大勢が判明した。テレビを見なが
ら私は、ある反戦市民運動のネットワークのメーリングリストに以下のメー
ルを送った。
仲間のみなさんへ
いま、9・11選挙の開票結果が進んでいます。余りにもすさまじい結果に
言葉を失う人が多いのではないでしょうか。ある私の友人は、自分が痛めつ
けられている貧しい人たちまで小泉を支持するような愚かな国民なのだから、
そういう人たちには自分の選択のツケをしっかり味わってもらったらいい、
もう無意味な努力はやめなさいと忠告してくれました。しかし、そうでしょ
うか。こういう結果になるかもしれないと誰もが程度の差はあれ、思ってい
たのではないでしょうか。「安易な絶望は根拠のない希望と同じである」と
魯迅は言いました。彼が直面したあの時代の困難は、私たちのそれに比べて
何百倍ものものであったと思います。あの日露戦争に抗して、あえて非戦論
を掲げた幸徳秋水や堺利彦の大元気を思い起こそうではありませんか。正直
に言って、私もがっかりしています。衝撃を受けています。でも、もともと
こんなものじゃないかなとも思うのです。そして、だからこそ私たち反戦派
の出番なのだと思います。世の中がおかしくなればなるだけ、私たちの役割
が大きくなるのです。違いますか、仲間のみなさん。
このメールに対し、次の二つの反応がすぐ寄せられた。金沢市のMさんと長
崎のNさんからである。ご了解を得て紹介する。
●金沢のMです。熱ある投稿いつも読ませて頂いております。選対事務所から
戻ったところです。石川も厳しい結果でした。私はいつも思うのです。状況を
他者のせいにせず、受け入れて引き受けて、そこから出発するしかないのだと。
社民の比例区街宣でイラク撤退、改憲阻止を訴えたこと、ぶれずに貫こうと思
っています。
●おはようございます、長崎のNです。悔しくて、悔しくて、ゆうべは眠れま
せんでした。「日本国民バカじゃないの!?」って何度もテレビに向かってつ
ぶやきました。井上さん、ありがとうございます。井上さんのメールを拝見し
ながら涙が出てきました。当選だけの投票結果を見ると暗澹たる気持ちになり
ますが、野党だって票が肉薄しているところが多いという事実も、受け止めた
いと思います。
お二人から寄せられたメールは、イラク派兵と憲法改悪に反対する反戦市民
運動を粘り強く継続してきた人びとの思いを分かりやすく代弁していると思
う。確かになんとも悔しい開票結果だったが、仲間たちはしっかり踏みこた
えようとしている。それでいい、ここから新たな力が生まれる、と私は思う。
Mさんのように、それぞれが「状況を他者のせいにせず、受け入れて引き受
けて、そこから出発するしかない」と確信するかけがえのない主体なのだか
ら。
70年安保闘争は頻発した内ゲバと爆弾闘争によってついえた。あのときは、
本当に誰もいなくなった。ともに活動してきた仲間を町で見かけても、まる
で私が目に入らないように無言ですれちがっていった。あの時期、運動に踏
みとどまった人が何人いただろうか。私は「ここで退いてはならない」と思
った。大後退、反体制運動の全面的崩壊のあの時期に比べれば、今回の選挙
結果はそれほど落胆するに値しない。仲間たちは全国にいるし、「持続は力」
という言葉は今こそ輝きを増すのだ。
今回の選挙結果についての論評の中で、圧倒的に勝利した側のコメントとし
て重要だと思うのは、比例代表東京ブロックの一位で当選した自民党の猪口
邦子上智大教授のものではあるまいか。東京でも自民候補が圧勝したことに
ついて彼女はこう語った。
「都民は都市政党への転換の重要さを直感していた。行財政改革を進め、グ
ローバリゼーション化の中、日本は負ける側になってはいけないと強いメッ
セージを送った。この流れは地方にも浸透し、今後も続いていくと思う。改
革のスピードはアップする。」
コメントでは「グローバリゼーションの中、日本は負ける側になってはいけ
ないという強いメッセージを送った」のは、つまり主語は都民になっている
が、猪口教授自身がそう確信して選挙に出馬したのだと私は思う。私は「市
場原理のグローバル化」は全世界を弱肉強食の闘争場裏にすると主張してき
た。憲法を改悪する動きも、その根底に弱肉強食の世界で日本が大国・強国
として生き残ろうとする衝動を秘めているとも指摘してきた。私のその指摘
を猪口教授は正反対の立場で実にあけすけに肯定した。「日本は負ける側に
なってはいけない」と。
かつて小沢一郎氏はPKO(国連平和維持活動)への軍事力による協力に反
対する人びとを「守旧派」と罵倒し「一国平和主義」と非難した。彼の主張
は力を持ち、日本はPKO協力法を根拠にカンボジア、モザンビーク、ザイ
ール(ルワンダ)、シリアのゴラン高原に自衛隊を送り込んだ。その小沢氏
が得意とする《言葉の操作による政治》は小泉首相に引き継がれて活用され
た。「構造改革」に反対すれば日本経済は衰退する、「郵政民営化」は日本
経済の活性化と成長に不可欠だ、それに反対するとは何事か、というわけだ。
戦後民主主義の基軸だった労働運動が急速に力を失ったのは、運動が生活保
守主義に毒されたからだが、その生活保守主義に乗って、その後政府・財界
が持続的に展開したのは、〈日本は世界有数の大国である〉というキャンペ
ーンだった。大国であるとはどういうことかを棚上げして、日本は世界有数
の大国であるという尊大で傲慢なイデオロギーが「国民」に徹底的に叩き込
まれた。火事泥参戦で戦勝国になった第一次世界大戦直後の日本のありよう
と変わらない。
9・11衆院選では、その大国意識が徹底的に利用された。〈今や日本は世
界有数の大国なのだ。グローバル化が進む世界で日本は「負ける側」「負け
組」になってはならない。そのためには「構造改革」せねばならず、手始め
に郵政民営化が必要なのだ〉という煽動に、多くの人がまんまと乗せられた。
自民党の地滑り的圧勝をもたらした最大の要因は、現在の選挙制度と、意識
的に(としか思えない)小泉政権をヨイショしたマスメディアだったと思う
が、小泉首相は、ポピュリズム(大衆迎合の言動で大衆を操作する政治手法)
的な言葉の操作で、擦り込まれた大国意識と現実の生活実感との乖離から噴
き出す閉塞感のガスを「改革」路線支持に向けて誘導し爆発させたのである。
実際には政権の意志決定過程から完全に疎外されているにもかかわらず、多
くの人びとがまるで自分が「構造改革」の主役であるかのように思い込まさ
れ、一票を投じた。そこでは「構造改革」とは何で、だれに(どの階級・階
層に)利益をもたらすかという肝心の問題は問われなかった。
大国意識は、歴史認識にかかわる近隣諸国からの批判を皮膚感覚ではねつけ
るネオ・ナショナリズム(新国家主義)につながる。中国や韓国がうるさく
あれこれ言うのは、日本の大国ぶりがねたましいからだと思い込んでそれ以
上考えない。考えるとすれば、「力で押さえつければいい」ということにな
る。そういう心理にも小泉首相はつけ込んだ。
自分を映す鏡を持たない者は自分の姿を見ることができない。米ブッシュ政
権がまさにその典型だが、このところ帯状疱疹(ヘルペス)にかかって医師
にしばらく絶対安静を命じられていた私は、新聞の国際面を熟読した。小泉
首相が「郵政選挙」をおらびたてていた、まさにそのとき、彼が無条件につ
き従ってきたブッシュ政権の米国内での支持率は、イラク政策の失敗によっ
てなんと40%にまで低落した。長引く戦争、増え続ける米兵の死者・負傷
者(米国防省によると8月31日現在、死者1879人、負傷者1万426
5人)……、先行きの不透明さに米国の人びとは耐えきれなくなったのだ。
しかもハリケーン・カトリーナは、アメリカ帝国が持病として抱え込み続け
てきた国内の階級矛盾と人種問題を直撃した。おびただしい死者、負傷者、
生活再建のめどが立たない被災者の群れ、それらがひたすらアフガン・イラ
ク侵略戦争に全力を投入してきたブッシュ政権の自然災害への無策と怠慢か
ら生まれたことは明らかで、それもまたブッシュ大統領の支持率を一気に低
下させた。
〈従僕・コイズミ〉の〈主人・ブッシュ〉は今や満身創痍、凋落の一途をた
どっている。しかしブッシュ大統領は、イラクで10月に予定されている新
憲法をめぐる国民投票や12月の本格政権発足に向けて米軍の増派を決め、
米兵にさらに犠牲者が出ることを覚悟せよと米国民を脅しつけている。小泉
首相は選挙期間中に、アフガン侵略を続ける米軍を支援するためにインド洋
・アラビア海に派遣している海上自衛隊の艦隊を撤退させるふりをしたが、
選挙で圧勝するや、艦隊派遣の根拠とされているテロ対策特措法の「改正」
を特別国会で強行するかまえに転じた。陸上自衛隊サマーワ駐留の根拠にな
っているイラク派兵法適用の延長も伝えられる。しかも改憲の国民投票法案
を審議する特別委員会が衆院に設置される。
落ち込んでいるヒマはない。さあ、ともに、なすべきをしっかりなそう!
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【付記】
本稿は「歴史は消せない!」みんなの会(香川県 高松市)の機関紙『きざ
む』2005年9月号へ寄稿したものです。
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